ブレーキキャリパー分解整備



ここの記載内容を安易に真似するのは非常に危険です!
命にかかわる部位ですので信頼のおけるショップに依頼することをお勧めします!

 前回のキャリパー洗浄時にピストンの揉み出しを試みたがまったく出てこない。10年選手だし
そんなものかもしれないと思っていたけど、やはりコーナー進入時のブレーキングに違和感。
制動力が操作にリンクしない。普通ならノーマルだし、とか言う判断でリプレイスキャリパーに
手を出しそうだが、あのピストンの作動性の悪さを見ていると一度オーバーホールを試みて、
まずはノーマルの性能を味わうことにした。

油圧の使える状態で少しでもピストンをせり出すためにパッドを外す。フロント左外側の
パッドが抜けない!引きずりだ。そういえば駐輪場に出し入れするとき重かったような?
燃費もよくならないかなぁ・・・。

レバーを何度も引くがこの有様。片押しするのでローターがしなる!ピストンの力ってすごい。
ほとんど対抗2ポッド状態。反対側もこんな感じだった。

フルードの枯渇に気をつけ、注ぎ足しながらなんとかここまでピストンをせり出した。

マウントしている状態で硬そうなボルトは緩めておく。E12のトルクスがぴったり。
買ってよかった。今回のツールはコーケン制。

ここから本命のピストンを抜く作業に入るが、いろんなページでこの作業を探すと、
使おうと思っているピストンツールごときでは抜けないとのこと。気休めで買ってみた。
組み付け時には使わない。分解時だけ。フルードに変なのが混ざるのは嫌だ・・・。


抜けないと評判のピストンツール。コンプレッサーとかあれば必要ないが、あってもキャリパーに
接続の問題や、飛び出し防止の当て木なんかもむしろ面倒。
多少ピストンの裏が傷ついても安いし、工数は無尽蔵。これでいく!が、この程度の
引っ掛かりでは固着に勝てそうもないよなぁ。嫌な予感。

ボルトはマウント時に緩めてあるので分割は簡単でした。
残りのフルードなどこぼれるのでそのあたりが写真を撮りながらの作業には無理があります。

ガシっとピストンツールを入れる。しっかり掴んで・・・、回るかな・・・。
ガリっと滑って盛大な傷痕と削り粉が・・・。このツールの本来の主目的であろう、
ピストンの回転すらままならない。このままでは日常整備ですら使えなくなるのか!
ここまで分解して、シール交換断念か!

魔法のひと吹き。ラバーグリースを吹く。透明。ブツブツ発泡。浸透するのか?

もう一度チャレンジすると、今度はぐるぐる回る!引き気味にまわすと抜けてきた!
恐るべしラバーグリース。通常メンテナンスでも吹けば効くんじゃないか。
ただ、回るだけで一向に抜けてこないピストンが左右キャリパーで1つずつ存在。
何度も試みるが、回るだけ。ピストンの裏も無残にギザギザ。ピストンツールの
ローレット加工目も磨耗。食い込めない工具側、荒れているために満足にかからない
ピストン側。手も水膨れが!万策尽きた・・・。なるほどみんなこれで諦めるのか・・・。
ここでやめたらこれまでの苦労が水の泡。何か方法は・・・。

ジャッキアップが2台あったので高さをあわせてキャリパーの合わせ面をのせます。
まわすのではなく、垂直成分のみ負荷します。この方法だと片手が空くのでそこに体重を
乗せることができます。うまく添えれば両手で握ることもできるのでパワーアップ!
スポンという音を立てて抜けました!始めからこのやり方をすればあんなにピストンの裏や
ツールを磨耗せずにすんだと思います。この方法は下に勢いよく抜けるので添えた手を
怪我しやすいということでお勧めしません!

