第2話
上陸

 そしてぶつかってきた生物に近づいた、その瞬間だ  その生物がむっくり起き上がってこちらを見た  メアリーはちょっとビクッとしたが良く見ると、丸々太ったジュゴンだった  丸々したジュゴンは言った「ごめんなさい、ついうっかり」と挨拶してきた  謝ってきたのはいいが、ふてぶてしい言い方だったのでメアリーはちょっとムッとした  だが大人げないと思い直し、「ジュゴンがこんな陸の上で何やってんのよ」と尋ねた  ジュゴンは相変わらずふてぶてしい声で「陸にジュゴンがいたら悪いのかよ」と逆切れしてきた  続けて「俺は陸ジュゴン、このメガネがその証」とかけているメガネを揺らしていった  メアリーは呆れて、ジュゴンのヒレを踏んだあと再び帰路についた。  ひとりになったジュゴンはトボトボ歩いた、ふと見上げると『パンパン』の看板が目に付いた  どうやらパン屋のようだ  そして自分はお腹が減っていることを思い出し、ズルズルと店に這って入った。  店に入るとジュゴンはあたりを見回した  ピークも過ぎたようで客もまばらだ  そうしていると店主のジョージと目が合った、ジュゴンは大きな声で「カツサンドください」と注文した  ジョージはカツサンドを皿の上に載せ、ジュゴン目の前の床に置いた  ジュゴンは頭の中はカツでいっぱいだった  食べ終わりそうなところでジョージが話し掛けてきた「お前さん、名前は?」  ジュゴンは最後のカツを飲み込むと「ぼくはコグー、おじさんは?」と答えた  するとコグーはお腹がいっぱいになったためか睡魔が襲ってきた  コグーは抵抗することなく、会話の途中で眠りについた・・・
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