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もっと安価で良質なCDを!

最近、CDの売れ行きが芳しくないと言います。経済そのものが不況であるのもその理由ですが、私は他に問題があるように思えてなりません。

1.粗製濫造

私の手元には様々なジャンル、約450枚のCDがあります。(この文章を最初に起草してから50枚さらに買いました。)

ところが、最近は長く愛聴するCDがなかなか出ません。(買っているCDも昔のものがほとんどです。)以前ならレコード会社のプライドにかけて発売など決してできない、ひどい録音のCDもあります。(レヴェルオーヴァーをして、ざらついた音になっているものや、コンプレッサーをかけて意図的にSN比を下げて録音技術の稚拙さを隠しているものなどがあります。)

はっきり言ってしまうと、音楽の粗製濫造をしているのです。かような状況では、オリジナルのCDを持とうと言う気持ちはなかなか湧いてはこないことでしょう。

そうなると、インターネット上で違法に流通しているMP3で事足りると言うことになってしまいます。

これに対して音楽業界ではコピーできないCDの製造で対抗しています。しかし、概して言えることは、「買うに値しない」ものほどコピーガードをつける傾向があります。

しかも、コピーガード付きのCDはコピーガードをつけないものに比べ音質が低下しています。違法使用者をなくすために正規のユーザーに粗悪品を売ると言う、まことに皮肉な状況に陥っています。

どうあれ、良い音楽が聴けなくなると思うと、暗澹たる気持ちになってしまいます。

2.再版価格制度の位置付け

日本は資本主義経済の国ですが、CDは共産主義国ばりの統制価格制度を敷いてあります。これを再版価格制度と言います。

しかし、似たようなジャンルの映像パッケージメディア(映画など)、ゲームソフトなどには再版価格制度を適用していません。

再版価格制度について音楽業界やJASRACは「文化を守るため必要」と言う見解です。しかし、映画やゲームも文化です。なぜ、音楽だけがいいのでしょうか?

以前、プレイステーションのソフトにソニーコンピュータエンターテイメント(SCEI)は再版価格制度もどきのシステムを小売店に強要し、問題になったことがありました。しかし、JASRACはSCEIの肩を持ちませんでした。ゲームも文化の一部です。ならば、JASRACの理屈からすれば、SCEIの行為は「正しい」はずなのです。公正取引委員会に対して共同戦線を張らなかったことは、理解しがたいことでした。

この事実からすると、再版価格制度維持は既得権の保持以外の何者でもないと言うことになります。

音楽業界は再版価格制度があれば「不採算」な音楽CDも作れると説明しています。しかし、実際は手に入れたいCDが廃盤になっていることもしばしばです。(AVEXなど、「廃盤にしない宣言」をしているレコード会社も一部にあり、それは歓迎すべきことです。)

聞きたい音楽を聞くことができなければ、探すしかありません。欲しいCDが廃盤と言う通告を何度も聞くと、「違法」に流通しているMP3ファイルの規制に素直に賛成できなくなってしまいます。

そして、今は個人でもCDを作ることができます。レコード会社が言う「不採算」な音楽は個人や同人に作らせれば良いのです。同人のパワーがいかに強大かは秋葉原を1日歩けば、分かると思います。

正直なところ、再版価格制度があることでCDの値段は硬直化し、正当な市場評価で購入できないのです。そうとなれば、高い値段を甘受するか、違法コピーをするかの二者択一というわけです。

1つ、強調したい事実があります。アドビのPhotoshopはその昔、10万単位の値段がしました。その頃は「余りに高額」なため、違法コピーをすることは半ば常識でした。しかし、今は基本的な機能を持ったものが1万円程度の手頃な値段で購入できます。企業・学校・個人を問わず正規品のパッケージがパソコンの横に転がっている光景をよく見ます。1990年代前半には想像できなかったことです。似たような事例は一太郎など他のパッケージソフトにも言えます。

再版価格制度を見直す時期に来ているのです。この事実から逃げている間は音楽産業の浮揚は難しいと思います。

あるいは、「ユーザーにとって適正かそれより若干高い価格を支払えば全ての音楽が間違いなく手に入る」ことを保証することも選択肢の一つかも知れません。(しかし、キャンペーン期間限定とは言えハリウッド映画のDVDより、邦楽CDの方が高いのはどう考えても不自然です。)

3.まとめに代えて

本来なら買う気にさせるCDを作ることが最大そして最強のコピーガードになるはずです。しかし、残念ながら、音楽の粗製濫造は時代の要請のようです。

それならば、それに見合った価格設定が望ましいと考えます。違法コピーをする気にさせなくする価格設定、それしかないのです。目安はアルバムが1枚200円、シングルが100円です。(CDメディア原価が1枚50円。これに固定費を加味するとどうしてもこの価格を下回るのは厳しいと思います。)プラスティックのケースでは高くつくでしょうから、LP時代と同じボール紙のジャケットにします。こうすれば環境にも優しくなります。(プラスティックのケースは「初回限定版」に使うといいでしょう。)

フルオーケストラで豪華な機材を惜しげなく使うような音楽ならともかく、MIDI音源やそれに類した打ち込み音源で、しかもレヴェルオーヴァーを見逃す程度の品質管理であるなら、音楽の製造原価はそれほど高くないはずです。この価格で会社が潰れない程度の利潤を確保できるはずです。

手間を考えると恐らく、この値段なら違法コピーは激減すると思います。また、違法コピーの「温床」とも言えるレンタルCDは壊滅的打撃を受けるに違いありません。(私見ながら、レンタルCDにCCCDを導入するのは良いアイディアだと思うのですが、いかがでしょうか?)

 

補遺

最近、アジアに輸出したCDの日本逆輸入を規制する法案をレコード業界は提案していますが、とんでもないことです。アジアに輸出したCDが安く、運送費をかけても日本で売れば儲かる現状を打破したいからなのですが、日本在住の人間に不当に高いCDを売っていることを自ら証明しています。

こんなことが実現すれば、UGでの違法コピーを蔓延させるだけで、CDを初めとする音楽パッケージメディアを買う習慣が廃れかねません。これは結局、レコード業界の首を絞めることに、ひいては日本の音楽文化の衰退に拍車をかけることにつながりかねません。

ぜひ、JASRACや文化庁は大局的にものを見て欲しいものです。

 

補遺2

9月にAVEXがCCCDの弾力化、それに続いてソニーミュージックエンターテイメント(SME)がレーベルゲートCDを止めるとのプレス発表がありました。「魅力あるCDを作る」と言う本来のコピーガードについては何ら対策を打っていないようで手放しでは喜べませんが、ユーザー側としてはとりあえず良いニュースではないかと考えます。

 

 

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