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MP3最適ビットレートの研究

私が使っているMP3エンコーダーは「午後のこーだ」と言うフリーウェアで、高音質で定評のあるものです。

「午後のこーだ」ではステレオ録音時、ビットレートを80kbps(キロビット/秒)から12kbps刻みで増やすことができます。ただし、128kbpsから刻みが粗くなり、次は160kbpsになります。

ビットレートをいくつにするかは重要な問題です。これが直接音質の良否を決定するからです。

今まで、ビットレートは一律に160kbpsにしていましたが、ハードディスク容量の関係からスリム化が必要になりました。そこで、ここでは音楽ごとに、耐え得る最低のビットレートを追求することにしました。

友人の蒼流氏は「アウトドアでヘッドフォンで聴く分にはATRAC366kbpsで十分」とのことですが残念ながら、私の場合は安いヘッドフォンでも、モニター用ヘッドフォン(MDR−Z900)でも、音楽の種類によっては128kbpsでも辛いことがあります。ATRAC3MP3を単純には比較はできませんが、66kbpsともなると1/20の圧縮になり、高音質を維持するのはなかなか困難なものがあります。

一般的な傾向として、打ち込み音源やロック、ポップスなどは低ビットレート(96kbps程度)でも良く、繊細なクラシック音楽やサインウェーヴを多用する音楽(例えば初期のテクノミュージック、ファミリーコンピューターなどのPSG音源、携帯電話の「着メロ」などがそうです)は高ビットレート(128kbps以上)が必要です。

また、ステレオ感の乏しい音源ですと、「ジョイントステレオ」モードを利用することで、通常モードより1段下げても遜色ない音質になります。

ところで、CD以外の音源からエンコードすると、標本周波数が44.1kHzより低いことがあります。(標本周波数は音の帯域を決める要素で、標本周波数の半分が再生できる最も高い音になります。人間の耳は20kHz程度までしか音として認識しないので、通常はその2倍強ある44.1kHzで十分と言うわけです。)標本周波数を高く取れば取るほど、単位時間当たりに要する記録容量が増えます。例えば、標本周波数をCDの半分の22.05kHzにすれば、半分の記録容量でいいわけです。(記録容量を決める要素はもう一つ、量子化ビット数と言うのもありますが、ここでは説明しません。)

こうした、標本周波数の低いものをエンコードすると、ビットレートを低くした時の音質劣化が顕著になります。それは、MP3の圧縮ロジックにからくりがあります。MP3を始めとした圧縮音源は「聞こえにくい音をカット」して圧縮を行います。人間の耳で聞こえにくい高音や超低音はカットしても影響が少ないわけです。標本周波数が高い状態でエンコードすると、言わば「高音部の切りしろ」がたくさんあるため、カットすると音質劣化につながる中音域に情報(=ビット)を傾けることができます。しかし、最初から高音が「切れている」状態の低い標本周波数のものをエンコードすると、「高音部の切りしろ」がないため、ビットレートを低くすると音質に影響を及ぼす中音域をカットすることになり、音質は一気に悪くなります。

そこで、私の結論はこうなります。「標本周波数が44.1kHzより低い音源をエンコードする時は通常よりビットレートを1ランク上げる必要がある」と言うことです。

MP3においては、ビットレートを下げると金属質の「変なエコー」が高音にまとわりつくようになります。特にハイハット(シンバル)やヴォーカルの「シ」の音にまとわりつく傾向があります。これを抑え込めるところでビットレートを決めると言っても過言ではありません。(私はそうしています。)アナログメディアと違ってビットレートを下げてもヒスノイズ(ザーと言う音で、カセットテープが主要な録音メディアであった時代は宿命的なノイズでした)は発生しません。

様々なジャンルの曲、合わせて1100曲程をエンコードした結果、現在では以下のようにビットレートを定めています。いずれもモードはジョイントステレオで、心理音響解析もONにしてあります。

1.基本的なビットレートは112kbps

2.クラシック音楽、ジャズの場合は128kbps(クラシックは事情が許せば160kbpsにしたいところです。)

3.打ち込み音源(大抵のポップスは打ち込み音源です)は96kbps

4.ステレオ感が低い場合、または左右にリヴァーブがあるだけで同じ音の場合はビットレートを1段down

5.以上の場合で「変なエコー」が発生した場合はビットレートを1段up

 

