若原君、あたしの肩を抱く腕に力をいれた。
若原君の顔が、ほとんど間近って感じになって、あたしは心臓がドキドキしていたの。
「それじゃ、オレがあまーいやつしてやろうか。セカンドキス」
ほとんど息が感じられるくらいの耳元で言うんだもん。
あたしの心臓、飛び出しそうなくらい高鳴ってる。
「いいわよぉ。セカンドキスくらい、両想いの人としたいから」
「お前ってけっこう残酷…あっ!」
耳元で急に大きい声だしたら、びっくりするじゃない。
ただでさえ心臓に負担かけてるのに。
「なによ」
「お前、ユーリルのこと好きなんだろ? そう言ってたよな」
え? な、何のこと?
あたしが好きなのはずっと若原君だよ?
「あたしそんな事若原君に言った?」
「ほら、あの、誕生日の前の日に…しまった。この話は聞かなかった事にしたんだっけ」
あのときだ。
ダンスの練習してたとき。
「なんで? どうしてそういう事になるのよ」
「お前ユーリルにはっきり言ってたじゃないか。好きなの、って。あのときユーリルに告白してたんだろ?」
…すごい勘違い。
あたし、あのとき若原君の話してたの。
ユーリルに、若原君を好きなのかって聞かれたから。
若原君への気持ちを聞かれたと思って、それで若原君に、聞かなかった事にするって言われて、あたしものすごく落ちこんでた。
あのときの若原君の言葉、あたしの告白への断わり文句じゃなかったの?
「ええっと、なんて言ってたかな。愛しているかって言われると困るけど、でも好きなの。そんな風に言ってなかった? オレの聞き違いじゃないよな」
どうしよう。
これ、ごまかせない。
どう聞いてもこれって告白だもん。
本当のこと、あのときは恋の相談をしたんだって言ったとしても、じゃあ誰のことだって突っ込まれたら、あたし反論できない。
若原君への告白になっちゃう。
あたし今ここで告白なんかするつもりない。
今ぎくしゃくしちゃったら、あたし困るの。
本当に1人きりになっちゃうから。
今のあたしには若原君しかいないから。
次へ
扉へ
トップへ