次の日から、あたしは職場復帰していた。
 毎日のようにパーティーに出席したり、王様と食事をしたり、延び延びになっていた神殿への礼拝もようやくすませ、それにともなって、あたしはまた少し疲れが出てきていた。
 きっとこの国の人って、みんなタフなんだ。
 あたし、自分の身体が弱いなんて思ったことなかったけれど、この世界に来てみて、自分の体力のなさを、いやというほど思い知らされたの。
 あたしは3日働いて1日やすむというパターンで、ようやく体力を保っていた。
 若原君は、さすがスポーツマンだけあって、けっこう平気な顔をして、あたしの側につきそっていた。
 ユーリルは今までとあまり変わらなかった。
 あたしもけっこう平然とするようにつとめていたし、ユーリル自身のそれまでの態度はまるでビジネスだったから、それほど変えようもなかったみたい。
 でもあたしは、できるだけユーリルと2人きりにならないようにつとめていた。
 ユーリルと私的な会話をすることがどんなに危険なことかも判ったし、今までたくさんの嘘をついたユーリルが、あたしとの約束を反故にすることも考えられるってことに気付いたこともある。
 あたしやっぱり、ユーリルが恐かったの。
 ユーリルの事を許したけれど、1度持ってしまった恐怖感を拭いさる事はできなかった。
 それに反比例するように、あたしの若原君に対する信頼感は、日を追うごとに大きくなっているようだった。
 若原君は時々きわどい言葉であたしをからかったけど、本気じゃない事はよく判っているもの。
 それだけはいつも肝に命じていたから。
 過大な期待はしちゃいけない。
 自分が傷つくだけ。
 若原君はあたしを好きじゃないの。
 だからあたしは若原君を信頼できるのかもしれない。
 まちがっても、ユーリルのようなことはしないから。
 そりゃ、抱きしめられたことはあるけれど、あれは、若原君になにかがあったのだと思っているから。
 なにかに傷ついて、誰でもいいから抱きしめずにいられなかったんだって。
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