でも、フローラをさらった理由を考えると、あたしには犯人はリンゲル叔父以外に考えられない気がする。
フローラがいなければ、あの人は次の王様になれるから。
いまの王様にはフローラ姫以外に子供はいないし、王妃もいないから、新しい子供を作ることもできないものね。
もちろん、これから再婚すれば、まだ作れない年じゃないだろうけど。
「フローラ姫、生きてるかな」
若原君の言葉に、あたしはどきっとした。
だって、もしリンゲル叔父がさらったのだとしたら、フローラ姫なんて邪魔なだけ…
あたしはフローラのために、フローラをさらったもう1つの理由の方を考えていたの。
それは、フローラを好きな男性が、フローラ欲しさにさらったというもの。
その場合、もしフローラが生きていたとしても、きっともっと不本意なことになっているだろう。
どちらがフローラにとって幸せなんだろう。
それともあたしが考えつかない、別の理由があるのかしら。
「平原、ユーリルって、変じゃないか?」
あたしは若原君の言ったことが、よく判らなかった。
「メリルと親子だって事も隠してたし、グレンと兄弟だったことも。それに、どうしてグレンの死亡届を出さなかったんだ? だって2年だぜ? どういう死に方したのか知らないけど、葬式くらいだしたかっただろうに」
「ユーリルは、グレンの葬式してないの?」
「この国の制度を考えると、死亡届を出さずに葬式をやることは不可能なんだよ。なにかいきさつがあってのことなんだろうと思うけど、オレがグレンに化けたのはまるっきりいきがかりだろ。オレが2年後にグレンに化けることを予想して、死亡届出さなかったわけじゃないと思うんだ。…どうも、2年前のことがひっかかるな」
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