ユーリルは身体でリズムをとりながら、あたしをリードした。
 見上げると、間近にユーリルの顔があった。
 少し目をふせるようにしている。
 長いまつ毛。
 ブルーの髪の人は、まつ毛もブルーなんだ。
 ユーリルの象牙色の顔が少し青みがかって見えるのは、きっとこの青いまつ毛のせいね。
 きれいなユーリル。
 どうしてこの人は、悲しいくらいにきれいなんだろう。
「ユーリルはきれいね」
 あたしの言葉に、ユーリルはずいぶん驚いたようだった。
 でも、ステップはふみつづけていた。
「私が…きれいですか?」
 若原君は素敵だけど、でもきれいとは違う。
「ユーリルを初めて見たときから思っていたの。なんてきれいな人だろう、って」
「姫…」
 ユーリルはステップを止めていた。
 そして、あたしをせつなそうな瞳で見つめていたの。
「初めてです。私をきれいだと言ったのは、姫が初めてです。私などより、姫の方が何倍も美しいではないですか。姫の言葉とも思えません」
 そう言ったユーリルの目に、あたしは胸がつまされるような感じを味わっていた。
 それは崇拝者の目。
 この人は本気で、あたしの美しさを崇拝している。
 あたしたちはお互いを見つめつづけていた。
「姫、何か悲しいことでもおありですか?」
 心の中まで見透かすような、ユーリルの瞳。
 それは的確に、あたしの心を見抜いてたの。
 少しだけ遠くなってしまった若原君。
 あたしはただそれだけのことで、この2日間、ずっとふさぎ込んでいたの。
「若原君の気持ちが判らなくて」
 あたし今、ユーリルになら何でも話せそうな気がしていたの。
 そんなあたしの言葉に、ユーリルはちょっと目をふせた。
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