放射線とその障害
1:放射線の種類:原子核や素粒子の反応によって作り出される電磁波・粒子線の総称.元素を変化させたり、物を透過する力がある.
α線: ヘリウム粒子線.電子をもっていないので、+2の電荷をもち、電離作用が強い.そのため透過力は弱く、皮膚は透過せず紙で遮蔽できる.ウラン系の核分裂生成物で発生する.ラドンも含まれる.
β線: 電子粒子線.通常-の電荷をもち電離作用を有するがアルファ線より弱いく透過力はやや強い.アルミニウム等で遮蔽できる.ストロンチウム90、ヨウ素131(γ線も出る)から発生.アルミニウムで遮蔽できる.
(中性子が陽子より多い場合、中性子が陽子と反ニュートリノになるβ-崩壊となる.原子番号が1つ増える.中性子が陽子より少ない場合、陽子が中性子とニュートリノになるβ+崩壊となる.原子番号が1つ減る)
X線: 波長の短い電磁波(電界と磁界が組み合わさった波).電子の移動により発生するので電離作用はないが、物質透過力が高い.軌道電子の遷移を起源とするものをX線、原子核内のエネルギー準位の遷移を起源とするものをガンマ線と呼ぶが、通常X線とガンマ線とは区別がつかない.
γ線: X線より波長の短い電磁波で、弱いながら電離作用も持ちX線より透過力が高い.その為、遮蔽はX線より難しく鉛・コンクリートを使う.主にカリウム40、セシウム137、コバルト60から発生.人体にはカリウム40が存在し、4000ベクレル/60kg相当、人体は7000ベクレル/60kg.
中性子線: 中性子からできている粒子線で透過力が更に大きく、遮断が困難である.原子核に吸収されると違う種類の原子を作る性質があり、半減期は15分程度で短いが障害性は強い.半減期は15分程度.主に核分裂の時に発生する.中性子線は、核分裂を引き起こしたり、プルトニウム239からプルトニウムの同位体を生成したりします.
2:放射線の単位:
放射能の単位 ベクレル
Bq
放射線を出す能力を表す単位
(1Bqは、1秒間に1個の原子核が崩壊すること)
放射線量の単位 照射線量 クーロン毎キログラム
C/kg
X線、γ線の強さとして、空気がイオン化される程度を表す単位
(1C/kgは、空気1kg中でX線又はγ線照射により生じたイオンの総電荷が1クーロンであるときの線量)
吸収線量 グレイ
Gy
放射線のエネルギーが物質にどれだけ吸収されたかを表す単位
(1Gyは、物体1kgあたり、1ジュールのエネルギー吸収があるときの線量)
線量当量 シーベルト
Sv
人が放射線を受けたときの影響の程度を表す単位
(Svは、Gyに線質係数をかけたもであるが、Sv≒Gy)
3:生体への基本的影響:放射線の生体に対する影響は臓器により異なる.
細胞分裂が高頻度、長期、分化度が高い程影響を受ける.幹細胞や生殖組織は放射線の影響を受けやすい.それに対し、細胞分裂しない神経組織は放射線の影響を受けにくい.骨髄>生殖腺>皮膚>脂肪組織>神経という順で、白血球、腸上皮、毛髪、生殖腺、眼球等が障害される.
透過力の違いにより、外部被曝は、中性子>γ>β>αが危険.回避方法は、遮断による.内部被曝の強さはその逆となる.内部被曝は遮断が困難.放射性物質が体から排泄されるか、放射線を出さなくなる迄被曝が続く.

4:原子力発電所で作られる核種:
5:主な核各種の問題(自然・人工):
核種
線種
半減期 
(生物的)
 
セシウム137
ガンマ線
30年
(100日)

ほぼ人工的産物で核分裂による生成である.空中に散布されて放射性の塵となり浮遊し、降雨により地表を汚染する.1970年まではアメリカと旧ソ連、それ以後は中国による大気圏内核実験の影響である.頻繁に核兵器実験が実施された1960年代前半に日本人は1日に1ベクレル以上を摂取していたと推定されている.1986年4月26日に起こった旧ソ連のチェルノブイリ原発事故では、8京ベクレル(8.0×1016Bq)が放出された.1986年の急激な濃度の増加は、その影響である.期間が短いとはいえチェルノブイリ原発事故により一時的に当時のレベルとなった.
