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★ジオジオからのメッセージ
           



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359 号

それにしても、激動の9月でした。
ニュース映像に「 こどもは まねを しないでください 」というテロップを流したいような
暴力的で理不尽な参議院本会議での安保 関連法案の採決。
子ども、大人に関わらず、私たちは、しっかりとこの法案が成立した経過を記憶にとどめておかなければと思います。
これが今の日本の政治の姿であり、こうやって戦争に向かって日本の方向が無理やりねじ曲げられたこと、忘れません。
日本の方向を、再び私たちの手で、平和に向かうように変えるためにもです。

一人一人の命や未来に目を向けられることなく、巨額の税金が戦争や武器に使われていきます。
強国の論理や利益だけで私たちの国が、そして世界の国々が存在し、動いているわけではありません。
愛し、育み、笑い、語り、そういうかけがえのない自由な日常の暮らしのあることが政治であり、
お互いのそういう日常を思いやることが平和だと思います。基本は単純なことではないかと...。

若い人たち、子どもたち、お母さんたち、一人一人の意志でこれからの日本を危惧し、動き始めたこと、
逡巡しながらもこの方向は危ういと思う人たちがその背後に多くいること、希望です。
そういう人たちの側につき、寄り添い、力になりたいと心した9月でした。


新米の季節です。   「 稲と日本人 」     甲斐信枝 さく     佐藤洋一郎 監修    2000円+税

私たち日本人の食生活に、なくてはならないお米。
田植えや稲刈りなど季節感のある田んぼの風景は、日本人の心そのものと言っても過言ではありません。
10月、我が家にも、福崎町の広岡農場から新米が届けられます。
海苔、梅干、明太子、漬けもの、そこに炊きたての新米のごはん。日本人に生まれてよかった~とつくづく…。

今は、パンや麺類などお米以外の食材も豊富で、簡単に手に入ります。お米の消費量は半世紀で半分になったと言われています。
農業をする人が減り、長年稲作りをしてきた田んぼが荒地になっていくことへの底しれぬ不安があります。
今、日本人として、私たちの食生活を見直すことも必要に思います。

昔の人々が苦労して引き継いできた稲への思いを知る感動の絵本です。
作者 甲斐信枝さんの10年を超える取材の力です。大人の方にも、ぜひおすすめです。

二千数百年前、水田での稲作りが日本に伝わり、焼畑農業だった日本人の暮らしが大きく変わりました。
けれども稲作りには向かない細長く山の多い国土、大地震や台風など自然の引き起こす災害、
日本人の稲作りは苦難の歴史でした。
異常気象や火山の爆発、害虫の発生などで多くの餓死者を出す大飢饉が何度も起こりました。
それでも、水トンネルやため池を作り、強い品種に改良を重ね、収穫をふやしてきました。
稲と日本人は生死を共に闘ってきた同志なのです。

稲を守り、育てるお百姓さんの思いや心を私たちも共有し、子どもたちにも伝えていきたいと思います。
今は科学や機械の力も加わりました。
そして、将来、世界が食糧危機に襲われた時の新種の研究もされているとのこと。
私たちの大切な“稲”の知識絵本です。


「 岸辺のヤーピ 」     梨木香歩   小沢さかえ 画         1600円+税 

子どもの本に新しい ファンタジーワールド が誕生しました。
梨木香歩さんが描く 小さな三日月湖 マッド ガイドウォーター 。
そこに暮らす愛らしい生きもの “ヤーピ” の世界を “大きい人” (人間)との交流で描いていき ます。
小沢さかえさんが描くヤーピの姿がすんなりと心に入ります。
静かな岸辺には、柔らかく、しなやかな 命たちが満ちています。
この世界に子どもたちの心がすべりこんでいくこと、わくわくします。
2巻目がとても楽しみです。


サニークリフ・フリースクールで教師をしている私が、
休日、マッドガイドウォーターの岸辺にボートを浮かべ本を読んでいた時に出会ったのは、
一見したところ直立歩行をするハリネズミのような、
でもハリではなくふわふわした毛に包まれた生きもの、クーイ族の男の子ヤーピでした。
そっと置いてきたミルクキャンデーから交流が始まります。
私はヤーピたちからウタドリさんと呼ばれ、彼等の暮らしや仲間、言葉や歴史などたくさんの話を聞かせてもらうことに…。