さて、様々な音楽を聴取しているうちに、必ずしも法則に当てはまらないものも出てきました。そこで、主なテスト例を幾つか紹介しましょう。なお、テストはヘッドフォン(ソニーMDR−Z900)で行っています。パソコン内蔵のスピーカーで再生すると多少、許容範囲が拡大します。なお、長期聴取の結果、テスト内容に修正をかけているものもありますのでご了承下さい。(修正結果はいずれもビットレートを上げています。)

テスト曲「ヒトリノ夜」

このアルバムには「ヒトリノ夜」などの一頃よく流れた曲が入っています。さて、これを128kbpsでエンコードしたのですが、160kbpsと比べて音のざらつきが激しく、はっきりと音質劣化がありました。この手の音楽は通常、112kbps程度でも十分過ぎる音質を確保できるのですが、意外でした。現在は160kbpsで聴いています。なお、128kbpsのものをMDR−CD3000で聴取してみたところ、特に音のざらつきは感じませんでした。「MP3を聴く時は安いヘッドフォンで」と言う固定観念が崩壊した瞬間でした。

テスト曲「FRIENDS

往年の名曲「FRIENDS」を含む、言わばベスト版です。当初160kbpsでエンコードしたものを128kbpsまで落としましたが、明瞭な音質劣化はありませんでした。そこで、今度は96kpbsまで落としてみました。すると、ハイハットに不自然な金属質エコーがかかるようになりました。そこで112kbpsにしたところ、この不自然な金属質エコー音は消え、「許容範囲」に収まりました。

テスト曲「コンピューター・ゲーム”サーカスのテーマ”」「東風」「中国女」「マッド・ピエロ」(5月6日リポート更新

テクノミュージックの嚆矢、YMOのアルバムです。これは恐らく世界初のゲームサントラではないかと思います。往年のヴィデオゲーム、「サーカス」と「スペースインベーダー」の「音楽」が入っています。驚いたことに、80kbpsに落としても明瞭な音質劣化はありませんでした。ところが、何度が聴いているうちに矩形波に濁りがあるのが目立つようになり、96kbpsにエンコードし直しました。ちなみに、この後のアルバム×∞マルティプライズ(名曲「Rydeen」を含む8曲)でも同じことが言えました。

テスト曲「Omens of Love」「Prime

F1番組のテーマ曲で有名な「Truth」を演奏するグループ、T-SQUAREの初期のアルバム曲です。この中で「Omens of Love」はMP3泣かせの曲でした。128kbpsでもハイハットにエコーが出るのです。160kbpsでは大丈夫なので、この曲のみ160kbpsでエンコードしています。他の曲(例えば「Prime」…プリメではなくプライムです。念のため)ではこうした現象は起きません。蛇足ですが、「Omens of Love」は小泉今日子が歌詞をつけた上で「ウィンク・キラー」と言う曲名でカヴァーしています。

テスト曲「Danger Zone」「Through the Fire

1986年公開の映画で、ロック系の曲をフィーチャーしています。映画の方は観ていないので筋書きは分かりませんが、ハリウッドの映画にバリバリのロックが入ったのはこの頃からだったと思います。(他にはフラッシュダンスやフットルースがありました。)さて、ロック音楽なのでビットレートが低くても大丈夫と思いきや、112kbpsでいきなり「変なエコー」が出ました。ハイハットの音にまとわりつきます。128kbpsでは問題ありませんでした。

テスト曲「The Entertainer」「Solace」(11月21日追加

アカデミー賞を受賞した、1973年の名画のサウンドトラックです。特に有名なのが「The Entertainer」で、一度はどこかで聴いたことのある曲です。スティングの曲はラグタイムと言う1920年代に流行した軽快な音楽を採用しています。オリジナルはScott Joplinが作曲したものです。ピアノを中心としているため、ステレオ感が少なく、圧縮は比較的かけやすいです。112kbpsで全く音質劣化はありませんでした。

その後、更なる圧縮をかけてみることにしました。ピアノ曲では80kbpsにしても音質の劣化はありませんでしたが、ドラムでリズムを刻む曲ではあの「変なエコー」が出ます。そこで96kbpsにしたところ、「変なエコー」は消えました。