●1mの距離に100万ベクレルの小線源があると、ガンマ線によって1日に1.9マイクロシ−ベルトの外部被曝を受ける.チェルブイリでは、広い地域が1m2あたり50万ベクレル(5.0×105Bq)以上のセシウム-137で汚染された.そのような場所では、セシウム-137のみから1年間に1ミリシーベルト以上の外部被曝を受ける.事故直後は、短寿命放射能の存在と内部被曝の寄与で年間10ミリシーベルトをはるかに超える被曝を受けていた.(チェルノブイリでは、1m2あたりの放射能汚染度(セシウム137)が148万ベクレル以上は「強制避難」、55万5000〜148万ベクレルは「強制移住」、18万5000〜55万5000ベクレルは「希望者は移住を認める」、3万7000〜18万5000ベクレルは「放射能管理が必要なエリア」となっていた).
1,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は13マイクロシーベルトになる.
●セシウム(133)はカリウムと似た性質をもち、体内では筋肉、膀胱に集積.体内からは100日程度で排出されるがその間被曝する.膀胱がんとの関連が報告されている.
--------------------------------------------------------------------
*1997年に死亡した大人と子どもの内臓のセシウム137の分布については元ゴメリ医大の学長だったバンダジェフスキー氏が発表した「人体に入った放射性セシウムの医学的影響」という著書(日本語に訳されています.)で、発表されています.それによると、大人は比較的平均してセシウムが内臓に分布するのですが、子どもはとびぬけて甲状腺に高い値のセシウムが蓄積しています.1キロあたり1200ベクレルです.大人では約400ベクレルです.このほか大人は蓄積が少ないのに、子どもは多い、という内臓は心筋(大人約150ベクレル、子ども約600ベクレル)、小腸(大人300ベクレル弱、子どもは700ベクレル弱)です.
---------------------------------------------------------------------
** 1976年と1995年の< >ベラルーシの比較.悪性の腎臓腫瘍が男4倍以上、女2.8倍以上.悪性膀胱腫瘍が男2倍以上、女1.9倍以上.悪性甲状線腫瘍が男3.4倍以上 女5.6倍以上.悪性結腸腫瘍は男女とも2.1倍以上. * ゴメリ州では腎臓ガンは男5倍、女3.76倍.甲状線ガンは男5倍、女10倍となった.
ヨウ素131
ガンマ線
ベータ線
8日
(140日)
●ウラン‐238(238U)の自発核分裂によって生じる.ベータ線を放出して、キセノン-131(131Xe)となるが、ガンマ線も放出される.ガンマ線による被曝は甲状腺以外におよぶが、その線量は小さい.ベータ線による甲状腺被曝の方が大きな問題となる.
●1,000ベクレルを経口摂取した時の実効線量は22マイクロシーベルトになる.外部被曝は、1mの距離に100万ベクレルの小さな線源があると、ガンマ線によって1日に0.0014ミリシーベルトの被曝を受ける.人がヨウ素を吸収する主な経路は、牧草→牛→牛乳→人の食物連鎖である.この移行はすみやかに進み、牛乳中の放射性ヨウ素濃度は牧草上に沈積した3日後にピークに達する.牧草から除去される有効半減期は約5日である.牧草地1m2にヨウ素-131が1,000ベクレル沈積すれば、牛乳1リットルに900ベクレルが含まれると推定されている.チェルノブイリ事故では、放出量が大きかったために、飲料水、空気などを通る経路も考える必要があった.
ヨウ素(127)は甲状腺に特異的に集積し濃縮される.甲状腺がんとの関連が多く報告されており、100mSvを超えるとその危険があるが、これは外部被曝の場合である.
*
ヨウ素の物理的半減期を考えると、チェルノブイリ事故後の小児甲状腺がんの多発は、被曝線量が多かったことはもちろん,ヨード・セシウムの内部被曝の影響** 、小児の放射線脆弱性が伺われる. 
