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★ジオジオからのメッセージ
           



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347 号


地球は生きているという現実を、思い知らされる御嶽山の突然の噴火のニュースでした。
私たちは火山の国に住んでいる。
山を愛する人たちの突然の不幸に胸が痛みながらも、あらためて自然の力の前には、なす術のない人間の無力さを思います。


1987年5月、BOOKLAND36号で江草が「まだ、まにあうのなら 私の書いたいちばん長い手紙」というブックレットを紹介しています。
チェルノブイリ原発事故から一年目。28年前です。
放射能で汚染された食べ物やミルクで子育てを余儀なくされる二児の母であった甘蔗多恵子さんが、その嘆きを友人たちに手紙を書き、 それが一冊の本になったものです。(300円+税)
19年後に再び、原文に加えて、甘蔗さんの「十九年目の手紙」 浜岡原発裁判の原告代表の馬場利子さんの陳述。
英語版 “Is It Too Late ?” を収録して単行本となって出ています。(1000円+税)
「原子力と人間は共存できません。まだ、まにあうのなら…」と訴えた28年前、日本の原発は37基でした。
それから54基に増え、2011年の福島原発の事故。
今は1基も稼働することなく電力が賄われています。
が、この度、 国は九州電力の川内原発の再稼働を認めました。近くには、桜島や霧島という活火山が存在するというのに。
愚行をくりかえしている時ではありません。
まだ、まにあうのなら…。まにあわせなくてはなりません。子どもたちの命がかかっています。


上橋菜穂子さんのファンタジー!新刊がでました!    

国際アンデルセン賞を受賞された上橋菜穂子さんが、また新しいファンタジーの世界を見せてくれました。
正直、今まで心にあったバルサ(守り人)やエリン(獣の奏者)の世界が、一時遠く感じてしまうほど、
この「鹿の王」の物語のおもしろさに のめり込んでしまいました。

「長く生きられる命と、長くこの世にいられぬ命。いったい何が違うのだろう」 生きるものの“命“への根源的な問いかけ。
征服する国、される国。新しい地に住みつく民。故郷を追われる民。ウィルスの存在と人間の体の不思議。病と医術の進歩。
ファンタジーであると同時に、私たち自身の今の物語であることも実感させられます。
個々の人間を、人間の命を、そして日々の幸せをいとおしく思い、
そしてまた人間の社会の有り様とその歴史を冷静に見つめた所から 織りなされるこの物語には、
これからの私たちの時代の方向を示唆してくれる確かな思想も感じられます。

“鹿の王“とは何か、再び”鹿の王“の意味することとは…。
下巻の最後の方でわかってくるこのくだりには心がゆすぶられました。
こんなすばらしいファンタジーに出合えること、もちろん他の作品もです!
読者としては、ただただ上橋菜穂子さんに感謝です。


「鹿の王 上 生き残った者」「鹿の王 下 還って行く者」    上橋菜穂子   各1600円+税

妻子を失い、生きる意志もなくなったヴァンは、戦士の頭となり故郷のために帝国東乎瑠と戦うが、
奴隷として囚われ、岩塩鉱で 過酷な労働を強いられる身となる。
ある夜、岩塩鉱は不思議な犬の群れに襲われ、かまれた者は謎の病が発症し、次々死んでいく。
ヴァンもかまれるが奇跡的に助かり、母親が命がけで守った幼い少女を見つけ一緒に逃亡する。
若き天才医術師ホッサルは、その岩塩鉱を視察し、
古文書に記録として残る黒狼熱ではないかという疑いを持つ。
逃亡した奴隷を見つけて、その血液から病素を見つけ、治療に役立てる弱毒薬を作ることを考える。

物語はヴァンと少女ユイ、そして医術師ホッサルを軸として、国、民、文化が、それぞれの立場で複雑に絡み合い進んでいく。
かまれたが故に、生き延びたとはいえヴァンとユイに起こる体の変化。
病と命。医術の挑戦。
大国に征服され忠誠を誓いつつも、民が生き残る術を残す為政者。あくまで 征服された恨みを晴らすことに執着する一族。
生と死の間で命をつないでいく自然の営みの不思議。 そして、人間の心の高貴さ。
突然、人々を恐怖におとしいれた黒狼熱の謎を追いながら、私たちは 幾重にも重なり合った世界を味わいます。
読後、生きる事への思いがまたちがって感じられることと 思います。
上橋菜穂子さんならこそのすばらしいファンタジーの世界です。配本にも入れます!