また、1曲だけモノラル音源の曲がありますが、「強制モノラルモード」で40kbpsにしても音質劣化はありませんでした。

テスト曲「白鳥の湖(全曲)」「くるみ割り人形(全曲)」

チャイコフスキーのバレエ組曲は様々なCDが出ていますが、今回テストしたものはカラヤンが指揮したもので、1960年代から1970年代初期の録音です。名盤なのですが古い録音ですので、高域の周波数特性が悪く、また暗雑音が多いのが特徴です。古い名盤をMP3でエンコードするとこうした特性が逆に幸いして圧縮がかけやすくなります。(ノイズがノイズをごまかす、言わば「毒をもって毒を制す」状態になるわけです。)128kbpsの圧縮で何の問題もありませんでした。

テスト曲「BUBBLE SYSTEMウォーミングアップのテーマ」「1面の曲」「ビッグ・コアのテーマ」

グラディウスはコナミ初期の名作シューティングゲームです。(私はこの時代のコナミのゲームが好きです。ツインビーパラダイス以降のノリにはついて行けません。年老いたせいでしょうか。)このゲームの音源はPSGがメインです。ところが、意外なことにビットレートを96kbpsに落としても音質劣化は出ませんでした。80kbpsになると、変なエコーが出ましたので和差成分ごとに圧縮をかけるM/Sステレオを臨機応変に使い分けるジョイントステレオでエンコードし直しました。すると、変なエコーは消え、160kbpsと聴感上違いのない音質になりました。

テスト曲「Dee Jay Stage」「Cammy Stage

ストリートファイターUシリーズは若い頃、よく遊んだゲームの1つでした。次々とヴァージョンアップが成され、ダッシュ、ターボ、スーパー、スーパーXと言った具合に接頭語や接尾語がついて、敵役が使えるようになったり、新しいキャラクターが追加になったりしました。その中の4作目、スーパーストリートファイターUのアーケード版ゲームサントラです。Qサウンドを採用し立体的な音質を獲得とありますが、私はスーパーファミコン版の初代やターボの方がいい音のように思えました。さて、聴いた方は分かると思いますが、音源が特殊です。FM音源ではなく、一応PCMのようなのですが不自然な響きがあります。一体、ビットレートの圧縮がどこまで利くのか想像できませんでした。やってみると、112kbpsまでは許容範囲でしたが、96kbpsになると例の「変なエコー」が発生しました。そこで、現在は112kbpsで聴いています。

テスト曲「鮪(ガルフォードステージ)」「舶来女(シャルロットステージ)」「平和(エンディング2)」「革命女(シャルロットエンディング)」

SNKの名作対戦格闘ゲーム、サムライスピリッツのゲームサントラです。NEOGEOと言うシステムで動いていました。これは音源としてPSGFMPCMと3種類「フル装備」でした。これらを合わせて作った音楽は他のゲーム機にはない、特殊な雰囲気をもたらしました。実際、圧縮をかけてみるとやはり特殊でした。112kbpsの時は上記4曲とも特に音質劣化はありませんでした。そこで思い切って80kbpsにしてエンコードし直しました。例の「変なエコー」が出るだろうと思って「覚悟」をして聴いてみたのですが、「鮪」以外の3曲は112kbpsとほぼ同じで、許容範囲でした。しかし、「鮪」だけは例の「変なエコー」がして我慢なりません。そこで96kbpsにてエンコードし直してみました。しかし「変なエコー」は消えません。以上のことから、「鮪」が112kbps、他が80kbpsと言う変則的なエンコードになりました。

テスト曲「戦闘(ノーマルバトル)」「決戦(中ボスバトル)」「大団円」「飛空挺ブラックジャック」「妖星乱舞(ラストバトル)」

ファイナルファンタジーを国産RPGの双璧たる地位を確固たるものにしたのがこの6作目でした。当時、これを超えるRPGは作れるのだろうかと言う話さえ出ていたのです。(結果として7作目はこれを超えたのですが。)スーパーファミコン音源は比較的圧縮が利くのですが、シンバルを多用するバトル音楽は96kbpsでも「変なエコー音」がします。そこでバトル音楽は112kbpsに、他は96kbpsでエンコードしています。

