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★ジオジオからのメッセージ
           



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356 号

7月になりました。
日本の国は、今、揺れに揺れています。
耳慣れない集団的自衛権の行使が閣議決定して1年が経ちました。

国会では、そのための安保法制の関連法案の審議が行われています。
それがどういうことなのか、なぜ今なのか、私たちの理解が届かないままに、 戦争を永久に放棄したと信じてきた私たちの国が、武器を携えて他国へ赴き、戦争に加担する国へと方向を変えようとしています。

国のために、国を守るために、平和のためにと、いかなる大義をならべられても、戦争は惨劇、悲劇しか生まない。
それを十分に思い知った日本ならこその憲法九条ではなかったのでしょうか?今さらの解釈の変更は、結論ありきの暴走です。
少なくとも、戦後70年、私たちは戦争で殺し、殺されることがない平和な時代を生きてきました。
再び戦争が出来る日本を、子どもたちの時代に引き継ぐことはできません。

“知らなかった”で、国の危うい流れを見過ごすことのないよう、
集団的自衛権は違憲だといううねりの中に立ち、すべての安保法制法案が廃案になることを望みます。
完全に、永久に戦争を放棄し、そしていかなる国の戦力も基地もない、武器も持たない、敵をつくらない国になることが、
これからの日本の方向となりますように。
自省をこめて心したいと思っています。                               




「わたしが外人だったころ」   鶴見俊輔 文    佐々木マキ 絵       1300円+税 

哲学者 鶴見俊輔さんは1938年15歳で単身渡米。
やがてハーバード大学で学び、日本とアメリカの戦争がはじまると交換船で帰国。
20歳の時でした。徴兵検査を受け、海軍に志願し、ジャワにいきますが、病気になり日本に帰されます。
そして敗戦。


なぜ自分が生き残ったのか、なぜ自分がここにいるのかというたよりない気持ちは、
今も心の中にあり、わたしのくらしをささえる力になっていると書かれています。
“アメリカにいる時、わたしは外人であり、日本にもどると日本人を外人と感じて過ごしました。
自分の底にむかっておりていくと、今もわたしは外人です。”

地球上の人口が72億人、日本の人口は1億2千万人。
地球上で日本人は多くの外人にとりかこまれてくらしているのです。


国に、集団にどこか同化しきれないという感覚は大切なことだと思います。
やわらかく軽い感覚での淡々とした文章は、国、戦争、個人としてのアイデンティティー、大切なことを語りかけています。




「世界の果てのこどもたち」    中脇初枝 作            1600円+税  

昭和18年、高知県の貧しい村から国策として満州の最果ての地に開拓民としてやってきた珠子たち一家。
朝鮮の農村で日本人に土地を奪われ、満州で働く父に迎えられやってきた美子(ミジャ)たち。
美子は富田美子(よしこ)と改名され日本語の教育を受けていた。美子と珠子は、満州で同じ国民学校に学ぶ。
横浜で裕福に育つ茉莉は赤いエナメルの靴をはき、ワンピースを着て絵本を持ち、運輸関係の仕事をしている父とともに満州を訪ねる。
そこで、3人は出会い、忘れられない時間を共有する。
やがて日本は敗戦し、3人の運命も翻弄されることになる。

敗戦のうわさを聞き、いちはやく日本に渡り、在日朝鮮人として差別の中を生き抜く美子たち一家。
横浜で空襲に合い戦災孤児となり、施設で暮らすことになる茉莉。
満州からの過酷な引き揚げの途中、さらわれて中国人夫婦に買われ、美珠という名で中国で生きることを余儀なくされる珠子。
日中間の国交が正常化した後、美珠は中国残留孤児として肉親を捜すために日本を訪れる。
3人のそれぞれの戦争、そして戦後。表面的にしか捉えられなかった歴史が、3人の個々の人生を描くことで、具体的な形をもって心にせまります。

「きみはいい子」や「わたしをみつけて」などの、虐待や孤児などをテーマにした作品の中で、
生きることへの一筋の希望、喜びを描く作家、中脇初枝さん。
まだまだ若い作家の方なのに、戦争、戦後を生き抜く3人の女性の物語は、臨場感にあふれ、その表現力に圧倒されながら一気に読ませてくれる力作です。

あの戦争はいったい何だったのか…。何を残したのか…。
日本人、朝鮮人、中国人、それぞれに戦争を生き、戦後を生き抜き、国を超えたところで人間として出会い、友情で結ばれる。
命をまっとうできずに戦争で殺されていった人たちの無念さを引き継ぎ、
二度と戦争の世を許してはいけにという思いと共に、生き抜いてこられた方たちに頭が下がります。

何があったのか、私たちは知らなくてはならない。戦争を知る人たちが老いてきています。




 ■ 長谷川義文さんのうまいもんのうたのシリーズ 大阪 東北 に続いて 名古屋バージョンがでました! ■ 

「名古屋うみゃあもんのうた」   1300円+税

独特の名古屋弁です。今はもう使う人も少なくなっているでしょうか? 「どえりゃあ うみゃあでかんわ」
 手羽先 えびフリャー ういろう あんかけスパゲティ きしめん ひつまぶし 小倉トースト 
みそかつ みそおでん みそにこみ… 落ちは 「みそばっかりだがや」
 濃い濃い八丁みそ、おいしいんですよね。いえ、「どえりゃあうみゃー」ですね。


 2015.7




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今月の新刊より



福音館書店


「いしゃがよい」 さくら せかい さく   

山にきのこがりにいったエンさん、泣いてるパンダを見つけたよ。
ファンファンと名づけてそだてることにしたよ。
からだの弱いファンファンをエンさんは自転車に乗せて、山を越えて医者がよい。
ふたりはとてもなかよく暮らし、ながい月日がながれたよ。
エンさんはすっかりおじいさん。
こんどはファンファンがエンさんを自転車に乗せて医者がよい。
絵もことばも温かい。
800円+税


