次の日、この日もあたしは予定をキャンセルして、昼ごろまで眠っていた。
 その間にはいろいろな人からの、特に若い男性からのお見舞がたくさん来たけれど、本人たちには会わず、お見舞の品を受け取って、お礼の言葉だけを丁寧に伝えてもらっていた。
 それでもようやくのそのそと起き上がったとき、部屋をノックする音が聞こえて、待女のリーナから、若原君とユーリルが来たことを伝えられたの。
 あたし、まだ起きたばっかりだったから、少し時間をもらって、あわてて支度を始めた。
 2人の用事は判ってた。
 昨日の、ユーリルの振る舞いのこと。
 あたしのユーリルに対する気持ちは、昨夜から少しずつ変わっていた。
 昨日のユーリルの言葉を思い出したから。
 姫のことを、ずっと好きだったユーリル。
 あたしにはその気持ちが判る。
 あたしも、若原君のことをとても好きだったから。
 でも、だからと言って、あたしを傷つけてもいいことにはならない。
 それは、ユーリルの気持ちを知っていたとしても、許せることじゃなかったの。
 着替えと、簡単な身づくろいを整えて、あたしはリーナに合図をした。
 まもなく、リーナに案内されて、2人が入ってきた。
 リーナが飲物をおいて部屋を出るまで、あたしたちは誰もなにもしゃべらなかった。
 やがて部屋に3人以外の誰もいなくなったとき、若原君は静かにしゃべり始めた。
「平原、こいつに言いたいことたくさんあるだろ。好きなだけ言えよ」
 ユーリルは少し青ざめて見えた。
 左の頬には、昨日の夜ついたものだろう、軽いあざがあった。
 そして、手の甲には、あたしが昨日噛みついたときの歯形もあった。
「先にユーリルの話を聞くわ。あたしはそのあとでいい」
 若原君もかなり落ち着いてる。
 昨日のような、すぐにでも殴り殺しそうな気配は、今のところ感じられなかった。
「姫様はこうおっしゃってるぞ。お前の釈明を聞きたいってさ。話せよ」
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