「ま、続けているうちに楽しくなるさ。…決めた。お前の2学期の目標。クラスの全員に話しかけること」
か、勝手に決めないでよ!
あたし、そんなのできるかどうか判らないじゃないの。
「1ヶ月22日として、9、10、11、12月で88日か。冬休みが1週間入るのと、祝日とかもあるから、80日くらいかな。1日1人話しかければ、半分でおわるよ。どう? 簡単だろ?」
簡単…なのかなあ。
あんまり若原君が簡単そうに言うから、あたし、だんだんその気になってきていたの。
でも、クラスの全員に話しかけるのって、難しそうだよ。
だって、何て言っていいのか判らないもん。
「何かあたし自信ない」
「そうか? …それじゃ、ニッコリ笑って、おはよう! これならできるだろ?」
「そんなのだって、言える人は決まってるよ。恐そうな男の子になんか言えないから」
「うーんと、そんじゃ、理科の佐藤と仲よくなって、レポート返せ。そんときに何か話せば、それで達成だ。それまでに話してない奴チェックしておいてさ。オレも使った手だから確実だよ」
若原君、あたしのためにそりゃあ一生懸命考えてくれて、あたし、もうやるしかないよ。
目標達成できるか判らないけど、努力してみよう。
ずっと、あたしは変わりたかったんだもん。
少しの犠牲も払わないで変わるなんて、できっこないから。
「判った。あたしもその目標頑張ってみる。…それにしても、若原君がレポート返すの好きだったのって、目標のためだったんだ。知らなかった」
「それもあるけど、字を見るとその人が判るっていうじゃん。実は表書き見ながら、そいつの性格分析してたりして」
「…恐ろしい人。さぞかしあたしはとんでもない性格に見えたんだろうな」
「そうでもない。ただ、お前のレポートって異様に薄かったから、きっと根気がないんだろうなって思ったけど。まあ、それはある意味では当たってたんだと思うけど、オレ、今回のことで、お前を見る目がずいぶん変わったんだぜ。お前ってさ、何か、見かけとはぜんぜん違うよな」
どう解釈したらいいんだろう。
あたしは本当に根気がないと自分でも思うけど、あたし、見かけと違ってどうなのかな。
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