岩崎書店

「くんくんくんこれはどなたのわすれもの」  はやしますみ  
ここは”わすれものあずかりしょ”たくさん届いています。
くんくんくんとわすれものの匂いをかぐと、まきばのにおいがしています。
「それぼくのです。」と取りに来たのはひつじさん。
暑かったからもこもこ毛皮をぬいだまま忘れたようです。
においで、持ち主をあてっこしてみてね。
のびやかな絵も楽しい。最後はわーとびっくりの忘れものです。
においをかぐおじさんは犬(?)かな?
1300円+税


ブロンズ新社

「たべもんどう」  鈴木のりたけ   
鈴木のりたけさんの絵にはほんとに笑わせられます。
きゅうりやコロッケ、とんかつ、しめじ…。
食べものたちの表情豊かなこと!
食べものたちから問題が出ます。
回文やだじゃれ、はやくちことばなどことば遊びがいっぱい。
絵さがしも楽しめますよ。最後に答えがのっているけどがんばってくださ~い。   
980円+税


理論社

「まじょが かぜをひいたらね」 高畠じゅん子 さく 高畠 純 え 
作・絵が同じ姓ですが、偶然で親娘ではありません。よく聞かれますので…。
でもお二人の作品は大好きです。
魔女が風邪をひいたらどうやって治すのでしょうか?
まず病院に?いきません。いけません。(理由は絵本で)
で、おうちで治すのですが、ママのりょうり、くすり、あた たかくしてねる。
なんだ人間といっしょ?
そこは魔女ですから、笑わせてくれます。
1200円+税


ハッピーオウル社

「にちようびの森」    はた こうしろうさく 
大人にとっては心が痛い。孫たちを見ていても切実な問題です。
でも子どもたちはどこでも元気いっぱい。遊びの天才です。
川で、林で、広場で…。自然の中で生きものをみつけ、友だちと思いきり遊びます。
でもいつのまにか工事がはじまったり、家が建ったり、その世界がせばめられていきます。
大声を出せない公園。ゲームもおもしろいけど…。
子どもの時代から奪ってはいけない大切な空間と時間。大人への課題です。
1300円+税


えほんの杜

「ま、いっか!」 サトシン 作  ドーリー 絵   
人間、まじめとテキトーを織り交ぜながら日々暮らしているのだと 思いますが、このテキトーさんもそのようです。
めざまし時計の時間のセットをまちがえて、もはや絶対に遅刻。
ま、いっか!それでも会社へ。
バスを降りそこねて ま、いっか!
カバンをおきわすれて、ま、いっか!
こんな調子で、大丈夫?と心配になってきますが、楽しそう。
最後の落ちに、意外とまじめ。(笑)
1400円+税


くもん出版


「みんなから みえない ブライアン」      トルーディ・ラドウィッグ 作 パトリス・バートン 絵 さくまゆみこ 訳   

クラスには、めだたなく存在感のうすい子っています。ブライアンがそうです。
先生も大声のネイサンやすぐにわめくソフィには目がいくけれど、ブライアンが見えていない。
休み時間もみんなの中には入れません。
転校生ジャスティンに、ブライアンは得意の絵を描き、手紙を書きます。
絵をほめてくれたジャスティン。先生にもクラスのみんなにもようやくブライアンが見えてきます。
“きっかけ”大切ですね。
1400円+税



福音館書店

「よるになると」    松岡達英 さく    
公園で、くさはらで、川で、川原の砂地で、池で、森の中で、生きものたちは、それぞれに食べものを求めて活動する時間がある。
昼間にえさを求めて動きまわる生きもの、
昼間はじーとしていて夜を待っているもの。
同じ場所の昼と夜を描き、昆虫、魚、鳥たちの様子を、
自然科学の絵本を多く手がけている松岡達英さんが描きます。
目にすることの少ない夜の様子はとても興味深い。
900円+税


教育画劇

「まほうのかさ 」 小沢 正 文 はたこうしろう 絵  
体育が苦手ないちろう。みんなが自分をみて笑っているような気がして体育の時間が嫌いです。
体育の前の日はゆううつです。
そんなある夜、いちろうは夢のなかで魔女の女の子に魔法の傘を貸してもらいます。
広げたら雨が降り、たためばやむ魔法の傘。
朝、魔法の傘が傘立てにあり、広げて物置きに入れたままにして学校へ。
雨はやむことなく降り続き、もちろん体育はとりやめ。
校庭には傘をた たもうと必死の魔女の女の子の姿が…。いちろうの気持ちは…。
雨上がりの青空がいい!
1300円+税


理論社

「しばしとどめん 北斎羽衣」  花形みつる 
天才画家 葛飾北斎が江戸時代から現代にタイムスリップ?!
とても粋で、おしゃれでおもしろい物語です。
北斎の事をもっと知りたくなりました。
ある夜、骨董屋を営むボクの家に父親が拾ってきた風変わりな老人。
父は葛飾北斎だといいはる。 徘徊老人か、北斎か。
一筋縄ではいかない気難しい老人と理由あって不登校状態のボクとの暮らしが始まる。
スマホ、コンビニの現代。
北斎こと 鉄蔵の知る江戸もことごとく姿を消している。が、意外と受け入れなじんでいく鉄蔵。
ボクはいつのまにか心を開き、学校に行けなくなったいきさつを話していた。
北斎がタイムスリップしてきたわけとは…。
物語のあちこちに“北斎”がちりばめられていて楽しめます。
1500円+税




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