ストロンチウム90
ベータ線
29年
(200日)
ほぼ人工的産物で核分裂による生成が重要であるが、成人の体内にもストロンチウムは、320r程ある
●ストロンチウム-90はベータ線を放出する放射能としては健康影響が大きい.10,000ベクレルのストロンチウム-90を経口摂取した時の実効線量は0.28ミリシーベルトになり、主な体内摂取の経路は牧草を経て牛乳に入る過程で、土壌中から野菜や穀物などに入ったものが体内に摂取されることもある.また、大気中に放出された時には葉菜の表面への沈着が問題になる.海産生物にも濃縮される. 
ストロンチウム(88,87,86)はカルシウムと似た性質をもつ.化合物は水に溶けやすいものが多い.体内摂取されると、一部はすみやかに排泄されるが、かなりの部分は骨の無機質部分に取り込まれ、長く残留する.
カリウム40
ガンマ線
12.8億年
(30日)

●天然に存在する代表的な放射能で、太陽系がつくられた時から存在している.同位体存在比は0.0117%で、カリウム1gに放射能強度が30.4ベクレルのカリウム40が入っている.カリウム40が人工的につくられることはほとんどなく、同位体存在比の高いカリウム40は同位体濃縮によって得られる.カリウムは岩石中に多量に含まれ、玄武岩、花こう岩および石灰岩の含有量は、それぞれ0.83、3.34および0.31%である(玄武岩1kg中の放射能強度は262ベクレルに相当する).土壌の含有量は0.008〜3.7%の範囲にあり、平均値は1.4%である.
●食品中の濃度はかなり高く、白米、大根、ほうれん草、りんご、鶏むね肉およびかつお1kgに含まれるカリウムの重量は、それぞれ1.1、2.4、7.4、1.1、1.9および4.4gである(白米1kg中の放射能強度は33ベクレルに相当する).外洋海水1リットルには、0.400g(12.1ベクレル)が含まれる.
生物学的半減期は30日とされているが、1日3.3gは摂取するので、人は60kgの体重で常時4000ベクレルの放射能をおびている. 
コバルト60
ガンマ線
5.3年
(数日〜数年)
●人工的産物で、原子炉内で中性子照射にて人工的に作られる.内部被曝と外部被曝がともに問題になる.
●1,000ベクレルの酸化物を吸入した時の実効線量は17マイクロミリシーベルト、経口摂取した時は2.5マイクロシーベルトになる.また、1mの距離に100万ベクレルの線源があると、ガンマ線によって1日に0.0088ミリシーベルトの外部被曝を受ける.
コバルト(59)は必須元素の一つで、代表的な体内にある化合物にビタミンB12がある.成人の体内にある元素の量は4.5rである.コバルトの体内摂取後の挙動は複雑である.すみやかに排出される成分と数年間残る成分がある.体内で、骨と脳に集まりやすい.
ラドン222
アルファ線
3.8日
(数分)
●ラジウム、ラドンとも天然放射性元素である.ラジウムアルファ崩壊によりラドンが生じる
ラジウム温泉やラドン温泉には通常の200倍以上の放射線を含んでおり、日本では島根県の池田、山梨県の増富、鳥取県の三朝、兵庫県の有馬などで4万倍以上放射線が含まれています.ほかにも、放射線を含んだ温泉は日本各地に多数あり、特に花崗岩のある所には多いようです.放射線はアルファ線で外部被曝は問題ない.又温泉水を少量呑んでも数分で揮発するので人体に悪影響を与えるほど強くはないが慢性被曝の問題はある.天然に存在する放射能による被曝の中で、ラドンによるものがもっとも大きくなる恐れがあると考えられている.
ラドンによる内部被曝よりも短寿命放射能の影響が大きく、特に吸入した粉塵に付着した放射能から放出されるアルファ線が問題になる.1,000ベクレルを吸入した時の実効線量は6.5μマイクロシーベルトとしている.肺の内部被曝がもっとも重視されている.以前からウラン鉱山で働く労働者に肺がんが多発していることは指摘されていたが、欧米では1970年代以後に一般家庭でのラドン被曝の影響が議論されるようになった.時には、ウラン高山周辺に近い高濃度になる.日本でも、この問題に対する対応が進みつつある.
●コンクリートから放出されるラドンが注目されがちであるが、実際は土壌から放出されるものが重要である.床下では高濃度になり、木造家屋でも注意が必要で、換気を十分にして、被曝を軽減できるであろう.国連科学委員会は、ラドン濃度を40ベクレル/m3、短寿命放射能との平衡達成率を0.4と想定した時のラドンによる年間実効線量は1.0ミリシーベルトと評価している(この値には±30%程度の誤差があると考える方がよい). 
