1度も見たことがない四次元空間。
 あたしはそれを見ることを、とても楽しみにしていた。
 出発する前に、あたしとユーリルと若原君は、1番四次元空間に近いという部屋に集まって、心を落ち着けていた。
「姫、これから四次元空間に入ります。私たちは竜に乗るわけですが、竜の背に落ち着くまでのあいだ、少しのショックがあります。この間のとき姫は気を失われましたが、目を閉じていていただければおそらく大丈夫でしょう。私が合図をしましたら、目を開けてみて下さい。かなり不思議なものが見えるかと思いますが、私たちも一緒ですので、安心して、決して動かないで下さい。空間はほんの数秒で抜けます。抜けるときは目を閉じなくても大丈夫でしょう。向こうは少し暗いですが、大丈夫ですので、気を落ち着けて下さい。よろしいですか?」
 あたしは黙ってうなずいていた。
 少し、緊張してるみたい。
「では、竜を呼びます」
 あたしと若原君は、ユーリルの両方の手につかまっていた。
 あたしは目を閉じて、その瞬間を待った。
「いきます!」
 その瞬間、あたしの身体はバラバラになっていた。
 本当はそんな事はなかったと思うけど、でもそう感じるくらいのショックが、あたしの身体に訪れていたの。
「もう、いいですよ」
 目を開けると、最初に目に入ったのは、たくさんの色だった。
 三次元空間のパノラマ。
 若原君の言葉通りの風景が、あたしの目の前に広がっていたの。
 数え切れないほどの空間が、重なりあうようにそこに存在していた。
 それはなんて神秘的な眺めだっただろう。
 本当にたくさんの文明が、世界が、ここでは一望できたの。
 恐竜の住む世界。
 進んだ文明を持つ世界。
 見慣れた摩天楼。
 廃虚の町。
 それらは本当に重なりあうようにして、そこに存在していた。
 あたし達が身体を預けてたのは、1頭の竜。
 パステルカラーの不思議な色合いをした、とてもきれいな生き物だった。
 それは滑るようにしてパノラマの中を進んでゆく。
 ユーリルは手綱を引き絞っていた。
「つきました。気を引き締めて」
 竜が止まって、ユーリルはあたしの手を取った。
 そしてゆっくりと、風景がかわってゆく。
 1秒の後には、あたしは見知らぬ部屋にたどりついていたの。
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