「パラレルワールドって知ってる?」
 きいたことはあったけど、それがどんなものなのか、あたしには判らなかった。
「知らないか。オレもよく判らないもんな。ともかく、日本語では並行宇宙って言うらしい。オレ達の生活している宇宙に重なって、もういくつかの…っていうか、無数の宇宙が同じ場所に重なるようにあるって事らしいんだ。オレ達は三次元の中で生活しているけど、それらは四次元の世界から見れば、まるで紙が重なっているように重なってみえるんだ。例えば…こう、何枚もの紙にいろんな絵が描いてあるとするだろ? その紙を重ねると、紙に描いてある絵は、お互いにほかの絵の存在を認識することが出来ないだろ? 紙は二次元だから、三次元的な感覚は判らない。三次元のオレ達が見れば、それらが重なっていることが判る。そんなふうに、三次元のオレ達の世界も、同じような三次元の世界と重なっているんだ。四次元の世界に行くと、三次元の世界が重なっていることが判る。それが、パラレルワールドなんだ」
 紙に描いた絵のように、重なった世界。
 それがどんなものかは判らないけど、あたしは信じられるような気がしていた。
 あたしがうなずくと、若原君は先を続けた。
「そのパラレルワールドの1つに、リカーモンドという世界があった。オレがあの日…10日前のあの日に、突然いなくなったのは、その世界の人間がオレの部屋にやってきたからなんだ。
 ユーリルという男は、オレの部屋に突然現われた。驚いているオレに、ユーリルは不思議な物語を話したんだ」
 若原君が現われてあたしが驚いたように、若原君もユーリルという人が来たことで驚いたに違いない。
 あたしはその時の若原君の驚きを、想像することが出来た。
 そしていつしか、あたしは若原君の話に引き込まれている自分を感じていた。
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