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★ジオジオからのメッセージ
           




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417号


不安な夏になりました。先が見通せないのは、国も、私たち国民も同じなのでしょうか…。

未知のコロナと共生していくことを覚悟していかなければなりませんが、たくさんの問題がそこから浮き彫りになってきたように思います。
今、私たちの国の税金がどう使われているのか…。疑問を感じながら、日々、ニュースを追っています。
私たちにとって答えは単純で明確です。
不要不急のことに税金を使うことを止めて、まずは国民の命と暮らしを守ってほしい。
家族の一大事に何を優先するか…と同じではないでしょうか。医療の無償化、教育の無償化…実現すれば いいなあ。

敗戦から75年の夏になります。国民に主権が渡されて74年です。賢い未来を、これからの人たちに残すことができるでしょうか…。 


「ほんとうのリーダーのみつけかた」            梨木香歩     1200円+税    

この本は、梨木香歩さんの 「僕は、そして僕たちはどう生きるか」 900円+税 → 
という本が文庫化された時に、企画された講演(2015年4月)のメモが、もとになっています。

今、世界は、新型コロナウィルスによって、今まで体験したことのない危機に見舞われています。
命の危険だけではなく、非常時という同調圧力によって、社会生活の中で緊張や抑圧を強いられ、窮屈な生きにくい時代になってきました。
そんな中で、強い意見に流されず、あなたがいちばん耳をかたむけるべき存在は…と、
若い人たちに向けて語りかけた梨木香歩さんからのメッセージです。


人間が群れの中で生きるのは、本能であり、必然です。仲間に入れてほしいと思うのは当たり前です。
でも、そのために自己嫌悪に陥ることもあります。生きるって、そんな葛藤の連続です。
そんな自己嫌悪をわかっているのは自分自身です。
誰よりもあなたの事情を理解し、あなたの人生を知っていて、しかも、いつだって、あなたの味方、あなたの側にいる。
あなたのリーダーはあなた自身、あなたの目です。
自分の中の埋もれているリーダーを掘り起こし、あなたとあなた自身のリーダーを一つの群れにする、チーム自分。 こんな最強の群れはない。
これは 個人 ということです。そのためには、自分を客観視する癖をつけ、批判する力をつけることです。
 (一部要約)


梨木香歩さんの 「僕は、そして僕たちはどう生きるか」 は、1937年に書かれた 吉野源三郎作 「君たちはどう生きるか」を意識して 書かれたものです。
主人公の名前も同じコペルくんです。
7年前、秘密保護法が国会で強行採決され、日本が再び、戦争への道をたどるのではないかという危うい空気の中で、
戦前に書かれた  「君たちはどう生きるか」 が、注目されはじめました。

私がこの本を読んだのは、大人になってからです。
実は、読み終えてから、ずーと、何か釈然としないものをかかえています。

"君たち"とは誰のことなのだろうか…。
日本が戦争へ向かっていた時代、それを止めることができない大人として、すべての若者 たちに、どうあるべきか、どう生きるべきかを説いているのだろうか…。
それとも、経済的にも恵まれ、やがて地位を得て国のリーダーと なっていくだろう若者への言葉なのだろうか…。
この本の言葉は、そのまま"今"を生きるすべての子どもたち、若い人たちの心に響き、啓蒙となるのだろうか…。
浅い読み方しかできない力不足を自覚しながらも、心にひっかかってきたことでした。

そんな中で出会った本です。
正直、私は共感するところが多かったのです。本を読む時の視点についても考えさせられました。

著者は村瀬学さん。 「いじめの解決!教室に広場を」1700円+税  「児童文学はどこまで闇を描けるかー上野瞭の場所から」(絶版)など。

「『君たちは どう生きるか』 に異論あり!「人間分子観」について議論しましょう」      村瀬 学     1300円+税 

阪神大震災の時、空から見る神戸の町をテレビのニュースで見て、被災した人々が地理的にも近しいだけに、言いよう のない違和感を覚えたことが記憶にあります。
コペル君がデパートの屋上からながめた人々が、まるで科学でいう分子 のようなものだというものの見方をどう捉えるか、
発想の転換を称賛するか、人々を上から見る目線だと感じるか…。
ふっとその時の違和感を思い出しました。
村瀬学さんの視点は、決して屋上からではないことを嬉しく共感します。
クラスにいるいつもアブラゲのにおいをさせている貧しい豆腐屋の浦川君の描写。彼へのいじめに対する正義のあり様。
負けを恐れず戦い続けたナポレオンへの賛美…。

