でも、自分が姫と同じように行動してみて、それが1番正しいことなのだと知った。
なにも言わないことは、相手に様々な想像を掻き立てる。
いい想像も悪い想像も。
それは状況によっては相手に尋ねることが出来ないようなこともあって、はっきりさせられないまま、その人は想像のなかで苦しんでしまうの。
物事をはっきりさせることは、相手を楽な気持ちにさせてあげられる。
あたしは、そんなフローラ姫の美点を、自分のものにしようと思った。
それはあたしの中の革命。
自分の気持ちが相手に通じたことの喜び。
それは、あたしを明るい気持ちにさせた。
この10日間はあたしにとって、とても有意義な日々だったの。
そして、その日々の最後の夜。
あたしはすべてのカリキュラムを終了した。
部屋で1人になる。
この世界での寝巻に着替えて、あたしはぼんやりと蝋燭の炎を見つめていた。
明日はいよいよ、王宮に入る。
そのことを考えると、今夜はなかなか眠れそうになかった。
そんなあたしがノックの音を聞いたのは、眠る時間までもう少しのころだった。
「だれ?」
「グレンであります」
「お入りなさい」
若原君とあたしも、すっかり姫と従者の会話が身についていた。
若原君が入ってきて、あたしに笑いかけた。
あたしも、若原君にほほえみかけていた。
「どうしたの?」
「いや、平原が眠れないんじゃないかと思ってさ。話しでもしようかと」
「本当は、若原君が眠れないんじゃないの?」
「実はそうなんだ」
そう言って、あたしと若原君はまたほほえみあった。
あたしはようやく、若原君と普通に話す事ができるようになっていた。
自分に自信がついたからなのかもしれない。
「お前体力つけておかないと、また四次元移動でぶっ倒れるんじゃないか?」
あたしは明日、2度目の四次元移動をすることになっていた。
馬車で30日の距離を一瞬で移動するには、1度四次元に入って、そこから移動するしか方法がないの。
あたしは1度倒れていたから、若原君は心配してきてくれたんだ。
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