「まじかよ…。それじゃあオレ、ほんとにどうでもいいことであれこれ悩んでたんだな。クラスでオレが話しかけたのに、お前返事しなかったじゃないか」
「それは…面と向かって話すのが恥ずかしくて」
 こんな事、いわせないで欲しい。
 恥かしくて、顔から火が出そうなんだから。
 でも若原君、これでやめるつもりなんてなかったみたい。
「オレが初めてお前のこと抱きしめたとき、お前えらく嫌がってたじゃないか。どうしてだよ」
「だってあのときは…あたし、期待しちゃいけないって思って、若原君があたしなんかを好きになるはずないんだから、あんまり期待するとあとでショックが大きいから、それで…」
「何だよ。オレ、あれでかなり傷ついたんだぜ。そんなに嫌がられてるのかって。それでオレはいったんは諦めようって思って」
 若原君、あのとき本当にあたしを抱きしめてくれていたんだ。
 あたし、あれはどうしてなのか判らなかった。
 今の今まで。
「でも、オレが1番傷ついたのはあれだ。ユーリルに告白してたやつ」
「それは勘違いだっていったよ」
「それじゃ、あんときはどういう状況だったんだ? 今ならいえるだろ?」
 若原君て、けっこうしつこいんだ。
 きっと、記憶力がよすぎるのね。
「ユーリルに聞かれたの。グレンのことを愛しているのかって」
「それでお前、愛しているのかっていわれると困るけど好きだ、っていったのか。あれ、オレのことだったんだ」
 もう、やめてほしいな。
「もういいでしょう? そんな過去のことは」
 若原君、ちょっと意地悪そうに笑ったの。
 あたしの提案を聞き入れてくれる気はないみたい。
「細かいことならいろいろ覚えてるぞ。お前、ユーリルに襲われたとき、オレのキスの誘い断わったよな。セカンドキスくらい両思いの人としたいって。あの時点でオレがお前のこと好きなのくらい判りそうなもんだ。オレもそう思ってたから、あの後ずいぶん落ちこんだんだぜ。お前、本当に判らなかったのか?」
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