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★ジオジオからのメッセージ
           



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354 号

なかなか歩みのゆっくりした春でしたが、5月です。新緑の季節になりました。
ジオジオの前を通る小学校、中学校、高校と新しい制服に身を包んだ新一年生を見かけると、こちらまで新しい、嬉しい気持ちに なります。
そろそろ緊張感も解けて、学校の様子がそれなりにわかってきた頃でしょうか…。
がんばれ…と陰ながら…。

私事ですが、孫の二人が、学年が上がり学童保育が無くなりました。
小学5年生になった本が大好きな孫は図書委員になったそう です。
時々電話で話しますが、 「岡田淳さんの本と、富安陽子さんの本は誰にも教えたくない。もったいないから…。」
一人の時間、思う存分本を読んでいるようです。
もう一人の小学4年生になった孫も、下校した後、どうしているのかなと気になり、 訪ねましたが、公園で砂だらけになって遊んでいました。
手には大切そうにトカゲが…。
大人の目が届かない分、二人にとっては、より自由で、より豊かな時間を過ごしているのかもしれません。

季節は初夏へ向かいます。花粉症、どうぞお大事に。



「大人になるって おもしろい?」    清水真砂子        840円+税   

清水真砂子さんとの出会いは、子どもの本にかかわる仕事をしていきたいという江草と私の気持ちをより強いものにしました。
この方がいてくれるなら…と、清水さんの書かれたものは、ジオジオを続けていく上での指針にもなってきました。
新しく岩波ジュニア新書として出たこの本を、ぜひ配本にも加えていきたいと思っています。
ありのままの自分を肯定して生きていくことがとても大切に思えます。
この本に出合えたこと、そしてジオジオを通してこの本をお届けできること、とても幸せに思います。


私たちは知らず知らずのうちに、自分を、また子どもたちをも、窮屈に生きにくくしてしまっている事があることに気づかされます。
たくさんの清水さんからの問いかけがあります。
「かわいい」を疑ってみない?
けんかってそんなにいけないこと?
ひとりでいることの必要。
自信って、持つ必要があるのでしょうか?   ゆたかさとは?
感動するって?


読んでいくうちにいろんなものさしから解放されていきます。すきまがみえてきます。
「大丈夫。生きてごらん。あなた自身を。」と背中に温かい清水さんの手を感じます。
力をくれる本やことば、そして映画も紹介されています。
こういう大人の人もいるよ。たくさんの子どもたちに、もちろん 大人の人にも読んでほしい。
私もたくさんの本に、たくさんの物語に助けられて生きてきました。


嬉 し い 復 刊 !


亡くなられて13年。ジオジオにとって大切な作家である上野瞭さんの、そして大切な作品が復刊されました。
あらためて読みなおしましたが、あらすじはわかっているとはいえ、物語のおもしろさにぐいぐいと引き込まれ、
久々に上野瞭さんの作品の世界に浸る充足感に満たされました。
もっともっとこの方の作品を読みたかった。文章にふれたかった、と心から思います。今の時代、なおのこと。

「目こぼし 歌こぼし」     上野 瞭       2200円+税

塾に学び、剣の道に励むさむらいの子、七十郎が巻き込まれた殺人事件。
御番所に届けたのに、いつのまにか殺された鬼三次というさむらいは消え、事件は葬られる。
やがて鬼三次の死体をみつけた七十郎の父も何者かに切られ、命を失う。
ご支配さまの命で父の仇討の旅にでることになった七十郎は、
御番所に不審を抱きながらも、下まわり善助を供につけられ、御領内の罪人が送られるという三の庄に向かう。
三の庄にいる一つ目で片足のこぼしさまの存在。
恐ろしい為政者のもくろみが少しずつ暴かれていく。

ちょんまげの時代を描いた40年前の作品ですが、古さは感じず、
上野さんが言われていたありえない物語をありえるかもしれない物語として描き出されています。
今の時代にも通じる国の利益や秩序、国の平和の前に、個人の在り方を考えさせられます。



「庭をつくろう」    ゲルダ・ミューラー 作   ふしみ みさお 訳         1500円+税


長く絶版だった「ぼくの庭ができたよ」が改訂されて復刊しました。
作者のミューラーさんが文章を見直し、絵もより原画に近く製版されたようで、雰囲気が明るくなったように思います。
引っ越してきた家の大きな庭は、荒れ放題。
そこで家族でそれぞれに分担を決めて庭づくりをすることになりました。
野菜や花、そして古いリンゴの木の再生。
季節のめぐり。やってくる鳥たち。まわりの人々との関わり。そして花が咲き、野菜を収穫。 季節ごとの子どもたちの遊び。
ミューラーさんの美しい絵から、庭を楽しむ暮らしの喜びが伝わってきます。


 2015.5




ブックランド紙上で紹介した本をご希望の方は、配本に追加する、あるいは配本に入れる、 という形でご注文くだされば、翌月、翌々月にはお送りできます。
不明の点は、TEL、FAX、Eメールでお問い合わせください。またブッククラブ以外の方のご注文もお受けします。注文


今月の新刊より



クレヨンハウス

「はいくないきもの」 皆川 明 絵 谷川俊太郎 文  
服飾デザイナーの手による自由な発想の12の生きものたち。
谷川俊太郎さんのふんふんと楽しい散歩のような5・7・5のリズムをもったことばが、しりとりしながら続きます。
子どもたちのげらげら笑う声が聞こえるようです。まいりました。  
1200円+税