プルトニウム239
アルファ線
 24,065年
(20-50年)
●ウラン燃焼により作られる人工的産物.
プルトニウムは水や体液に溶けにくく、人体中での挙動はゆっくりとしている.経口摂取の場合には体内への吸収率は低く、そのほとんどが糞中に排泄される.しかし、吸入摂取されると一部が肺の中にとどまり、ゆっくりと吸収される.吸収されたプルトニウムは骨格と肝臓に分布し、それら臓器からの排泄もきわめてゆっくりしている.このように体内からの排泄に時間がかかること、ならびにプルトニウムが放射線生物効果の高いアルファ線を放出することから、単位放射能あたりの実効線量値が高く、その意味で毒性の高い放射性核種であるといえる.プルトニウムを取り扱う場合には、このことに十分留意する必要がある.
環境に放出されるプルトニウム粉塵.事故時に、環境に放出されるプルトニウム粉塵の挙動は、密度の低い可溶性の他の核種と比較すれば次のとおりである.1)密度が高いため、大気中でも水中でも沈降速度が大きくあまり遠くへは広がらない.セシウム、ヨウ素などが遠方にまで拡散するのと大きな違いがある.2)ほとんど水に溶けないため、広い範囲に浸透、拡散してゆかないと同時に海産物・農産物にはほとんど吸収されず、またそれらを経口摂取しても体内吸収は極微量で、一般的には危険性は必ずしも高いものではない.3)大地に降下したプルトニウム粉塵は風による再飛散の可能性が高く、吸入汚染の心配も高いため、場所によっては表土の処理が必要となる.事故後の環境汚染チェックには細心の注意が必要である.
吸入は一番問題.成人が1Bqの酸化プルトニウム(239Pu)を吸入した場合についてみると、肺、骨表面および肝臓の線量が他の臓器に比し高く、実効線量は16μSv.経口摂取の場合には吸収されることは少なく、成人が1Bqの239Puを経口摂取した場合を考えると、実効線量は0.97μSv.
6:外部被曝と内部被曝:発がん性の問題:白血病、甲状腺癌、乳癌、膀胱癌の報告がある




  
医療X線検査、さらに原子爆弾や原子力発電所事故のより、一過性に放射線を浴びること.遮断の手段がこうじられる. 人が年間に受ける自然被曝量は世界の平均は約2.4mSv(日本平均、1.4mSv)である.ブラジルやボリビアの一部地域では放射性物質を含む岩石が多く、平均4mSv/yr以上の場所も存在するが、癌発生が多いという報告はない.現在も継続で調査は行わている.

チェルノブイリ事故では消火活動に就じ、急性放射線障害者237名、内28名が3か月内に死亡.その後20年で、19名の死亡が確認されている.避難対応としては、高度汚染50mSv/y、強制疎開33mSv/yとし避難.10-20mSv/yを程度汚染として棲み分たが、事故後直ちに実行されたのではない.その結果の報告も出ている.

WHOの見解は、断定が難しいとしながらも「1年間の量にして10ミリシーベルトだと外出を避ける.50ミリシーベルトだとそこから避難すべき量.広島、長崎では500ミリシーベルトの放射線量を受けた人の3割がガンで死亡している」.胎児の奇形発生は100mSv、男性の一時的不妊は精巣に150mSv、リンパ球減少は500mSvで生じる可能性がある(外部被曝).

今回の事故を受け、放射線に関する緊急事態においては、最も高い計画残存線量について、20〜100ミリシーベルトの幅の中から状況に合わせて最適な値を適用すべき(ICRP)として、汚染区域に居住する場合20mSv/年を、長期目標を平常時線量限度の 1mSv/年とした.これは単純には、2.28μSv/hであるけれど、子ども被曝に対しての批判もあり、子どもは「23年度、1ミリシーベルト」を目標としたが、@ 学校内における被ばく量の目標値であり、登下校も含め、学校外における被ばく量は含めない.A 学校給食による内部被曝は含めない.B ほこりの吸引などによる内部被曝は含めない.と除外項目ばかりである) .単純計算で0.15μ/h(被曝時間考慮し0.19μ/h)あるが、原発80km圏内では管理基準の0.6μSv/hを超えているところもある.通常なら、管理基準を超えるので対策が必要という状態です.早急な除染が望まれます.
