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BOOKLAND 196号★上野 瞭さんの作品

上野 瞭さんの作品は長編が多いのですが、その物語のおもしろさに長さを感じさせません。
おもしろい物語の中に 人間の心の闇の部分や、社会の暗部がきちっと見据えられ、描かれています。
ジオジオにとって、上野さんの 作品の存在はとても大きいものがあります。

「日本宝島」

理論社
医師弘庵のもとで医術を学ぶ羽島平助は、突然現れた少女おときに 手渡された「覚え書」を見て、失踪した父がある島で生きていることを 確信する。弘庵は藩の経済を支えるお白粉「都わすれ」の恐ろしい毒性を 公表しようとして城下を追われる。島に強い興味を示す回船問屋の宗兵衛の 助けを得て、平助、おとき、弘庵、謎の浪人者司新兵衛らは、それぞれの 思惑と秘密を胸に島を目指す。現代にも通じる社会の闇が描かれます。400ページの長編。(1,942円) 「ひげよさらば」

理論社
記憶喪失のネコ、ヨゴロウザはナナツカマツカの丘で、そこに暮らすネコ、片目に 助けられる。この丘にはタレミミ率いる野良犬たち、キバを中心とした野ネズミ たちがなわばりを持っていた。食糧不足の冬が来れば野良犬たちは野良猫たちの 縄張りに進入するに違いない。集団で戦う犬たちに対し、単独行動をする猫たちは 勝ち目がない。ネコたちをまとめる役がヨゴロウザに回ってきた。個と集団の中で ヨゴロウザは苦労する。そして戦いが始まった。780ページの大長編。(4,600円)
「さらばおやじどの」

理論社
田倉新吾は町中を裸で駆け抜けた。彼の父、田倉兵庫は御番所頭(裁判官) である。父は息子に入牢を命じた。そこは、牢番頭の鳥見多三郎が恐怖政治を 行っていた。新吾はそこで知り合った杢兵衛の無実の訴えと秘密にされていた 「美作村焼き討ち、村民虐殺事件」を知り、いずれにも父親が関与している ことを知る。親と子の愛と葛藤、制度の中で壊れ、壊されてゆく人間たちを 描いた650ページの長編。(3,000円) 「そいつの名前は、はっぱっぱ」

理論社
母が家を出て行った。父は酒に逃げ、兄はそのことにふれない。小学校6年の真には 「出来事」の荷は重すぎた。学校では遅刻の常習犯、友だちとも離れて孤立した毎日を すごしていた。そいつは突然現れた。葉っぱのようだが、蝶のようにも飛べる。 会いたいときには現れず、ピンチの時に現れて真の気持ちをかき回す。ある日、学校を 休んで、父、兄、真の三人はバスで食事に出かけた。その車中にあいつが現れて...。(1,262円) 小学生から楽しめます。
「グフグフグフフ」

あかね書房
1年間の約束で先生をしている和子さん夫妻に預けられた犬の長太郎が見た 一家の人間模様。書き下ろしの表題作他「季刊飛ぶ教室」に発表した三つの 短編を含む短編集。1,165円) 「もしもしこちらメガネ病院」

理論社
メガネ病院は眼科です。オジイサンが院長で、その奥さんのオバアサンが看護婦です。 この二人もヘンですが、やってくる患者もヘンなんです。ストーレートな ナンセンス・ユーモアにあふれた作品です。小学生から楽しめます。(1,165円)
「ただいま故障中」

晶文社
大学退官後にはじめた「晩年学フォーラム」の通信に掲載されたエッセーが 単行本に。「歯が痛い!」の章に一行だけジオジオの講演のことが...。病気、老い、上野さんの 晩年の行き方が切々と伝わって来ます。愛すべき一冊です。(2,100円) 「映画をマクラに」

解放出版社
知る人ぞ知る、上野瞭さんは部類の映画好き。そして、必ず街の映画館で 見たそうです。分析的に批評するのではなく、「ただただ映画を見て、自分の 生きている時代感覚を記録する」「ある時期の時代背景としての映画... その覚書でもある」(「あとがき」より)というエッセーともいえる一冊です。(1,600円)
「宝島へのパスポート」

解放出版社
上野瞭、今江祥智、山下明生、三氏が縦横に語り合う子どもの本の 昨日、今日、明日。1,600円) 「現代の児童文学」

中央公論社
1972年に刊行された本(新書版)ですが、少しも古さを感じません。 上野瞭さんの児童文学論がはっきりした形となって示されています。666円)
「子どもの本の現在」

岩波書店
清水真砂子さんの児童文学作家論。この中に、上野瞭論「現在(いま)を見据えて」 が入っています。ぜひ、読んでください。(1,200円)


上野瞭さんの本は品切れ、絶版が多くとても残念です。その中でも特に復刊してほしい本があります。

    ★「ちょんまげ手まり歌」(理論社)      ★「目こぼし歌こぼし」(あかね書房)  
    ★「もしもしこちらオオカミ」(小学館)    ★「晴れときどき苦もあり」(PHP

「砂の上のロビンソン」「アリスの穴の中で」「三軒目のドラキュラ」の三冊。 文庫ででもいいので是非!

●注文がたくさんあれば復刊の可能性がないとは言えません。 ジオジオも出版社に働きかけてみます。みなさまも是非。