visusl data of medical care

目で見る日本の医療 Q & A

1:医療関係者
H12年末届出のある職種データは下記のごとくである.医療職は主に医療施設で働く職と医療に係わる職(医療器具、薬や介護に関わる)に分けられるが、ここでは前者を対象にし直接患者と係わる職を対象としている.教員・研究者・検査技師・放射線技師・理学/作業療法師・栄養師等々を含めるとその実数は不確であるが、280万人程度.人口10万人に対し医師数201.5人、医師一人当たりの人口は496人となる.⇒医療従事者は不足してる.OECD諸国の平均と比べ1/3である
△TOP
職種 実数
医師 255,792
歯科医師 90,857
薬剤師 217,477
保健師 36,781
助産師 24,511
看護師・準看護師 1,042,468
歯科衛生士 67,376
歯科技工士 37,244
あんまマッサージ指圧師 96,788
はり師・きゆう師 141,697
柔道整復師 30,830
2:医師の業種は、施設・職種関連の構成比で下記となる.勤務か自営に大別される.実数では医療施設の勤務者が168,029人で、2/3を占めている.女性医師は34,848人で14.3%である.⇒勤務医の比率が高い
△TOP
医師の業務種別 構成比率% 従事医師実数
医療施設 95.1
 ・病院関連 (60.4) 168,029
 ・診療所関連 (34.6) 75,172
介護老人保健施設 0.8
上記以外の施設 3.2
その他 0.8 12,591
3:医師養成は医師法で規定されている.大学卒業後、医師国家試験に合格すると厚生労働大臣より医師免許が授与される.免許取得後は、医師法により「2年以上の臨床研修」が求めれており「医学部附属の病院又は、厚生労働大臣指定の病院」での研修が必要である.現在この研修のあり方について論議中である.⇒医学部の定員は、医師不足にもかかわらず削減されてきた.
区分 法規 免許付与者 指定権者 養成形態 入学資格 養成期間
医師 医師法 厚生労働大臣 文部科学大臣 大学 高校卒又は同等の学力 6年
4:医療施設は、病院、診療所、介護老人保健施設、助産院がある.診療所は有床診療所も含まれるが、入院数は19名以下.平成13年10月1日現在の施設数は以下の通り.75%弱が無床診療所である.病院は10%に満たない.歯科の病床は全国で153床.⇒個人開業経営が多い
△TOP
医療施設の種別 実数 構成比率% 有床数
総数 103,258 100 1,856,341
病院 9,239 8.9 1,646,797
診療所・有床 17,218 16.7 209,544
診療所・無床 76,801 74.4 0
5:病院には病床種別ごとに国が定めた基準があり、基準を満たさなければなりません.平成13年3月の第四次医療法改正では、病床に応じた医師・看護職員・薬剤師の人員配置、1病床あたりの面積等が改められました.病床種別は下記になりますが、看護職員配置基準の経過措置により病床の種別が未決定の病床が過半数を上回っている.概ね、一般か療養のどちらかの選択を余儀なくされます.⇒病床数は大変多い.OECD比較で圧倒的1位で、3倍である.米国との比較では5倍.
△TOP
病床の種別 実数
総数 1,856,341
一般病床 55,31
療養病床 33,131
精神病床 357,385
感染症病床 2,033
結核病床 20,847
未決定 1,178,083
6:本邦の医療保障の特徴は国民皆保険にあります.これは国の強制保険であり、加入する保険を自由に選ぶことは出来ません.「国民の平等性」を謳った制度で、保険料を納めた国民は保険料に関わらず、国の定めた基準の医療を受けられるのです.但し、国の基準より質の低い医療を認めることはないのに、私費では可能な質の高い医療を原則として選択することも許されません.日本の医療保険制度では、職業により以下の保険のどれかに加入することが義務付けられています.これとは別に、被用者保険と国民健康保険の共同事業として老人保健があります(後述)⇒国民皆保険制度.公費負担100%とは異なる.
△TOP
保険の種別 加入保険名 構成割合% 保険者 被保険者数 被保険者像
被用者保険 共済組合 7.9 共済組合 7872万人 公務員の従事者と家族.組合数82
組合管掌健康保険 25.0 健康保険組合 大企業の従事者と家族.組合数1817
政府管掌健康保険 29.1 中小企業.
船員保険 0.2 船員組合 船員.
国民健康保険 国民健康保険 37.7 地方自治体 4763万人 自営業・5人未満の企業・年金生活者
日雇特例健康保険 日雇特例健康保険 0.1
7:皆保険は万人平等である為の不利益がある.それを箇条書きし、その対応を述べる.
a)医療に掛からなくとも(保険を使用しない)、保険料は支払わなければならない.
→アメリカを例にすると保険に入る入らないは自由である.アメリカでは民間保険に加入するので、日本の生命保険以上に加入に厳しい制限が付いている。又、リスクが大きければ保険料も高額であるので、この点での不利益は大きくない.