急性期症状:発熱、下痢、紫斑、口腔内壊死、脱毛、出血(死因.外傷を除く)




   
放射能汚染線物質を吸入したり、食べたり等して体内に汚染物質を取り込んだ結果、被曝すること.取り込んでしまったら汚染を逃れる方法はない.上記の、食品としてはヨード・セシウム・ストロンチウムが、吸入としてはラドンが問題となる.
*データ元は、チェルノブイリ事故のみ.まだ解析中であるが、事故後20年でいくらかの合意で得られた.但し、放射線量100mSv以下のエビデンスがないからといって、安全と言ってしまうのは問題.チェルノブイリの教訓は、
1) 小児甲状腺癌の多発(100倍以上、特に10歳以下) 汚染ミルクの影響が大きい 
2) 早産・未熟児・低出征体重児が多い.分娩異常が多い. 妊婦の栄養状態の悪化
3) 原因不明の上気道感染が多い 免疫力低下
その後(20年後)の報告で、小児甲状腺癌は減ったが、思春期・成人の甲状腺癌が増えており(但し、こちらが通常の放射能被曝の影響といわれる.無機ヨード対策をした国は増加がない)、腎癌、膀胱癌が増加しているとあり、主なる原因がセシウム137による内部被曝と考えられている.もちろん、エビデンスはないということで一般には、これまで日本の原爆被災者の追跡調査や、諸外国での事故などの被害者調査の結果、100ミリシーベルト(mSv)未満の被曝で悪性腫瘍の発生が増えることは認められていない.100mSv以上であればリスクが数%高くなるとしているが、その上昇はわずかであり(1.08倍)、喫煙や2-3合以上の飲酒、化学物質暴露、受動喫煙、肥満、やせ、運動不足、高食塩摂取などの影響よりも低いとされているが、単にデータがないだけである.
内部被曝では、慢性の疲労症状、易感染性、白内障、白血病、乳癌、甲状腺癌等の発がん不安.精神的障害が問題.
内部被曝に関して*、**の報告が出ているから、食品の基準値は厳しい方が望ましい.日本は情けないほど甘い.1986年チェルノブイリの事故により深刻な打撃を受けた国々では、許容限度がはるかに低い.例えば、
水道水 100Bq/l セシウム137−ウクラ
  2Bq/l セシウム137−ベラルーシ
日本
200Bq/kg セシウム137⇒10〜50Bq/kgへ変更予定
300Bq/kg ヨード131
牛乳 100Bq/l  セシウム137−ウクライナ、ベラルーシ
ジャガイモ
(主食)
  60Bq/kg  セシウム137−ウクライナ
  80Bq/kg  セシウム137−ベラルーシ
日本
500Bq/kg セシウム137⇒100Bq/kg へ変更予定
2000Bq/kg ヨード131
パン類   20Bq/kg セシウム137−ウクライナ
 40Bq/kg セシウム137−ベラルーシ
・平成23年3月17日 放射能汚染された食品の取り扱いについて:セシウム以外は下記を参照のこと.
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e-img/2r9852000001559v.pdf
・暫定基準値のものを、その量(kg)を1日で食べると、概ね以下の換算値となる.非現実的であるから、200gを食べれば1/5、2日で食べれば1/2として計算するが、飲料水はこれに非ず.一旦、体に入ればヨードは20日、セシウムは200日間蓄積被曝する.
131ヨード(外部被曝換算) 137セシウム(外部被曝換算
飲料水・牛乳・乳製品 300Bq/kg 6.6uSv(0.28/h) 200Bq/kg  2.6uSv(0.11/h)
その他 2000Bq/kg 44uSv(1.8/h) 500Bq/kg   6.5uSv(0.27/h)
・内部被曝の測定:γ線は「ホールボディカウント」で直接測定、α・β線は直接測定は不可(体を通過しない)、母乳・尿の検査.
