このままの関係でいいの。
 あたしの気持ちを知ったら、いくら若原君がやさしい人でも、きっと今までと同じにはいかなくなる。
 きっとこんな風に側に来てもくれなくなる。
「ユーリルじゃないんだったら、誰が好きなんだ? 誰に告白してたんだ?」
 あたし、言葉が見つからなかった。
 どうしたらいいのか判らなかったの。
「…判った。言いたくないんだったら聞かないよ。オレもあせって変なこと言ったよ。少なくとも、お前の両想いのセカンドキスの相手はオレじゃねーもんな。悪かった」
 あたしは、若原君の言葉にまた少しズキンときてたけど、とりあえず1番困る質問だけはしないでくれたから、それでいいと思った。
「オレ、隣の部屋で寝るけど、大丈夫か?」
 …できれば一緒にいて欲しい。
「この部屋で一緒に寝ない?」
「…って言ったよな、前に」
「でも、ユーリルみたいなことはしないでしょう?」
「お前なー。そういう問題じゃねーんだよ。…ああ、お前は基本的なところで判ってない。あぶなっかしくてしょうがねーのな。
 判った。一緒にいてやる」
「本当?」
「ただし、寝ずの番でだ。一晩中見張っててやる」
「でもそれじゃ、若原君寝られないじゃない」
「オレは従者でお前は姫だろ? それに、若いから一晩くらいどうって事ないよ。さ、決まったらさっさと寝る!」
 あたし、ちょっと若原君に申し訳ないと思っていたけど、でも、若原君が少しでもあたしのことを考えてくれたのが嬉しくて、それに甘える事にしたの。
 あたしの枕元で、若原君は少しあたしを見ていた。
 あたしが目を閉じると、若原君はベッドから少しはなれたところに行って、あたしに背を向けていた。
 あたし、今日また1つ、若原君が好きになった。
 毎日1つ、あたしの想いはつのってゆくのかもしれない。
 それがあたしの恋。
 未来を考えると悲しくなったけど、今のあたしはこれで満足だったの。
 あたしは若原君への恋を抱いて眠った。
 その夜、あたしは若原君の夢を見た。
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