リンゲル叔父の主催したパーティーは、ちょっとした仮装パーティー形式だったの。
 あたしは王様と並んで、とても粋な仮装をしていた。
 王様は太陽神、あたしはその妻の夜の女神。
 別名月の女神とも言って、銀色の衣装を着ていたりするけれど、あたしは黒髪だったから、今日は月の女神ではなくて、まっ黒な衣装の、夜の女神の扮装をしていたの。
 それはとてもきれいなビロードで、たくさんの真珠が縫いつけられていた。
 あたしはそのドレスをとても気に入って、あたしを見た人が美しいってほめてくれるのを、とてもいい気分で聞いていたの。
 ホールにはたくさんの人がいて、音楽がながれていたけれど、踊りに行く人はそれほどいなかった。
 みんな様々な仮装をしていたから、踊ることよりもむしろ、仮装を楽しむ方に興じていたのだと思う。
 あたしも踊りを知らなかったから、その方がつごうがよくて、王様の隣でたくさんの人達に囲まれながら、笑顔を振りまいていたの。
 リンゲル叔父は今日はホスト役で、いろいろな人のまわりをまわっては、話しかけたり、小姓に飲物を取りに行かせたりしていた。
 やがてあたしの所にもやってきて、ちょっと矮小に見える笑顔で、あたしに言ったの。
「姫様、今夜は私の屋敷においで下さいまして、ありがとうございます。十分にお楽しみいただいておられますでしょうか」
 あたしは誰にでも向ける極上の笑顔で言った。
「ええ、とても楽しいパーティーですわ。お招きくださったことに感謝しております」
「お飲物を取替えさせましょう。…では、ごゆっくりお楽しみ下さい」
 簡単な挨拶だけで、リンゲル叔父はほかの人達のところに行ってしまった。
 あたしは別にリンゲル叔父と話したくもなかったから、あとで小姓の持ってきてくれた杯を自分のものと取り替えて、目の前に屯している崇拝者達と、楽しく話をしていた。
 やがてあたしは王様と一緒に退出して、自分にあてがわれた部屋へと戻っていった。
 踊らなかったけど、やっぱり人の前で演技をするのはかなり疲れることで、あたしは部屋でドレスを脱ぐと、ぐったりとなって、ベッドに突っ伏してしまったの。
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