あたし、ただ驚いて、呆然としたの。
そのうちに心臓が音をたてて動き初めて、あたしは身動き1つできなくなってしまった。
あたし今、若原君に抱きしめられてる。
心臓の音がどんどん早くなって、あたしは呼吸さえうまくできなくなっていった。
どうして?
あたし、またからかわれているの?
あたしの心臓、ほとんど爆発寸前のところまで高鳴っていて、ピッタリ密着した身体を伝って、若原君に聞こえてしまいそうだった。
どうしよう、このままじゃあたし…
きっとあたし、夢を見ちゃう。
若原君に愛される、幸せな夢を。
そんなこと、あるはずがないのに。
とにかく離れなきゃ。
あたし、腕に力をいれて、若原君を引き離そうとした。
少し離れたと思った瞬間、あたしはさらに強い力で、若原君の身体に押しつけられたの。
若原君の腕の中は暖かくて、気持ちよくて、でも、そんな若原君は少し恐くて、あたし、必死に若原君から離れようとしていた。
しばらく無言の抵抗をしていると、あたしを戒めていた腕からすうっと力が抜けて、あたしはようやくその心地よい場所から抜けることができた。
若原君はあたしを見ていた。
真剣なまなざしだった。
「若原君…?」
あたし、恐かったけど、視線をそらさないように、若原君を精一杯に見つめた。
あたしの視線をどう感じたのか、若原君はふっと、視線をそらした。
「平原オレ、フォローのしようのない行動とっちまったな。やっぱオレって危険度高いや」
若原君、それ、どういう意味なの?
ぜんぜん判らないよ。
いつものようにからかおうとしただけなの?
それとも、ほかに何か理由があるの?
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