・放射性セシウム体内除去剤:⇒ラディオガルダーゼカプセル
・放射性ヨード:無機ヨードでブロック(ヨウ化カリウム100mg)
7:福島原発事故:諸外国は敏感に反応.
色々言われているが、正確な情報に乏しい.単純比較は出来ないが(すべきでない)、広島原爆の40倍、チェルノブイリ事故の1/100.報道では、セ・シウム137は原発事故では1万5,000テラ・ベクレル(テラは1兆)、原爆の89テラ・ベクレルの166倍.ヨウ素131は原発事故では16万テラ・ベクレルで、原爆の6万3000テラ・ベクレルの約2.5倍.ヨウ素は早期に低濃度となるので、今後は先ずセシウム汚染が問題になる.ついでストロンチウム.

注目!!デイビット・ウォルトナ=テーブス教授:教授はゲルフ大学オンタリオ獣医学部Population Medicineの教授.獣医疫学者、エッセイスト、詩人、小説家. 食物、水系感染症、人獣共通感染症(他の動物が人々と共有する病気)、および生態系の健全性の研究をしている.
著作の一章「チェルノブイリ後の食物連鎖における放射性物質汚染」より.
[3つの基本的特徴]
全体的に、食物連鎖における放射性核種の動きを検討すると、食物の安全管理に関わる3つの基本的特徴がはっきりと分かる.第一の特徴は一定のパターンがないということである.放射性核種によるいかなる汚染においても、汚染の程度と種類は地理上の場所が異なれば変わるし、生物種によっても異なる.同じ生物種の中でも個体によって違う.そしてもちろん時間の経過とともに変化する.このようなばらつき具合の一部、特に、生物種や地理的地域の間でばらつき具合がどう異なるかは予測可能である.少なくとも、汚染された雲が通過する時点の降水量や、土壌の種類、植物の種類、汚染された牧草や餌に対する動物の暴露程度などに基づいて、大体のところは予測することができる.スウェーデンでは、ヒツジの放射能は検出可能な下限量(2ベクレル/kg)未満から3.9キロベクレル/kg超まで、トナカイでは12ベクレル/kgから16キロベクレル/kg超まで、魚類の一部では検出可能な下限量未満から48キロベクレル/kgまでとさまざまであった.  セシウム137の濃度測定について、スウェーデンのデータに基づいてサンプリングを実施し、サンプリング回数の95%で真の平均値から10%の範囲内に収まって欲しいと願うなら、ミルクは200個、牛肉は1000個、トナカイなら40万個程度のサンプルが必要となるだろう.カナダの放射能に関してカナダ政府が出した1986年の報告書は、カリブー1頭を検査したことに触れている.  魚や野生生物のように個体の放射性物質の蓄積レベルが大きく異なる動物の場合、特定精度の範囲内に合わせた単純無作為抽出によるサンプリングは現実的ではないであろう.高い汚染レベルが予測される地域で、より対象を絞ったサンプリングを行えば、より少ないサンプル数でさらに精度の高い推定値を算出できると考えられる.第二に、放射性核種はあちこち移動することが多い.一つの場所にたどりついて、そこでじっと動かないわけではない.環境の中をあちこち移動し、無数の生物物理パラメータに影響を与えたり、また逆にそうしたパラメータから影響を受けたりしている.影響を及ぼす重要な環境因子の一部は確認されている.競合する安定元素(カリウム、ヨウ素、カルシウムなど)の量、土壌の種類(粘土か砂か)、植物の取水(地表に根を張るか、深く根を張るか)、動物の食性(若葉を食べるか、草を食べるか;地面に近い草木を食べるか、高いところの草木を食べるか;肉食か草食か)などがそうである.これらの環境因子は災害発生時に初期決定を行うのに活用できる.第三に放射性核種のいくつかは食物連鎖の階層が上がるにつれて濃縮される可能性がある.特に水界生態系においてこの可能性が高い.他の生物では、放射性核種は体内に取り込まないように排除される場合がある.例えば、牛乳中のヨウ素131の濃度は、通常、乳牛が消費する植物中に含まれるヨウ素131の濃度の10分の1である.(割愛)
[汚染への対策]
