「さっきも謝ったけど、もう1度謝るよ。おどかしてごめん。そして、とりあえずオレのこと部屋に入れてくれてありがとう。ほんとだったらこんなに夜遅くに女の子の部屋になんか来ちゃいけなかったよな。でもそれなりの理由があっての事なんだ」
 あたしはまだ信じられなかった。
 若原君が、あたしの部屋にいることを。
 あたしの部屋、最近掃除もしてなかった。
 若原君がいなくなったから、そんな気になれなかったの。
 でもあたし、掃除をしなかったことをすごく後悔していたの。
 あたしの部屋を見て、若原君はどう思ったんだろう。
 それを考えると、顔から火が出そうなほど恥ずかしかった。
「平原、まだ怒ってるのか?」
 若原君の言葉に、あたしはびっくりした。
 あたし、怒ってなんかいなかったのに。
 若原君、勘違いしているの…?
 あたしはあわてていった。
「ぜんぜん怒ってない…です」
「よかった。何も話してくれないから、怒ってるのかと思った。オレ今までも怒らせてるつもりなかったけど、平原って他の人とは平気でしゃべるのに、オレとは口きかないだろ。オレ嫌われてるんじゃないかと思ってたんだ」
 そう言えばあたし、今まで若原君に話しかけられても、答えたことなかった。
 若原君には、あたしが怒ってたように見えてたの?
 あたし、心の底から申し訳ないと思った。
 だからあたし、勇気をふりしぼって、若原君に言ったの。
「ごめんなさい。あたし、引っ込み思案で…若原君みたいな元気な人と、どう接していいか判らなくて…。怒ってなんかいなかったの。ごめんなさい」
「それをきいて安心した。ユーリルに紹介してくれって頼まれたけど、嫌われてるかもしれないと思ってたから、約束果たせるかどうか不安だったんだ。少しだけ希望が持てた」
 そう言って若原君は、姿勢を正した。
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