b)社会保険方式による保険料徴収に格差がある.保険料は低所得者ほど負担が大きい状況で、国保は更に負担が大きい.
→皆保険という性格からは所得税のような直接税で納付するのが平等であるが現実には難しい.国保においては低所得層に軽減措置が設けれており、被用者においては負担率が同じなら組合内の再配分効果もあると思われる.これとは別に、保険行政では保険事業の不足分は税金で補填する制度があるので、完全な社会保険方式といえない面もある.


c)一部負担金に格差がある.所属組合で負担金格差がある上、本人・家族別でも負担の不公平がある.
→一応格差は2倍以上にならないようになっている.又負担額が一定額を超えると全額償還され調整制度がある.従って極端な不平等にはならない仕組みはできている.


d)給付における格差がある.医療の基本給付は同じであっても、健康の予防増進・分娩費等々で組合の給付が異なる.
→各保険者によって加入している物の所得レベルや病気の掛かりやすいリスクは異なる.保険者運営なので、加入者の所得が多く病気に罹患しない被保険者が多いところは給付を高く出来るし余力もあるが、その逆では財源に余裕は出来ないから致し方ない.但し、何箇所かの医療機関に自由に受診できるメリットは民間保険では到底出来ないメリットである.保険の種類を選ぶことは出来ないが、どの保険でも基礎給付に差別がないのが一番のメリットと思われる.
△TOP ⇒日本の保険制度は個々に不利益は認められるが、平等の観点からは諸外国の模範となる制度である.実際、この制度がWHOやOECDで評価されているのに、医療費抑制策のため制度自体が危くなっている.
8:老人医療は以下のような歴史を持っている.老人は所得が低く病気の置換率も高いので、老人保健という別立ての保険制度を用意した.当初は、老人医療の自己負担分は政府が全額援助し、医療費の無料化の大看板を掲げた.が、老人医療費の増大により維持困難と見るや、昭和58年に老人保健拠出金制度を創設した.以後、拠出金分担の改定、一部負担の導入、老人加入率上下限の引き上げなど姑息的な対応を繰り返している.平成12年に介護保険を導入したが、老人保険の肩代わり的要素も否定できない.又、平成13年以後は老人保健そのものではなく、健康保険法改正の中で論議に終始し、しかも迷走している.老人の自己負担率が増える傾向にあるのは客観的事実である. H12年の国勢調査で本邦の人口は12,689万人.70歳以上2,187万人で高齢化率17.2%.今後も上昇.当初、老人保健利用者は9%であったが、急速に高齢化が進むとともに利用率も急上昇.結局、国の予想が甘く、対応も遅れた.⇒急増する老人医療費の対応に無策である.
△TOP
年次 法制 特徴
昭和48年 老人福祉法改正 老人医療の自己負担を公費で負担(医療費はが無料!)
昭和53年 老人保健法改正 特別保険料の新設
昭和58年 老人保健法施行 老人保健拠出金の導入、一部定額負担の導入
昭和62年 老人保健法改正 老人保健拠出金算定法の改定、一部負担金改定、老人保健施設創設
平成4年 老人保健法改正 一部負担金改定、在宅介護体制の充実、公費負担率改正
平成6年 健康保険法改正 老人保健施設の整備、老年保険福祉審議会設置
平成7年 老人保健法改正 老人保健拠出金に係わる特別調整、老人加入率上下限の引き上げ
平成11年 老人薬剤負担臨時措置 薬剤一部負担負担を公費で負担
平成12年 介護保険法施行
:老人保険は,当初は自己負担金を全額公費負担しましたが、高齢化人口の増加に伴い挫折しました.老人保健は、老人の自己負担と被用者保険と国民健康保険と行政の共同事業として運営されているのです.老人保健拠出金制度は,健康保険側の拠出の割合を規定した制度ですが、その拠出割合が健保保険の大きな負担となっている.下記ような分担になっています.
年次 老人保険財源
平成13年
平成14年
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平成18年