テスト曲「Battle Theme」「Prelude」「Battle in the Dungeon #2

ファイナルファンタジー最新作のゲームサントラです。オンラインゲームになったため、最終ボスとエンディングの曲がなくなり、今までとは少し趣が違います。オープニングのコーラスでは今回、エスペラント語を使っています。世界中からアクセスできるオンラインゲームにあって、特定の国の言語ではなく「世界共通語」を使いたいと言う思いからだそうです。さて、圧縮についてですが曲によって大きく違っています。シンバルを使わない「Prelude」は96kbpsでも変なエコーは出ません。シンバルを使う曲は112kbpsでエンコードしましたが、「Battle in the Dungeon #2」だけは112kbpsでも変なエコーが残りました。128kbpsでようやくエコーが消えました。

テスト曲「CD−DAトラックにあるサウンドトラック曲(オープニングテーマLUNARなど)」

メガCDが産んだ数少ないRPG、LUNARのサウンドトラックです。ゲームCDのCD−DAトラックから直接エンコードしました。最初、80kbpsでそれなりの音が出て驚いたのですが、何度も聴いているうちに高音にまとわりつく「変なエコー」が気になりました。ヴォーカルのあるオープニングテーマ曲「LUNAR」の他、シンバルやタンバリンを多用する曲に顕著でした。しかし、トライアングルの音では「変なエコー」は出ませんでした。

現在は「変なエコー」の出る曲については96kbpsでエンコードし、聴いています。なお、蛇足ですがLUNARを作ったのはゲームアーツと言う会社で、技術的にも優れたことをすることで有名です。(メガCDではポリゴン映像で、そして何とPC-8801ではワイヤーフレーム3D映像でそれぞれシューティングゲーム「SILPHEED」を作りました。お気に入りのゲームの一つです。)また、メガCD版の続編LUNAR〜Eternal Blue〜は発売枚数が少なく、一時はプレミア商品になりました。

テスト曲「CD−DAトラックにあるサウンドトラック曲(Stage16他)」

LUNARの項でも説明しましたが、メガCDでありながらポリゴンシューティングゲームのSILPHEEDです。難易度は高めで、私は裏技でシールドを回復(敵に当たるごとにシールドが削れるシステムです)して、ようやくエンディングを拝めました。ただ、シールド回復の裏技だけでは駄目で、最終面のラスボスでは制限時間以内に破壊しないと強制ゲームオーヴァーです。でも、圧倒的なクオリティーに感嘆しました。特に好きなのが地球上空での戦いがある10面と木星を背景に戦う6面です。絵がきれいなので後ろで見ていてもなかなか楽しいです。

さて、本編ではFM音源で音楽が鳴り、CD-DA音源は使いません。CD-DAトラックにはおまけとして7曲が入っています。中間デモ音声、1面、3面、6面、9面、ボス戦そしてエンディングの音声部分の順で入っています。これらは96kbpsでエンコードしましたが、変なエコーは発生しませんでした。

テスト曲「星めぐりの歌」「一番のさいわい」

宮沢賢治原作「銀河鉄道の夜」を映画化した際に使った音楽です。プロデュースは細野晴臣氏(YMOの一員でもありました)で、シンセサイザーをフル活用して、「銀河鉄道の夜」の幻想的な雰囲気を出すことに成功しています。原作が元々難解でしたので、映画版もやはり難解でした。(この映画を観たのが中学生の頃ですから、今観たらまた違った感想になるのかも知れませんが。)少しでも難解さを和らげるためか、アニメになっています。登場人物のジョバンニを始めとして全て猫になっています。それでも、難解なことに変わりはありませんでした。でも、音楽は気に入っています。

さて、これは最初112kbpsでエンコードして何の問題もありませんでした。ところが、96kbpsに落とすと、タム(高音のドラム)の音が濁ってきました。80kbpsにするとさらに濁りがひどくまとわりつくようになりました。タムがない場所は80kbpsでも問題はなく、あの「変なエコー」もしませんでした。ただ、タムの濁りはどうしても我慢できず、112kbpsで聴いています。

 

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