注意必要な非飲酒者の肝炎
難しい、脂肪肝との鑑別
肝硬変や肝がんへ進行
 飲酒をしなかったり、ごくたまに少量を飲むだけの人が、アルコール性肝炎と同じような肝臓の状態になる病気がある。症状がほとんどないまま肝硬変、肝がんへと進行していくが、よくある脂肪肝との鑑別が容易でなく、見過ごされるケースも少なくない。「非アルコール性脂肪性肝炎」(NASH)といわれ、新しい生活習慣病として注目されている。
▽2段階で発病
 「酒を飲む人の肝臓に脂肪がたまって脂肪肝の状態になると、アルコール性肝炎から肝硬変へと進むが、飲まない人の脂肪肝は悪化しないというのがかつての常識。でも、これは違う。一部の人では肝硬変、肝がんへと進行してしまう」
 こう話すのは、橋本悦子・東京女子医大消化器病センター内科講師。現在、肝硬変や肝がんで原因不明とされたケースの相当数に、NASHが絡んでいる可能性があるという。
 飲まない人でも、過食や運動不足などから中性脂肪が細胞に蓄積し、脂肪肝になっている人は少なくない。NASHは、これに第二段階の刺激である活性酸素によるストレスなどが加わって起きると考えられている。
▽病理検査が確実
 現在、NASHの確実な診断には、肝臓の組織の一部を採取して顕微鏡で調べる病理検査しかない。患者では、脂肪の蓄積以外に炎症を示す所見が出るからだ。
 病理検査にはわずかだが危険性もあるため、橋本さんが実施を勧めるのは、画像診断で肝臓に脂肪の蓄積が見つかった人で@高齢や肥満A血液検査で特徴的な傾向があるB肝機能が低下している―の条件を満たす場合だ。こうした人では、肝細胞が壊れて硬くなる「線維化」が進んだNASHの可能性があるという。
 米国では、NASHは人口の2―3%。50代前後の女性で、肥満や糖尿病、高脂血症などの人に多い。高度肥満の人の70%がNASHという調査結果もある。
 日本での大規模調査などはまだ行われていないが、女子医大の患者計110人のデータでも、女性はやはり5、60代に多い。だが特徴的なのは、男性の4割を40歳未満が占めていることだ。
 「ライフスタイルの欧米化で若年肥満が増えていることと関係しているのでは。彼らが中高年になるころには、患者は激増する恐れがある」と、橋本さんは指摘する。
▽肥満解消が重要
 NASHの詳しい原因は未解明だが、糖尿病に関係する「インスリン抵抗性」が深くかかわるとみられている。インスリン抵抗性は、糖の代謝に関係するインスリンが効きにくくなる状態。肥満で細胞に脂肪が蓄積すると、その細胞が出す物質の作用で抵抗性が増すが、この悪影響が肝臓に出たのがNASHではないかという。
 このため、治療でも糖尿病薬などがよく使われる。インスリン抵抗性改善薬や一部のビタミン、ウルソデオキシコール酸などの肝臓病薬により、脂肪肝や肝機能が改善したとの報告がある。
 ただ、確立した治療はまだない。橋本さんが最も重要で効果も高いと指摘するのは、食事や運動のコントロールによる肥満の解消。「入院で食事、運動療法を受けて改善する人は多い。日本人は遺伝的にも肥満に弱い人が多く、肥満との闘いは重要な課題です」と、橋本さんは話している。