あたし、平原茜。
 平凡すぎるほど平凡な女の子。
 平凡な公立高校。
 平凡な成績で入学して、平凡な美術クラス。
 平凡な友達。
 顔も平凡。
 一重のまぶた。
 低い鼻。
 ちょっと厚めの唇に、少し大きめの口。
 丸い顔。
 髪は長いけど、そのままだとボサボサになっちゃうから、うしろで1つにまとめてる。
 身長も平凡で、155センチ。
 体重は50キロにちょっと欠けるくらい。
 平凡に、太っているのが悩み。
 平凡なブレザーの制服を着て、今日も鏡の前に座った。
「ふうっ」
 鏡に映ったのは、平凡で個性のない、ちょっと眠たそうな自分の顔。
 あたし、この顔と一生つきあっていくんだなって、毎日思う。
 毎朝、ため息が出る。
 あたし、この顔が嫌いだった。
 自分の身体が嫌いだった。
 美人でもない、個性的でもない、一般大衆に埋没したようなこのあたし。
 こんなあたしに、テレビドラマみたいな恋愛なんて、縁がないと思う。
 15歳になっても、ボーイフレンド1人出来たことがない。
 でも、当たり前かなって、毎日思ってる。
 鏡の前であたし、毎日自分が嫌いになる。
 誰かが魔法をかけて、あたしを美人にしてくれないかなって思う。
 でもそんな事、不可能だって事も知ってる。
 あたしには、華やかさなんて似合わないの。
 これからもきっと一生、あたしは平凡に生きていくんだって、諦めながら暮らしてる。
 たぶん、10年経っても20年経っても、あたしはこのまま変わらないって。
 そうして諦めながら、あたしは三面鏡を閉じた。
 平凡な学生鞄を持って、あたしの平凡な1日は始まった。
 これまでと同じ、平凡な学生生活が。
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