どの立場からどう読むか、どう受け止めるかは、それぞれだとは思うのですが…。



ヨシタケシンスケさんのイラストエッセイ第2弾       「欲が出ました」      1000円+税           既刊  「思わず考えちゃう」   1000円+税 


大人も子どもも、欲の出やすい すべての人に。 「しいていうなら、くらしの知恵に」
絵本作家 ヨシタケシンスケの「深かったり浅かったりする」スケッチ解説エッセイ。
欲が出るから失敗するけど、欲がでるから人間っておもしろい!? (帯のことばより)



                                          

 2020.8.



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新刊より


        


ブロンズ新社

「ねぐせのしくみ」   ヨシタケシンスケ  
そうかあ、ねぐせができるのは、こういうわけだったんだ。
ねぞうがわるいのも、よだれをたらすのも…。
どうりでねぼけたり、ゆめをみる。
またまた、ヨシタケシンスケ妄想世界。笑います。
980円+税 


ほるぷ出版


「ちびクワくん」   やましたこうへい      
作者は「ファーブル先生の昆虫教室」のイラストも描かれています。
穴掘りが得意で、家族でくらすというめずらしいチビクワガタ。
死んだふりも得意です。
いろんな昆虫もでてきて、とても楽しいお話です。
最後にもっと楽しいことが!
作者の解説ありです。
1350円+税


あすなろ書房

「のりかえの旅」     長田真作        
長田真作さんの描く世界は、独特の空気感があるように思います。
そして、なんか愉快なのです。
のりかえの旅です。
目的地はどこなのでしょうか…。
表紙の停留所から、まずバスにのります。
つぎは、トラックにのりかえます。 モノレールに、ふねに、せんすいかん、しんかんせんに、ききゅう…。
旅の終わり、まっていてくれる人がいるんですね。
1400円+税


偕成社

「あめかっぱ」    むらかみ さおり   
絵本デビュー作。
ストーリーもしっとりとした雨の風景の絵もとても力を感じます。
雨の日のお留守番、この町では子どもたちはかっぱと過ごします。
訪ねてきたかっぱとお弁当をもってピクニックへでかけます。
雨の森での、雨なればこそ味わえる、ぜいたくですてきな時間。
スケールの大きい絵が楽しい。
1300円+税  


ブロンズ新社

「ぼくと いっしょに」シャルロット・デマトーン 作 野坂悦子 訳   
オランダのロングセラー絵本です。
ぼくのすんでいるまち。どこがぼくのうちかわかる?
世界でいちばん、おおきな庭のあるうちだよ。
かあさんにおつかいをたのまれたぼくの大冒険の旅が始まります。
ドラゴンあり、大男あり、ひとくいザメあり…。
俯瞰図も含めて細部まで描きこまれた絵とストーリーが存分に楽しめます。
教育の自由が認められ、子どもが世界一幸せだといわれる国です。
1400円+税


BL出版
「チャーリー、こっちだよ」         キャレン・レヴィス さく チャールズ・サントソ え  いわじょう よしひと やく   
心や体にきずをおった動物たちが安心して暮らせる だれでもぼくじょう 
「だれだって、たっぷりのごはんと愛情をうけとる資格があるのよ」という世話係のアントニアがいる。
ヤギのジャックは、心の傷から誰とも仲良くできない。
新しくやってきた馬のチャーリーは目がよく見えなかった。
いつしかジャックとチャーリーに交流が生まれ、友情がめばえるのですが…。
アメリカにある動物を保護するワイルドハート牧場が舞台。
1700円+税  


