「ユーリルの国では、パラレルワールドを移動することが出来るらしい。最近ユーリルの国の姫がさらわれて、別のパラレルワールドに犯人が逃げ込んだんだ。ユーリルはその姫の行方を追って、この世界にやってきた。ほかにも何人もの人間が必死で姫の行方を追っているけれど、もうずいぶん経つのに姫の行方が判らないんだ。そして偶然、オレはユーリルの姿を見てしまった。…ほんとはオレはとんでもないことをやらかしたんだ。オレ、好奇心が押さえられなくて、ユーリルの奴を脅迫して、この話を白状させちまったんだ。
ユーリルの世界には、四次元移動をするときの掟みたいなものがあって、まあこれは四次元世界を移動できる三次元世界すべての掟らしいんだけど、四次元移動の出来ない世界の住人にパラレルワールドの存在を話したりしちゃいけないらしいんだよな。オレは話をきく代償として、2つのことを約束させられた。この話を誰にも漏らさないってことと、ユーリルの捜しものが見つかるまで、ユーリルに協力するって事を」
話をききながら、あたしは若原君の矛盾点に気がついていた。
若原君、あたしにこの話してるじゃない。
約束、破ってるよ。
「平原、お前、この話誰にもしないって約束できる?」
意地悪そうな、でもちょっとチャーミングな若原君の笑顔。
あたし、無心でうなずいていたの。
若原君が言うなって言うんだったら、きっと誰にも言わない。
「よかった。――それでオレはその時から姿を消すことになったんだ。行方不明のあいだ、オレはリカーモンドにいたんだ。そこでユーリルにいろんな事を話してもらった。
リカーモンドの姫は、フローラっていう名前で、もうじき16才の誕生日を迎えるんだ。その国の風習で、王家の姫は16才までは王宮からはなれたところで教育を受けることになっていて、成人とみなされる16才になって初めて、王家の人間として認められて、王宮に戻ってくるんだ。フローラ姫はあと1ヶ月ちょっとで16才になるところで、今まで住んでいた離宮から馬車で旅を始めた直後に、何者かによってさらわれてしまった。ユーリル達重臣は、姫がさらわれたことを隠して、あと1ヶ月の間に姫を捜そうと、ばらばらになって旅を始めたんだ。さらわれたことを王様に報告したら、ユーリル達の首が飛びかねなかったからな。でも、どこを捜しても、姫は見つからなかった。そんなときに、オレとユーリルは出会った。
オレ、リカーモンドに行って、14才のころの姫の肖像画を見せてもらったんだ」
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