チェルノブイリのような核の危機に対応する際には、まずまず安全な食料供給を確保するために、農家、獣医師、食品加工業者、公衆衛生当局が大いに協力する必要がある.農家では、予防措置と治療行為の両方が可能である.汚染地域の動物は屋内に入れ、保管してある汚染されていない餌を与えなければならない.これができない場合、例えば、北部地方の一部では動物を放牧したり狩猟したりしているが、こうした場合、汚染されていない地域から指定の給餌場所へと干し草を輸送してもらうべきである.チェルノブイリ事故の後、一部の農家は犠牲にするヒツジを送り込んで汚染された牧草を食べつくさせ、牧草地の汚染除去を試みた.これらの動物は汚染された植物を食べつくし、その後は殺されることになっていた.こうしたやり方は放射能が葉と茎にとどまっている場合にしか有効でない.多くの場合、放射能はすぐに根に移動してしまう.そうなると、牧草をいくら食べさせても放射能を除去することはできない.トナカイと地衣類の生態系においては、放射性元素の長い実効半減期と、地衣類が根から放射性物質を吸収しないという事実の両方を勘案する必要がある.牧草を食べさせて除染するというやり方は効果があるかもしれないが、私が生きている間には実現しないだろう.これは、中東に平和が戻る可能性について神が仰せられたとされるとおりである.スウェーデンの牧羊業者のなかには、森林地域に放牧している業者もある.しかし、森林の「アンブレラ効果」が役に立つことはたまにしかない.栄養分の乏しい針葉樹林の土壌で育つ多くの植物は、人間が生態系にばらまく汚染物質を含めて、手に入るものを生体内に非常に効率よく蓄積する.このことは、例えば2006年のノルウェーのヒツジについても同じことが言えるようである.長期的には、石灰とカルシウムを豊富に含む肥料を土壌に交ぜて、放射性核種に競合する安定的元素として作用させること、および牧草を150ミリメートルの株に刈り込むこと、この二つの方法はどちらも、汚染地域で刈り取った飼い葉中の放射性核種の濃度を低減させると言われている.汚染された後、種をまく前に耕作することで、地表よりも吸収量が低い根のレベルにまでセシウム137の濃度を低減することができる.動物の個体は、腸内でセシウムと結合して体内に吸収されるのを防ぐ働きをするプルシアン・ブルーやベントナイトなどのキレート化剤を与えたり、セシウムと競合して吸収を防ぐ、カリウム含有量が高い餌を与えたりすることで除染できる.ストロンチウム90が存在する場合は、マメ科植物など、カルシウムの含有量が高い餌を与えるのが適切だと考えられる.セシウム137の物理的半減期は長いかもしれないが、汚染されていない環境の中で汚染されていない餌を与えられている動物は、セシウム137の生物学的半減期が比較的短いことを利用することで安全を確保できると考えられる.こうした方法が成功するかどうか、そのひとつは、汚染された動物を汚染環境の外へ移して素早く治療するということにかかっている.砂地に育つ植物や、キノコのように根を地中浅くに張り地表の水分に依存して生息している植物、それに、汚染時に葉が生い茂っている青い葉物植物は、動物や人間が消費しないようにする必要がある.皮をむける果物と野菜はおそらく廃棄せずに済むだろう.熟した根菜作物、特に粘土質の土壌で育つ作物も汚染される可能性が低いと考えられる.人間がヨウ素131とストロンチウム90に曝露する主要経路はミルクと乳製品である.セシウム137には主に食肉を介して曝露する.汚染対策に資源を割り当て、優先順位を付ける場合、動物由来の食物を疑惑の大きい順にランク付けすると、小型反芻動物>肉牛>乳牛>ブタとニワトリ、という順になる.  これらの動物のそれぞれでは、外部と完全に遮断した環境で育てた動物は対象外とし、牧草地へ放牧されている動物を特別な配慮の対象にすべきである.汚染直後の期間は、主としてヨウ素131に注意を払う必要がある.その後は、ミルクと食肉中のセシウム(およびストロンチウム)が第一に注目すべき元素となる.先に述べたように、汚染されたチーズを保管すれば放射性ヨウ素は消失するが、放射性セシウムについては、保管あるいは廃棄する前にチーズを検査することが重要である.
[食品の汚染放射能を減らす工夫:ウラジミール・バベンコ著・世界文化社800円]
・今日からでき!
・キッチンでできる!
・チェルノブイリからのアドヴァイス.