福音館書店

「ごはん」     平野恵理子  
ごはん、大好きです。日本人に生まれてよかった~と思わせてくれ ます。
こんなにあるんですね。
たきこみごはん、おむすび、おちゃづけ、おすし、 かけごはん、どんぶり、おかゆ、ピラフなどの 外国ごはんも。
シンプル、でも嬉しい、おいしい絵本です。
1400円+税


偕成社

「よるのかえりみち」  みやにし あきこ   
たくさん遊んで、眠くなってお母さんにだっこしてもらって帰る夜の道。
昼間とはちがう静けさ。もれてくる灯り。 おいしそうな匂い。楽しそうな語らい。
一日が 終わって眠りにつくまでの時間。でも最終列車に 乗る人もいる。
たくさんの物語が浮かんできます。
1300円+税


福音館書店

「おばあさんのひっこし」      エドナ・ベッカー 作   神沢利子・山田ルイ 訳 白根美代子 絵   
2ひきのねことろばとめうしと一緒にすんでいるおばあさん。
きれいな赤い色をしていた家はすっかりふるぼけて しまった。
ひっこしを決めたおばあさんのゆかいなお話。
のどかな絵がすてきです。
時計を忘れたおばあさんが最後にひっこした家は…。
800円+税


光村教育図書

「イランのおはなし 白い池 黒い池」もたいなつう 訳 リタ・ジャハーン=フォルーズ 再話    ヴァリ・ミンツィ 絵   
絵に、色使いにとても惹かれました。
イランの街並み、青い空、意志のある少女シラーズの顔、見飽きることがありません。
継母につらくあたられているシラーズが母の形見の毛糸玉が縁で出会った不思議なおばあさん。
たのみ事をかなえてくれたら毛糸玉を返してくれるという。
シラーズがとった行動とは…。
作者の母親が繰り返し語ってくれたというお話です。
1500円+税


ブロンズ新社

「リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険」 トーベン・クルーマン 訳  金原瑞人 訳  
自由の国アメリカをめざしてハンブルグから飛行機で大西洋を横断した賢い、勇敢なネズミの冒険物語。
バネ式のネズミ取りの出現で町からネズミが消えてしまった。
本が好きで図書館に取り残されたしまった小ネズミは、コウモリにヒントを得て飛行機作りにチャレンジ。
失敗に失敗を繰り返し、ついに…。
設計図、部品、制作の過程など、見ごたえのある美しい絵本です。
2200円+税


偕成社


「アイちゃんのいる教室 3年1組」  高倉正樹 文・写真  

1年1組のあのアイちゃんが3年生になりました。
担任の先生は佐々木先生です。
助け合うことはすてきだけど、アイちゃんだからやさしくするのはちがうと思う。
先生は問いかけます。
仲間って何?仲間はみんな仲良しでいなくちゃいけないの?
自分たちの手で秋の学芸会の劇作りをしながら、みんなは考えます。
1200円+税



福音館書店

「日本全国ふしぎ案内① 菜の子ちゃんと龍の子」 富安陽子 作  YUJI 画  
菜の子先生の子ども?子ども時代? 
突然、現れた転校生、山田菜の子ちゃん。
奈良県大峰山の八大龍王祭の夜に、トキ子は空に登りそびれるかもしれない一匹の龍の子を助ける手伝いを頼まれます。 はらはらドキドキの救出。
そして菜の子ちゃんはいつのまにか…。
シリーズ化しますね。楽しみです。
1200円+税


ほるぷ出版

「巣のはなし くふういっぱいの、いきものたちのいえ」ダイアナ・アストン 文  シルビア・ロング 絵  千葉茂樹 訳 
シリーズ5冊目は“巣“。
生きものたちのそれぞれの生態に合わせて、工夫された巣を美しい絵で詩的にのびやかに描きます。
とげとげのサボテンの巣。丈夫な紙のような巣。石ころの巣。あわでできた巣など材料も様々。
めだたない巣。よりあつまった巣、変わった巣…。
生きものの命を引き継ぐ大切な子育てのための巣です。
あらためてその知恵に感心します。
1500円+税


文溪堂

「バムとケロのおいしい絵本 絵本のなかのとっておきレシピ集」」    島田ゆか 監修  八木科奈 料理レシピ制作 
人気の「バムケロ」シリーズにはたくさんのおいしそうなお菓子や 料理が登場します。
島田ゆかさん監修のもとに再現したレシピ本です。
よく出てくる やまもりドーナツをはじめとして、ケロちゃんパンケーキ、大きなプリンとあひるクッキー、オムレツ、グラタンなどなど。
ステンシルプレート付き。
1500円+税


あすなろ書房

「ハーレムの闘う本屋 ルイス・ミショーの生涯」 
ヴォーンダ・ミショー・ネルソン 著 R・グレゴリー・クリスティ イラスト 原田 勝 訳 

1939年ニューヨーク、 ハーレムの中心地に黒人が書いた黒人についての本だけを売る書店が誕生した。
ナショナル・メモリアル・アフリカン・ブックストア。
黒人は本を読まないといわれていた時代、黒人たちに本を読むことを勧め、
知識こそ力と説き続けた ルイス・ミショー。
書店は学びの場でもあり、経済的に恵まれない黒人にとっては図書館がわりであった。
本と熱い議論を求めて訪れる人々の中には、マルコムX始めとして詩人、作家、学者、ミュージシャン…モハメド・アリの姿も。
集会の場であり、黒人解放運動の拠点ともなった。
権力や差別に屈せず本を勧めることで闘い続けたが、1975年に閉店。
5冊からはじめたミショーの店の在庫は20万冊を超えていた。
こういう書店があったんだ!と心熱くなる一冊です。
1800円+税




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