もう一冊。上橋菜穂子さんのエッセイが出ました!

「明日は、いずこの空の下」     上橋菜穂子  1150円+税  (カバーは上橋菜穂子さんの83歳になるお父さんの絵です。)

ローズマリー・サトクリフの描くイギリスの児童文学にあこがれ、17歳で行ったスコットランドでの思い出をはじめとして、
上橋菜穂子さんが出かけた国々の旅のエッセイです。
作家と文化人類学という2足のわらじをはいている上橋菜穂子さんが描く壮大なファ ンタジーの物語とその世界観が、
こういう旅の中からも生まれてきたのだと思います。
オーストラリアの話など、 けっこう大胆、怖いもの知らずで、お茶目な一面もあるのですね。
アボリジンの人々とのくらし、児童文学の話、 思いこみの中でしかみていなかった国々の事情。
「私はきっと、いつも世界の半分をしらないままに生きている。その ことを忘れないために」  結びの言葉です。

インターネットの世界でたくさんの情報は得られるけれど、
それでも知らない国、知らない文化にふれてみたいと、 あこがれている子どもたちにも、ぜひお届けしたいと思います。
世界はまだまだ知らないことで満ちています。



 2014.10




ブックランド紙上で紹介した本をご希望の方は、配本に追加する、あるいは配本に入れる、 という形でご注文くだされば、翌月、翌々月にはお送りできます。
不明の点は、TEL、FAX、Eメールでお問い合わせください。またブッククラブ以外の方のご注文もお受けします。注文


今月の新刊より



白泉社


「くらべっこしましょ!」   石津ちひろ ぶん 松田奈那子 え  

短い、長い。少ない、多い、遅い、速い。低い、高い。小さい、大きい…。
動物たちをくらべっこしましょう。
たんなるくらべっこではなく、もっと長い、 もっと多い、もっと速い、もっと高い…。
開くしかけもあって楽しめます。
最後はくじらさん、おおきーーーーーーーーーーい!
920円+税     


こぐま社

「はなちゃんのぼうし」   丹治 匠 さく   
映画やアニメの仕事をされている作者のはじめての絵本です。
はなちゃんの大好きな空色のぼうし。ぼうしもはなちゃんが大好き。
ある日、突然の風で、ぼうしは空のかなたへ…。
落ちたところは動物園のキリンさんの頭の上。
「はなちゃーん」と再び飛んだぼうしは…。
海へ、山へ、空へ、お月さままで大冒険の旅です。
ダイナミックで躍動的な絵が魅力です。
1200円+税


学習研究社

「わらうほし」   荒井良二 
荒井良二さんワールドです。
わらうほしのわらうやま、朝がきただけでわらうもり。わらうもりには目をさましただけでわらう動物たち。
わらうまち。窓をあけただけでわらう町。わらういえ。はみがきするだけでわらう家。
ねこがニャーといっただけでわらうぼく。
わらうあめ。ふるだけでわ らう雨。わらうくも。わらうこども。
やがてわ らうよるが…。あやすみなさいというだけでわ らう夜。
あしたもきっと…わらっているね。
1300円+税


偕成社

「あなのはなし」 ミラン・マラリーク さく 間崎ルリ子 やく 二見正直 え・あな  
チェコで長く語りつがれてきたおはなしです。
あなが主人公の穴開き絵本です。
靴下のあなは誰も繕ってくれないのでふらりと外へ。
出会ったドーナツ、カエル、ツバメ、ヒツジと4人で旅へ…。
泊まった小屋にあらわれたのはオオカミ!
絵の中で赤ずきんの物語が見えかくれ。
楽しく、またちょっとシュールな結末です。
1300円+税


