The Riichan Page

「りいちゃんぺいじ」トップ音楽>オーディオ不況を考える

オーディオ不況を考える

近年、深刻なオーディオ不況により、かつての名門企業が倒産、あるいは再編の渦中にあります。

かつてのオーディオのメッカである秋葉原は今やアニメの街と化し、真空管やトランスを扱っていた店の後にはアニメの同人誌やフィギュアと呼ぶ模型人形を売る店に変わっています。

どうして、ここまで深刻な不況に陥ってしまったのでしょうか。理由は2つあります。

1.オーディオ人口の高齢化

オーディオ雑誌の老舗に「無線と実験」があります。工作派がメインの、かなり硬派のオーディオ雑誌です。ここに毎月、読者からのアンケート結果欄があります。ところが、そこに投稿する読者の年齢層は50代以降が多く、30代や20代はめったに見かけません。「無線と実験」の読者層は比較的お金と時間に余裕のある層(趣味に十分なお金と時間を投じることができる層)なので、第2の人生を謳歌する人が主体なのかも知れません。

しかし、同じオーディオ雑誌の「ステレオ」誌でも、インタヴューに出る人に若い人はほとんどいません。(以前、若い人がいると思ったら私の後輩でした。余談です。)

趣味層に若い人がいなければ、その趣味は遠からぬうちに衰退します。若い層は購買力こそ高くはありませんが、いずれ高くなります。ところが、そうした層がオーディオ趣味の場合、いないのです。

この事実はオーディオ業界に残酷な現実を突きつけます。例え日本の景気が良くなっても、オーディオ製品を買ってくれる層は減るばかりなのです。

2.魅力的な製品の欠如

オーディオの世界でも当然、技術革新が進みSACDDVD-Audioと言ったCDを越える音質を持つメディアが登場しています。

しかし、こうしたメディアはレコード会社から一方的に供給を受けるだけで、録音をすることはできません。技術的に不可能ではないのですが、「著作権上の問題」で録音機の開発をしないのです。

実は、レコード会社は過去から今に至るまで苦い経験を積んでいました。せっかく自分たちが販売したパッケージメディアが、録音媒体で簡単にコピーできていしまい、本来得ることのできる利益を逸していたのです。

この現状にレコード会社が怒り、普及を妨げたのがDATです。オーディオメーカーも妥協してSCMSと言うコピーガードをつけましたが、それが今度はユーザーの反発を買い、結局普及はしませんでした。

皮肉なことに、DATは現在、民生用として最も高音質な録音ができるメディアです。しかし、DATの技術は15年以上も前のものです。それ以降、DATを越える録音メディアは登場しなかったのです。

こうした姿勢は能動的に情報を発信し、加工する現代の文化(その最たるものが廃業したオーディオ店の後に入ったアニメの同人誌屋でしょう)には少々そぐわないものがあります。SACDDVD-Audioが普及しない背景は、これら高音質メディアの受け皿となる録音メディアがないからに他なりません。

確かに高音質な録音機の存在により、レコード会社にとって不愉快なコピー蔓延は起きます。しかし、本物の魅力はコピーに代え難いものがあります。魅力ある製品作りを怠ってコピーを糾弾するのは、ユーザーとしては愉快ではありません。(もちろん、能動的に情報を発信する時代ですから、著作権の重要性は認識しています。それに、有望なアーティストを違法コピーで「絶滅」に追い込めば、結局聞き手が一番大きな損害を受けるわけです。)

特にMP3にしても音質劣化が出ない劣悪なCDを作っているようなメーカーには深い憤りを禁じ得ません。(そう言うメーカーはCDに強力なコピーガードをかけて対抗しているようですが、本末転倒としか思えません。そして、強過ぎるコピーガードによって「正規に購入」したユーザーのCDプレイヤーに悪影響を及ぼす、皮肉な事件も起きています。)

 

このような状況を打開するには、優れた録音機を作ること、若い人にアピールできるオーディオ機材を作ることに他なりません。レコード業界もこのことをもう少し認識すべきと考えます。

 

前のページへ

 

©2002 Riichan

No reproduction or republication without written permission.