その時、部屋になだれ込んできた一団があった。
 ユーリルは必死で応戦していたけれど、この人数にかなう訳がなかった。
 すぐに剣をむしり取られて、身体を締めあげられていたの。
 あたし達も数人の兵士に囲まれていた。
 若原君は相手を刺激しないようにゆっくりとあたしを降ろして、そして、あたしをかばうように、あたしの前に立ちはだかったの。
 こんな時でも若原君、あたしをかばってくれるんだ。
 1つ間違えれば、若原君は切り殺されてしまうよ。
 それなのに。
「出てこいよ、首謀者」
 若原君は、兵士達の向こうの、見えない場所に向かって言ったの。
 あたしが若原君の言葉に驚いていると、兵士達を押し分けて、1人の人間が顔をだしていた。
 それはあたし達が予想していたとおり、王様の実の弟、リンゲル叔父だった。
「どういうつもりだ。姫に毒を盛っただけではあきたらず、こんな真似までして。これが王家の姫君に対するお前の礼儀か!」
「本物の姫君であればな」
 リンゲル叔父は、毒を盛ったことも暗に認めていた。
 若原君はさらにつづける。
「それは姫が偽者だということか。何を証拠にそのようなことを…」
「証拠ならある。儂がだまされるとでも思うのか。姫には右耳のうしろにほくろがあったのだ。それは兄上もご存じのはず。ところが、この姫にはほくろがない。それが偽者である唯一の証拠だ」
 確かにあたし、今まで1度も耳のうしろを見せるような髪型をしたことがなかった。
 待女達は、あたしの髪をアップにしても、耳のうしろだけは髪の毛を残していて…
 ユーリルは最初から、ほくろの位置を隠すような髪型を、待女達に指示していたの?
 だとしたら、これって…
「ではどうしても姫が偽者だと言いはるのか」
 その時、ドアの方がざわざわしたの。
 あたし達は警戒しながらドアの方を見ていて…
 入ってきたのは、お供に屈強の兵士をつれた、王様だったの。
「これはどうした事か」
「兄上。この姫は偽者でございます。兄上はだまされていたのです。この者達を切ることをお許し下さい」
次へ
扉へ
トップへ