金の星社

「細菌ホテル」 猪川なと 訳 岡田晴恵 日本語監修  キム・ソンファ  クォン・スジン 文   キム・リョンオン 絵      
細菌はウィルスをのぞけば生きものの中でいちばん小さい。
地球上のすべての動物、植物の重さより、細菌をすべて合わせたほうが数も多く、重いなんて、びっくりです。
この細菌ホテルとは人間の体。
泊っている細菌たちにとっては居心地がよく、実は人間にも、とても役にたっている。
ホテルが無菌になったら大変。
でも外から悪い病原菌もやってくる。
その時は用心棒の免疫細胞が大活躍。
ゆかいな絵で、細菌のこと、抗生物質のことなど楽しく解説。最後にウィルスの説明も。
1400円+税 


福音館書店

「南極のさかな大図鑑」 岩見哲夫 文 廣野研一 絵  
南極海。マイナス2度近くにもなるという世界で一番冷たい海です。
そんな海に、こんなにたくさんの魚がいるなんて驚きです。
91種類の魚が本の中でも紹介されています。
環境に合わせて進化してきた南極の魚たち。
主に海底にすむ魚たちには浮袋がありません。
血を赤くするヘモグロビンがなく血が無色透明です。
その中でも海底から離れてくらせるよう進化していった魚もいます。
またもっと深海にすむ魚がいることもわかってきました。
まだまだ謎につつまれている南極の魚。千年後?万年後は?
1300円+税


のら書店

「あるひ あるとき」あまんきみこ 文 ささめやゆき 絵 
満州で暮らした幸せな幼い日々は、中国の人たちの犠牲の上であったことを、知らなかったと許されることではないと
加害者としての戦争を書き続けている あまんきみこさん。
中国の大連で、いつも一緒にいたこけしのハッコちゃんとの楽しい日々。
敗戦後、日本にひきあげる時に連れて帰ることはできなかった…。
あの時代を生きた幼い子どもたちの喜びと哀しみを届けることで、未来への思いを託した絵本です。
1500円+税 


岩波書店

「サンドイッチクラブ」    長江優子       
進学塾で知り合った環境も性格も違う小学6年生の二人。
桃沢珠子と羽村ヒカルは、 たまごとハムということからサンドイッチクラブを結成。
それは無心に砂の彫刻作りに挑戦し、同じく砂像にすべてをかける少年葉真と競い合うことだった。
ぼんやりと私立中学校の受験を考える珠子とちがって、
将来はアメリカ大統領になって世界を変える、と授業料免除を申し出て勉強に励むヒカル。
生きづらい時代を、なんとか前に進もうと模索する少女たちを描く。
1500円+税  


講談社

「晴れ、時々 くらげを呼ぶ」    鯨井あめ            1600円+税
小説現代長編新人賞受賞作。作者は現役の大学生です。
高校で図書委員をやっている僕は、作家だった父の死から、本に距離をおくようになっている。
入学したばかりの同じ図書委員の小崎優子は、本の好きな不思議な女の子で、雨乞いのように、屋上でクラゲ乞いをしている。
図書室で集う高校生たちの会話や描写が、とても素直に心に届きます。
様々な問題と向き合わざるをえない高校生たちにとって、奇跡がおこることを信じ続けることが、生き延びるすべかもしれない。
降り続けるクラゲが、美しく心に映像化されます。
1300円+税 


あすなろ書房

「兄の名は、ジェシカ」 ジョン・ボイン 原田 勝 訳      1600円+税
衝撃的だった「縞模様のパジャマの少年」の作者の最新作。
4歳年上の兄、ジェイソンは、ぼくのヒーロー。サッカー部のキャプテンで自慢の兄だ。
でも最近、様子がおかしい。
そしてある日、ジェイソンは言った。「ぼくは兄さんじゃない。ほんとうは姉さんだ。」
ジェイソンの身体不一致のカミングアウトは、政治家の母、その秘書の父をはじめとして、周りを混乱に招いていく。
愛する人の悩みや葛藤、孤立への恐れに、周りはどう向き合うのか、
不寛容な世の中に、どの立場をとるのか、
問われているのは、私たち自身でもあります。
1500円+税 




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