パパヤーピ、ママヤーピ、いとこのセジロ、べック族のトリカ。
ヤーピの話は興味深く、冒険に満ち、マッドガイドウォーターで息づくもう一つの世界を教えてくれます。


月刊 たくさんのふしぎ は 創刊 30 周年を迎えました。   実は、「たくさんのふしぎ」 はジオジオと同い年です。 

開店した時にでた創刊号は谷川俊太郎さんの文章による
←「いっぽんの鉛筆のむこうに」でした。
身近な鉛筆の向こうに、はるか遠くの国々、たくさんの人々の技術が見えてきます。

最新号は「神々の楽園」→
南アフリカの岩石砂漠に、ほんの数日から数週間、一面のお花畑が出現します。
まるで神様の仕業です。

世の中にある “たくさんのふしぎ”を届けてくれるこの月刊誌は、見ごたえ、読みごたえがあり、大人の人も十分に楽しませてくれます。
ほぼ50冊がハードカバー化されていますが、この度、30周年ということで新たに5冊が加わりました。
世界の“ふしぎ”を探求したい子どもたちに、ぜひおすすめの月刊誌です。


 2015.10




ブックランド紙上で紹介した本をご希望の方は、配本に追加する、あるいは配本に入れる、 という形でご注文くだされば、翌月、翌々月にはお送りできます。
不明の点は、TEL、FAX、Eメールでお問い合わせください。またブッククラブ以外の方のご注文もお受けします。注文


今月の新刊より



絵本館


「ママ なんサイ?」 越智あやこ 文 丸山誠司 絵     

「ねー ママ なんサイ?」妙に答えづらい子どもからの質問。
ママは答えます。「ママはてんサイ」
しつこく 「ねー ママ なんサイ?」
ママの答えは「こげくサイ」 「はくしゅ かっサイ」
ママ、見事なかわしかたです。けむにまく この手があったか… 。
ユーモラスな絵に笑います。お二人はご夫婦とのこと。お家庭の様子がしのばれます。
1300円+税


偕成社

「どうろこうじのくるま」    こわせもりやす  
まえとうしろ どんなくるま?シリーズ第1弾は 道路工事の車。
働く車は、子どもたちのあこがれです。
車の前と後をじっくり見る事ってありませんね。
働く様子をリアルに細かいところまで描き込んでいる絵に、車好きの子どもは大喜びだと思います。
クローラー式 ゆあつショベルをはじめとして7台の車が大活躍。
道路工事が完成します。シリーズ、楽しみです。
1200円+税


こぐま社

「ゴリラのおとうちゃん」   三浦太郎     
「ええてんきやなあ」と昼寝しているゴリラのおとうちゃん。
「なあ おとうちゃん あそんで~や」 「しゃ~ないな」と “おとうちゃんすべりだい” “おとうちゃんひこうき”
“おとうちゃんつうてんかく” 「スカイツリーちゃうの」 というつっこみも。
なんだか体がむずむずしてきませんか…。
こんな遊びができるのは、ほんとに短い間です。
おとうちゃん、楽しんでください。
「なあ もういっかいしてー」「もうええやろ」
この気持ちも わかりますねぇ。ほのぼの感あふれる絵です。
1200円+税


PHP研究所

「はずかしがりやのバナナくん」   岡田よしたか さく
「ちくわのわーさん」の岡田よしたかさんワールドです。
はずかしがりやのバナナくん。
学校の歌の発表会の練習で恥ずかしくて、みんなの前では歌えなくなって帰ってきてしまいました。
近所のくしカツのおじさんが「もっとじしんもたな」とはげましてくれます。
「まわりはみんな、石ころやと思たらええねん。」
発表会の日、勇気を出してちょっぴり顔をだしたバナナくん。
だんだんと調子が出てきて、歌いながら外へ…。
ここでは人間も食材(!)も一緒なのがおもしろい。
そして実はくしカツさんだってはずかしがりや。
1300円+税


童心社

こしょこしょきなちゃん 「ママがおねつのはなし」  「10人のきなちゃん」  こがようこ   
続いて2冊でました。
おなかがこしょこしょすると、いーことを思いつくきなちゃん。
でもきなちゃんのいーことは、びっくりすることばかりです。
ママがお熱?いいこでいるはずのきなちゃんですが、ママが気になります。
そこで思いついたのは?
10人のきなちゃん、ママは本物のきなちゃんがわかるでしょうか?
きなちゃんのかわいさに、こちらも楽しくふりまわされてしまいます。
誰かさんみたい!
各1200円+税


