あたしはたくさんの待女たちにかしづかれながら、お風呂に入った。
ピンクで統一された大理石風のお風呂は、1人で入るにはとてもムダな気がしていた。
そして着替えをして、また馬車に乗ったの。
今度は王宮にいくだけだったから、馬車も簡単な飾り馬車で、乗り心地は相変わらず悪かったけど、でもとても楽しい時間だった。
若原君はずっと、あたしの側にいた。
従者だから、馬車を操っていたの。
短い時間で到着して、あたしはまた王宮のなかを歩いた。
そこは王女宮とは一味違って、とても実用的に見える作りをしていた。
ここは政治の中心にもなるところだものね。
警備も厳重で様々な人が出入りしていたの。
あたしが通ると、人々はみんな平伏した。
通り過ぎたあと、人々が何を言っているのかは聞こえなかったけど、口々にあたしの噂をしているのは、肌で感じていたの。
そうしてあたしは1つの部屋に通された。
そこは広い部屋で、調度もとても豪華に取り揃えられていた。
あたしはその部屋のテーブルについて、王様が来るのを待っていたの。
しばらく待つと、おふれの声がして、王様が顔をだした。
姫の部屋にあった王様の肖像画。
それよりもほんの少し年老いた、でも威厳を放つ国王陛下。
これがあたしのお父さま。
あたし、知らずに立ち上がって、王様にかけよっていた。
「お父さま!」
どうして涙が出るのか判らなかった。
16年間も会えなかった姫の気持ちが、あたしに乗り移ったのかもしれない。
あたしはなにも考えずに、ただ王様にかけよって、その身体に抱きついていたの。
「お父さま…」
「フローラ」
王様はあたしを抱き締めた。
16年間離れて暮らしていたわが子を抱きしめるように、あたしを抱きしめていた。
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