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音楽が死んだ日

2004年の紅白歌合戦は史上最低の視聴率を記録したとの報道が目につきます。実際、私がその時間に見ていたのはK−1とPRIDEでした。

過去を振り返ると、私自身も昔は見ていました。BBクイーンズが「踊るポンポコリン」を歌っていた頃までです。もう、かなり前ですね。

視聴率低迷の理由としては2004年10月頃から露呈し始めたNHKの不祥事(受信料=事実上の「公金」横領とそれに対するNHK内部の認識の甘さ)が少なからず影響していると思います。

しかし、これは2004年に限ったことです。実は紅白歌合戦は右肩下がりの傾向が続いています。ビデオリサーチのデータによりますと1962年には関東圏で80.4%の視聴率でした。これが1989年には視聴率の高い2部で47.0%になっています。

1970年代は7割以上の視聴率を誇っていたのに、2000年以降は50%の壁を破るのも難しい状況です。

衛星放送などの普及で他メディアで紅白歌合戦を見ている例もあるはずですが、これを考慮しても右肩下がりの傾向は変わりありません。

なぜでしょうか?

簡単に言えば音楽の魅力がなくなってしまったからです。使い捨ての音楽を量産したツケが回ってきたのです。

音楽業界の動向を見ますと、紅白歌合戦の低迷についてはNHKの失態と他人事のような雰囲気です。しかし、海老沢会長が早期に辞任していたとしても視聴率低迷の流れは変えられなかったでしょう。音楽業界自身が紅白歌合戦の魅力低下について真剣に考えていないからです。

私が若かった頃はTVではポップス系の音楽番組がどの民放でもありました。ラジオでも夜9時になると若者向けの番組になり、「電リク」(電話リクエストの略で、希望の曲を流して欲しいとリアルタイムで電話をしてリクエストをすることです。今は死語なのでしょうか。IMEでも変換できません。)なども盛んでした。しかし、今はそうしたものは以前ほどは聞きません。

音楽を聴かないライフスタイルがじわじわと浸透しつつあるのです。この現実からまるで目を背けるように音楽産業の衰退が違法コピーのみにあると声高に叫んだ挙句、ますますユーザーを音楽から遠ざけているように思います。

では、どうすれば紅白歌合戦は再び以前の活気を取り戻せるのでしょうか?

答えは口で言うのは簡単です。だらだらと4時間も行わず、コンパクトにすれば良いのです。正直なところ、午後10時開始、11時45分終了の1時間45分番組で十分なのです。男女8組、平均4分歌うとして64分、曲間準備が15分、成績発表が5分、オープニングと余興の合計が20分で大体収まります。

これではもちろん、出場する歌手を今よりも減らさなければなりませんし、曲の数も同じように減ります。しかし、絞ることは良いものを選り抜く基本です。現状は世代別の音楽を一緒くたにして番組編成をしているため、紅白歌合戦はどうもしまりのない構成になってしまっています。この辺りの苦悩はNHKの番組制作者が一番知っていると思います。

そのためには世代を超えて感銘を与える音楽があれば良いのです。しかし、現実は音楽の工業製品化(=使い捨て)が進み、もはや引き返すのが難しい状況です。

この状況に音楽業界が自ら歯止めをかけることができなければ、紅白歌合戦の衰退は音楽業界の衰退と歩調を合わせるように、自滅へ向かっていくことでしょう。

最後の紅白歌合戦の締めの曲が「蛍の光」ではなくレクイエムの「キリエ」になるような事態だけは避けて欲しいものです。

 

参考データ

ビデオリサーチ「紅白歌合戦」の視聴率(URLについてはリンク切れの可能性もありますが、ご容赦ください。)http://www.videor.co.jp/data/ratedata/program/01kouhaku.htm

 

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