講談社

「でんごんでーす」  マック・バーネット 文  ジェン・カラーチー 絵  林木林 訳     
電線に並んだ鳥たち。
ハトのお母さんがオウムに伝言を頼みます。
ねえ、ピーターにつたえてくれないかしら?「そろそろばんごはんだからかえっておいで」って。
オウムから次々と伝言は伝わるのですが、
個性豊かな鳥たちが伝えるのは、あれ?お母さん、そんなこと言ってたっけ、ということばかり。
無事にピーターはばんごはんに間にあって帰れるでしょうか?
楽しい繰り返しの伝言ゲームです。
電線の下の家々の様子も気になりますよ。
1500円+税


講談社

「おばあさんのしんぶん」   松本春野 文・絵    岩國哲人 原案   
戦争中、大阪から出雲に疎開して、一年後に戦争が終わりました。
まだ新聞をとる家も少なかった頃、てつおは新聞配達を始めます。
配達したみはらさんの家で、夕方、読み終わった新聞を読ませてもらう毎日でした。
月日は流れ、おじいさんが亡くなりましたが、
おばあさんは、新聞を読みにおいでと言ってくれました。
てつおが読む時、いつも新聞はきれいなままでした。
やがておばあさんも亡くなり、てつおが初めて知ったこととは…。
後に政治家となった岩國哲人氏の新聞配達のエッセイより実話をもとにした絵本です。 
1300円+税


ポプラ社

「ガザ 戦争しか知らないこどもたち」     清田明宏     
著者は国連パレスティナ難民救済事業機関(UNRWA)の保健局長。
ガザは地中海に面した小さな国。
周囲を8Mの高さの壁に囲まれ、自由な出入りができない収容所のような国。それがガザだ。
多くはパレスティナの難民で、子どもたちは爆撃におびえながら日常を送っている。
昨年の夏のイスラエルとガザとの戦争では、市民1600人が死亡し500人は子どもだった。
避難所となっていた学校まで砲撃を受けた。
そういう絶望的な情況の中でガザの再建のために働く人々がいる。
今年の3月、ガザの子どもたちと釜石の子どもたちがお互いの復興を願って凧上げをした。
まず、知ることから、同じ時代、戦争しか知らない子どもたちがいることを。
1500円+税


講談社

「天(あめ)と地(つち)の方程式」 ① ②    富安陽子  五十嵐大介 画    
富安陽子さんの新刊です。1巻 2巻は続けて出ましたが、3巻目は来年3月予定。
古事記を下敷きにした学園異能ファンタジーです。
田代有礼の夢に現れた猿が告げた言葉。
その暗示通り、急に引っ越しが決まり小中一貫の栗栖の丘学園に転校する。
中学2年生にあたる8年生は3人。その3人は同じ夢を見ていた。
3人は天ッ神より特殊な能力を授けられたカンナギ。
有礼は記憶力。通称Qは数字、ヒカルは音楽。さらに怪力ハルコが加わる。
黄泉ッ神の侵入に備えるために選ばれた7柱の4人が揃った。
学園に集められた残りのカンナギは誰か。
異空間カクレドの存在。 天ッ神のもくろみは…。
物語は大きく動き始めます。
各1400円+税


小学館

「月にハミング」   マイケル・モーパーゴ 作   杉田七重 訳     
第一次世界大戦時、ニューヨークからリバプールに向かった豪華客船ルシタニア号が
シリー島沖でドイツの潜水艦Uボートに撃沈され、多くの民間人が犠牲になりました。
その史実を元に描かれた物語です。
シリー島沖の無人島で発見された一人の少女。
衰弱し、傷つき、言葉を発せず、記憶もない少女を発見した少年アルフィーの家族が引き取る。
少女はルーシーと呼ばれ、アルフィーや両親の愛で少しずつ快復していくが、
ルーシーはドイツ人ではないかといううわさが流れ、家族は村人から攻撃されるようになる。
ルーシーは何者なのか。
同時にニューヨークから母と共に父を訪ねてイギリスに向かう少女メリーの物語も描かれる。
少しずつ解き明かされていく謎。
一本の映画を見終わった後のような充足感があります。
1600円+税




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