このあとに、あたしのお礼の言葉があるの。
あたしは立ち上がって、喜びを1番伝えられる笑顔で、皆に話し始めた。
「皆様、今日は本当にありがとうございます。フローラは幸せです。皆様の心のこもった贈り物は、きっと大切にいたしますわ。わたくし、今日のことは生涯忘れません。皆様のご健勝と、この国の発展をお祈りいたします」
あたし、この時点でかなり疲れが来てたの。
でも、王様を心配させるわけにはいかなかったから、一生懸命笑顔を作っていた。
ダンスタイムで、あたしは王様と結局3回踊った。
リカーモンドワルツが1回。
可憐なフローラが2回。
その間には、たくさんの若い男性が、あたしをダンスに誘った。
この人たちの幾人かは、将来姫の婿として名前が上がる人なんだと思う。
でも、正直疲れてもいたし、ユーリルに言われていたこともあって、あたしはそのなかの1人とも踊ろうとはしなかった。
彼らは口々に、あたしの美しさをほめたたえていた。
黒い髪のこと。
一重のまぶたのこと。
低くて上を向いた鼻。
厚くて大きめの唇。
丸い顔も、この国では美の代名詞だったの。
あたしはこの国では、完璧な美貌を持った人だった。
ほとんどくびれのない身体も、女性なら誰もが羨むようなプロポーションだった。
でも、そうやって1つ1つあげられると、あたしは自分がどれだけきれいでないか、再確認しているような気がしていた。
だって人に、
「あなたはなんて丸い身体をしているのでしょう!」
とか言われても、ほめられてる気がしないの。
それなら、ただ美しいって言われる方が、あたしは嬉しかった。
3回目のダンスのあと王様が退出して、しばらくしたあと、ユーリルがあたしを促した。
あたしは皆に別れを惜しむようにほほえんで、やっとホールから出ることができたの。
その時のあたしは、もうほとんどぐったりって感じに疲れていた。
そして、ユーリルと若原君に抱えられるように、王女宮に戻ったのだった。
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