そこは特別にあたしのために整えられた部屋のよう。
ほかの部屋とは少し離れていて、渡り廊下でつながれていた。
それでも部屋は少しも狭くはなくて、待女が控える部屋も、従者が寝泊まりする部屋も、きちんと整えられていたの。
窓の外は深い森のようだった。
あたしは窓をあけてみたりはしなかったけど、帰ってくるときの様子で、それは判りすぎるくらい判っていた。
あたし、ちょっと恐い気がしていたの。
ユーリルはリンゲル叔父に気をつけるように言った。
若原君は、姫をさらった人間だけが姫が偽者であることを知っているから、その証拠を集めようとしているって言った。
あたしはリンゲル叔父に疑われているかもしれないんだ。
そう思った瞬間、あたしはとんでもないことに気がついたの。
あたし、今までたくさんのパーティーにでたけど、踊りもしないのにこんなに疲れたことなかった。
それに、よく考えてみると、この脱力感て、疲れたときのと微妙に違うんだ。
あたしは昨日は1日ゆっくりと休んだはず。
こんなに身体の調子がおかしい訳がない。
あたしはもう少しで倒れてしまいそうな身体をひきずって、待女を呼ぶための呼び鈴を押した。
待女のリーナはすぐにやってきた。
「お呼びでございますか? 姫様」
「…従者のグレンを呼んで」
「かしこまりました」
あたしのあまりに疲れた様子を見て、リーナは少しいぶかしんだようだった。
それでもすぐに若原君をつれて戻ってきて、そして、若原君をおいて、すぐに退出した。
「お呼びでしょうか、姫」
若原君もあたしの様子に驚いていたけれど、それもかねてからの打合せ通り、従者の言葉であたしに声をかけていた。
あたしの身体、ほとんど自由がきかない。
あたしは訴えかけるように、若原君に言ったの。
「グレン…わたくしの身体おかしい…」
あたしの身体、どうしてだか判らないけど、痺れ始めてる。
声を出すことも普通にはできなかった。
若原君はあたしの様子が普段とかけ離れていることにものすごい反応を示して、血相を変えてかけよってきた。
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