次の日も、その次の日も、あたしは部屋でぐうたらして過ごしていた。
 本当はいろいろ予定があったの。
 伯爵の主催したパーティーとか、リカームの外れの方にある神殿に礼拝に行ったりとか。
 でもあたしは、身体がまだ本調子じゃないことを理由に、それらの予定をキャンセルか、または延期にしていた。
 警備のことでユーリルに相談したら、ユーリルもその方が都合がいいって言ったから。
 ユーリルは本当に雑務に追われていた。
 本当はまだ18才なのに、ユーリル1人で1番大変な責務を負わされているみたい。
 ユーリルは、あたしの部屋の覗きについて、すごく神経質になっているようだった。
 そして、ただ一言だけ言って、あたしの部屋をあとにしていたの。
「リンゲル王弟殿下にはくれぐれもお気をつけになって下さい」
 リンゲル叔父は、顔は王様に似ていたけれど、とても印象の悪い人だった。
 ユーリルがでていってしまったあと、若原君が言ったの。
「ユーリルはもしかしたら、フローラ姫をさらった奴の目星がついてるのかもしれないな」
 あたしはそれがリンゲル叔父なのかと思って、そう言いかけた。
 それを若原君は制して、言ったの。
「フローラ姫が偽者だって知ってる奴は、フローラ姫をさらった奴に決まってる。でも、フローラ姫が偽物だと迂闊に言えば、自分がさらったことを自白してるようなもんだろ。だから、フローラが偽物だって証拠を集めようとしているんだ。
 ユーリルはそれを逆に利用して、フローラの居所を突き止めようとしているんだ。証拠を固めるのがどちらが先か、それが勝負だな」
 若原君てほんとに頭がいい。
 あたしそういう事さっぱり判らないもん。
次へ
扉へ
トップへ