それから2日がたって、あたしと若原君は、もう誰にもはばからずに、庶民の部屋で話し合っていた。
 あたし達は姫の部屋から、普通のお客様用の部屋に移されたの。
 もう姫にならなくてもいい。
 そのことは、あたしの精神衛生上、とってもいいことだった。
 だけど、それからもあたし達はけっこう大変で、今まで回りをだましていた分の反動は、ものすごいものがあったの。
 貴族達の反応は、けっこうあたし達に批判的だった。
 とくに、あたしにたくさんの贈り物をした若い貴族達は、さすがに贈り物を返せとはいわなかったけれど、かなり冷たい視線をあたしに向けていた。
 でも、そのなかの何人かは、あたしが姫じゃないのなら、ぜひ側仕えに欲しいとかいって、こっそりさぐりをいれてきた。
 これにはびっくりしたの。
 さすがに若原君が怒って追い返してくれたけど、姫であっても姫でなくても、あたしはこの国で1番美しい人間だって事は変わりなかったのね。
 でも、姫じゃない事がばれても、あたし達、すぐに帰ることはできなかった。
 リンゲルの裁判で、証言しなければならなかったから。
 裁判は準備があるから、あと5日くらいかかるみたい。
 結局あたし達、夏休み一杯使っちゃった。
 帰るともう、4日くらいしか残ってないの。
 たくさんの宿題の事考えると、頭が痛いや。
 それはともかくとして、あたしは今、若原君と一緒にいたの。
 あたし達はずっと、今までのことを話し合っていた。
「結局、姫がさらわれたってのが、おおもとの嘘だった訳だな」
 若原君は今は甲胄は脱いで、動きやすいトーガを身にまとっていた。
 それはユーリルのものだったから、どうも若原君には似合ってなかった。
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