あすなろ書房

「あきちゃった」アントワネット・ボーティス なかがわちひろ 訳 
いつだって、いぬはワン、ねこはニャー。近所の鳥たちもいつも 同じ鳴き方。茶色い小鳥はもう“チュン”といつも同じ歌をうたう のにあきてしまいました。
なにかもっとへんてこりんな歌がいいな…。
“アチャピッピ ポケプー!”
それを聞いたカラスやほかの鳥は「茶色い小鳥はチュンと鳴くものよ。」
でもその楽しさを知った茶色い小鳥はもうやめられません。
聞いていたほかの鳥たちは…。そしてカラスは…。 
1300円+税


BL出版

「ピーター」 バーナデッド・ワッツ 福本友美子 訳   
バーナデッド・ワッツの日本オリジナル作品。
もうすぐママのたんじょう日。おねえちゃんのケイティはケーキを、アンジェラは絵を準備している。
ピーターは夢で見た世界一美しい木をプレゼントしたいとおじいちゃんに話します。
おじいちゃんは植木鉢に土と黒い棒のようなものを入れて渡してくれますが、
がっかりしたピーターはその鉢植えをかくしてしまいます。
ワッツの幻想的な美しい絵でピーターのやさしい繊細な心が描かれています。
やがて年月が経ち、その黒い棒は世界一美しい冬桜の木に…。 
1600円+税


福音館書店

「うなぎのうーちゃん だいぼうけん」   くろき まり 文   すがい ひでかず 絵 
2009年、世界で初めてうなぎの卵がはるか南のグアムに近い海で 見つかりました。
長い間、謎だった産卵場が発見されたことから うなぎの研究者によって描かれた絵本です。
南の海で卵からでてき たうーちゃんの冒険の旅です。
成長しながら 海流に乗って陸地へ。
そして川の上流へと旅は 続きます。
季節は巡って10年が経ちました。
うーちゃんは南の島が恋しくなってきます。
うなぎの一生を、日本の風景とともに描きます。
1300円+税


PHP研究社


「おはなしきょうしつ」  さいとうしのぶ   

教室にあるおなじみのものたちがゆかいなおしゃべりをくりひろげ ます。
「はやく背が低くなりたいなあ」と長い鉛筆。
自分の身長を計 れないものさし。
リコーダーとピアニカが練習している曲は?
おりがみのへんしんごっこ。
いつもこどもたちを 見守っている黒板など、おはなしが30話。
絵も おはなし同様、ユーモラスでほのぼのとあたたかい。
シリーズに「おはなしだいどころ」があります。
1200円+税


小峰書店

「空へ」   いとうみく      
仕事の帰りに倒れ、突然亡くなった父。
アパートに引っ越し母は仕事にでかけるようになった。
妹と3人の暮らしの日々。母や妹を守るためにいろんな思いを封じ込めてきた。
中学入学後、好きなサッカー部もあきらめた。
それなのに…。
重いものをかかえているのは自分だけではない。
いろんな人との出会いが痛みをやわらげ自分を変えていく。
そんな時、父が愛した神輿ををかつぐことに。
そこには一緒にかつごうと言っていた父の心があった。
1500円+税


偕成社

「シロガラス(1) パワーストーン」 佐藤多佳子     
佐藤多佳子さんの長編ファンタジーシリーズ1冊目です。
2冊目 「(2)めざめ」もまもなく出ます。
古くから謎の多い白烏(ガラス) 神社。
宮司の孫 藤堂千里は古武術の天才少女。
子ども神楽の剣士と舞手として選ばれた小学生6人はそれぞれに個性的で、
決して仲のいい関係とは言えなかった。
初練習が終わ った後、雨と雷の中で境内に祀られてある星明石に ふれた6人は
激しい稲妻と共に意識を失ってしまう。 白烏神社にまつわる謎にせまる物語の序章。
900円+税



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