そんなあたしのちょっとした表情の変化を、王様は読み取ったみたい。
「フローラ、気分でも悪いのか?」
「いいえ。旅の疲れが少し残っているようです。2日間ゆっくり休ませていただきましたので、もうずいぶんといいのですけれど。
お父さまからはお見舞をいただきましたのに、お使者の方にもお会いできなくて…」
「そんな事は気にせずともよい。お前はフレイラによく似ておる。母の弱い体質を多く受け継いでいるのだろう。今日は早く帰って休みなさい。その、贈り物を受け取り、儂と1度ダンスをしたら」
「いいえ、大丈夫ですわ。わたくし、可憐なフローラもお父さまと踊りたいの。それだけは約束よ」
「おお、フローラ…」
王様と話をしている間に、部屋の様子は少し変わっていた。
人々が少し下がって、王座の下に広めの空間を作っていた。
それは、名前をよばれた人が進み出るためのもの。
おふれの声が、あたりに響き渡っていた。
「リンゲル王弟殿下。贈り物は、北の国ラングーから取り寄せた、馬車用の白馬2頭にございます」
進みでたのは、王様によく似た、でも、王様のような威厳を醸し出す資質はなくて、少し卑屈に見えるおじさんだった。
「国王陛下、並びに王女殿下には、ご機嫌うるわしゅう」
「大変よいものを有難うございます、叔父様」
あたしは数通りのお礼の言葉を習っていた。
これは、叔父さん用の言葉。
叔父さんは一礼すると、ほかの人に道を開けた。
「ダンバート候爵より、北カザムの毛皮にございます」
「ニクラス候爵より、職人ギースの手によります純白のレースにございます」
「ルビニオ候爵より、南の国ドーランの絹織物にございます」
おふれの言葉に進みでた1人1人に、あたしはお礼の言葉を言いつづけていた。
なかには何をくれたのかよく判らないものもあって、でも、とりあえず判るふりをして、あたしはお礼を言った。
30人くらい、あたしは話をしただろう。
残りの人のはとりあえず、あとで目録をもらうということで、プレゼント会は終わった。
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