老人自己負担金 老人一部負担金
健康保険拠出金 各保険は均等分担
行政負担金 国と自治体で均等分担
△TOP 拠出金制度の趣旨は、「趣旨は70歳以上の人と65歳以上の寝たきり老人にかかる老人医療費の財源は、本人が一部を負担、残りは国が20%、 都道府県と市町村が5%ずつ出し、残りの70%は企業の健保組合や市町村の国民健康保険などからの拠出する」というものです.老人医療費はH9年度以降、毎年10兆円を超えている.平成12年は保険料の内訳は7兆が拠出金、国が2兆強、地方が1兆拠出して10兆を想定したが、老人医療費は10兆9000億だった.この拠出金が負担になって、組合管掌保険の経理を圧迫している.組合保険はそもそも本人と家族の保障(退職者も含まれる)で、老人が占める割合はきわめて低い.保険料を徴収してない老人の分を拠出しなければならない理由はあるのか?拠出の割合も不公平だといって拠出しない企業が出始めています.というのは、組合管掌保険は行政の管理は受けているが、補助は受けていないからです.

そこで国はH18年までに拠出金の負担率を50%に引き上げる方針を打ち出し健保保険の拠出金負担を軽減する考えです(図参照).但し、これにより行政負担が増えるので、この財源をどこかに求めるかが問題です.国は明言しておりません.この財源、国が公共事業の割合を外国並みにすれば簡単です.税を生む企業こそが資本と思っている行政では情けない!老人負担の割合は国保が一番多いけれども、実際は1/2に軽減されている.一方、高齢者が少ない政府管掌保険は1.25倍、更に少ない組合保険の負担率は2倍になります.全体で平等に再配分されていると言えないことはないですが.⇒拠出金制度は負担率を適切にすれば皆保険には馴染んでいる.国の負担率を増やし、拠出金を減らすべきである.無駄な公共事業は辞めなさい.
10:国民医療費は下記の如く増加の一途をです.平成11年では30兆9300億円.これは国民所得の8.4%に当たります.そのうち老人医療は、11兆8000億円で総医療費の38%を占めています.国民所得に対する総医療費伸びは前年比3.7%ですが,老人医療費は、前年比8.4%の伸び.そのうち、4.1%が老人人口増によるもので4.3%が医療の質の向上による伸び.国民所得の伸びは0.2%.この状況で医療費が伸びるのは問題だから、総医療費を何とか抑えられないかとう議論が医療費抑制策の発端です.平成11年以後の老人医療費は抑制効果が出ているようであるが、介護保険導入を考えれば抑制されたとはいえない.⇒介護保険導入は、老人医療急増を隠してしまった.医療費と呼ばせないようにしただけの姑息な手段.
△TOP
年次 国民医療費 自己負担 保険料 自治体 国民所得に対する割合%
昭和50年 6兆4779億 8375億 3兆4636億 1兆8725億 2984億 5.22
昭和60年 16兆 159億 1兆9185億 8兆7038億 4兆2551億 1兆0946億 6.15
平成 7年 26兆9577億 3兆1705億 15兆2137億 6兆5132億 2兆0265億 7.16
平成10年 29兆8251億 4兆4004億 15兆7790億 7兆2811億 2兆3345億 7.84
平成13年 31兆 234億 4兆6841億 16兆4769億 7兆7339億 2兆3977億 8.46
H13比率% 100 15 52.6 24.7 7.7