グレンとユーリルは、兄弟だったの?
「申し訳ございません、陛下。ユーリルはまだ雑務が残っているようです。私が代理では恐れ多いことでございますが」
「よいよい。メリルも立派な息子を持ったものよ。ユーリルは将来有望な若者だ。そなたもよい目をしておる。末長く母を大切にな」
「は、ありがたきお言葉。母も喜びましょう」
ユーリルとメリルは親子だったの?
あたし、この新たな事実に、半ば呆然としていたみたい。
王様の言葉に、はっと我を取り戻した。
「フローラ、そなたは覚えてはいるまい。かの離宮にそなたを預けたのは、そなたが生まれて半年にもならないころだった。メリルは2歳になるユーリルと、フローラよりも3月ほど早く生まれたグレンとをつれ、そなたを育てるためにこのリカームをあとにしたのだ。
あのときはフレイラが泣いてな。フローラと、お気にいりだった待女のメリルとを同時に失ったと言って。…でも、仕方のないことだったのだ。それが王家に伝わる掟なのだから。フレイラは王家に嫁いだことを悔やんでいたのかもしれん。国1番の美しいフレイラを儂が見初めたりしなければな。…いまさら言っても詮ないことだが」
「それでもお母さまは幸せだったと、わたくしは信じております。離宮の肖像画のお母さまは、いつもわたくしにほほえんで下さいました。わたくしはお母さまの愛情に育てられたのですわ。あれほどの愛情を注げる方が、幸せでなかったはずはありません」
「フローラ、そなたは本当に優しい娘に育った」
あたしはフローラ姫。
本当は違うけど、今だけはフローラ姫でいたかった。
王様の心を少しでも慰められたらいい。
あたしは本気でそう思っていたの。
あたしと王様の最初の出会いは、こうしてとても美しく過ぎた。
そして、あたしはこれからの自分に、何か少し違ったものを見出していったのだった。
次へ
扉へ
トップへ