若原君がグレンになったのは、姫がさらわれたからなの。
そして、ただ姫がさらわれたからだけじゃなくて、あたしが姫の身代わりをやることになったから。
まさか2年前に、姫がさらわれることとか、あたしと出会う事まで、計算できた訳がない。
姫とグレンは同じ年だから、2年前には14才だったはずよね。
14才の男の子と女の子。
そして、16才のユーリル。
3人の親のメリル。
これ以上、あたしの想像力は働かなかった。
いったいなにがあったの?
息子の死亡届を出さないような、何が。
「とにかく、オレにはユーリルが何を考えてるのかさっぱりわからないんだ。でも、例え何を考えていたとしても、それはフローラ姫にとって悪いことじゃないと思う。ユーリルはあれほどフローラ姫を崇拝していた。それが嘘だとは思えないから」
それはあたしも思う。
ユーリルはフローラを崇拝しきってる。
それは、嘘じゃないわ。
「このこと、ユーリルに聞いてみるの?」
若原君は考えていたけれど、やがて心を決めたように言った。
「やめとくよ。オレにはそこまでする権利はないからな。ただ、平原に危険が及ぶようなことになったら、オレも黙ってない。あと20日はここにいなければならないんだ。気を引き締めないと」
若原君が言った言葉は、あとで思い返してみるとまるで予言のようにあたしには思えた。
そして意外に早く、若原君の予言は当たってしまうのだった。
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