今までみたいな異世界では若原君と普通にしゃべっていたけれど、現実のあたしは、若原君とはまだちゃんとした友達じゃない。
 言ってみれば、今のあたしは夢のなかのあたしなの。
 現実であたし、若原君と友達になれるのかしら。
 1度は拒否されたこと、あたしはもう1度聞いてみようかと思った。
 若原君と、友達になれるかってこと。
「若原君、あたし、やっぱり若原君の友達になりたい」
 若原君は、このあいだ同じ質問をしたときのように、少し変な顔をしていたの。
「お前、本当にオレとお友達になりたい訳?」
「うん、そうだけど」
 あたしが見ている前で、若原君は頭を抱えたの。
 そして、少しあたしを上目づかいに見るように、言った。
「オレ、何だかお前のこと判んねー。ほんっとに鈍いんだな、お前って。それとも気付かない振りでもしてるのかな。……判った。どうせはっきりいわなきゃならねーんだ。伝えようとしなきゃ、いつまでたっても平行線のまんまだもんな」
 あたし、若原君がはっきり言おうとしていることが、どんなことなのか判らなかったから、精一杯に身構えたの。
 そんなあたしに、若原君は不意に姿勢をただしていた。
 そして、言ったの。
「オレ、どうもお前に拒まれてる気がして、どうしても言い出せなかった。あんまり望みのない事ってのは、言うのに勇気がいるよな。でも、オレは真剣に言うから、お前も真剣に答えてくれ。頼む」
「うん…」
 あたしはいったい何を言われるのかと思って、ドキドキしていたの。
 でも、言われたとおりにあたしも姿勢をただすと、若原君はもっと真剣な顔をして、あたしに言った。
「オレ、お前のこと好きになった。友達としてじゃなくて、オレとつきあってくれ。頼む」
 あたし、若原君の言ったことが、よく判らなかったの。
 それは告白に聞こえた。
 でも、もしかしたら違うのかもしれないと思って、あたしはこの短い言葉をいろいろに解釈してみようとしたの。
 勘違いして、恥かきたくなかったから。
 でも、いくら分析してみても、それは恋の告白以外の何物にもならなかった。
 ほかの言葉には聞こえなかった。
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