なんとか貧弱な環境でピストンを抜くことに成功。ここで精魂尽き果てて昼飯にしました。

リアは一体なので組み付け上、ピストンが丸ごと抜けるまでストロークするはずです。
なので、パッドを抜いて、キャリパーもフリーにします。フルストロークできる状態にして
フルードを注ぎ足しながら自然に抜けてくるまでレバーを押します。この方法は楽ですが
フルードまみれになる危険があります。今回はキャリパー内のフルードはトイレットペーパーに
すわせましたが、キッチンペーパーなどのほうが油の吸収量はよいかもしれません。

あとは古いシールを外します。海外のメンテ本では鉛筆を使っていました。ウッドツール推奨と。
今回は壊れて使わなくなった耳かきです。竹はなかなかしなりがあるし、先端の形状も
隙間にもぐりこませるのにグッド。もぐらせて下にグッと押すとシールが外れます。
そんなに硬化しているようには見えませんでしたが。
コツをつかめば早いです。あのピストンはずしに比べれば・・・。

続いて洗浄ですが、中性洗剤にしようかと思ったのですが、ものは試しに洗油。かっこよく
聞こえますが、灯油です。ブレーキダストの落ちはどうかな?と期待したのですが
灯油はまったくダスト落としませんね。作業は夜でしたが換気のよい屋外でしました。

見かけは気にしません。欲しいのは作動性なのでリングの入る溝を重点的に
歯ブラシで磨きます変な固着物は見当たりませんでした。


ピストンも洗います。灯油が黒くならないのが逆に汚れが落ちていない証拠なのか。
洗面器の右隅に見える黒い塊はダストではなく、半液状?フルードか?交じり合わないようです。
だから黒くならないのか?

灯油って揮発しにくいので一晩陰干しします。

一晩たちましたがまだ乾いていません。ファンヒーターをまだ出していたので
あぶります。臭い!

キャリパーの汚れ。磨けば落ちるのか錆色もみえる。多分交換時期なんでしょうねぇ。
でもこのまま乗り続ける人もいるだろうから、今回は磨いて流用!次は新品。

ピストンツールで見事に裏面はガリ傷だらけ。裏の傷は無視だが、ツールが抜けた際の
バリがピストンあて面に出ているのはいただけない。研磨でバリだけ落とします。
ルーターではなく、ハンドドリルなので遅いが、削り量をゆっくり確認できる。

本命のピストン磨き。フェルトバフを取り付け、ジフを塗布。磨いてみる。

見かけひどい固着汚れはなくなった!意外にメッキが薄くなり、錆びていたのはリアだった。

たっぷりフルードを塗ってリングを溝に入れていきます。手が気持ち悪い。
フルード特有の焦げ臭さ?が好きになれません。

ピストンにもフルードを塗ってまっすぐに挿入します。まっすぐ入ると途中手ごたえがあり、
コツンっと収まります。

ここまでピストン入ります。Oリングも忘れずに組み付けて仮組みします。
ボルトの本締めはバイクにマウント後です。

パッド、フルードなしで重量を測ってみます。ちなみに870g。

リアは565g。

あとはバイクに組み付けてフルードを満たすだけです。引きずっていたパッドをみると
当り面の色にムラがありました。

銅ワッシャーも買ってみたのですが、このあと悲劇が・・・。

パッドまで組み付けてあとは、マウントしてホースを締め付けるのですが・・・。

今回は本来手を出す領域ではないのでしっかりマニュアル記載のトルクで締め付けようと
思ったのですが、いくら数字が分かってもトルクレンチの管理がいい加減では・・・。
校正を怠ったツールを信用したためにこの有様・・・。変な感触はしたんだけど。
やっぱり人間の感覚は優れている?

あわてて最寄のバイク用品店でバンジョーボルトを購入。予定外の出費。色味はあわせたが
締め付けてみたら頭のサイズが違う。まぁそんなことは整備時ソケットの種類が増えるのが
面倒なだけで気にしないが、このボルトが飛ぶまでいい加減なトルクレンチで締めてきた
リアブレーキホース、マウントボルト、キャリパー分割ボルトが心配・・・。
疲労してないだろうなー。次回はボルトも全点交換。忘れないように
ここに書いておこう・・・。

一人でのフルード充填、エア抜き作業は面倒。なんかフロント左のキャリパーからは
白いもやもやが出てきた。大量のフルードで交換したらキレイな透明色になったけど。

最後は水洗い。どう頑張ってもフルードまみれになります。

命数を使い果たしたツール。他のページで見かけるほど悪いツールではなかった気がします。
 次はピストンの再利用はないです。ボルト類まで交換したほうがよさそうです。エアは多分少し
残っていると思うので軽く走ったあと、再度残りのフルードでエア抜きします。実走してないので
インプレは後日ですが、取り回した感じ、軽い!やっぱり引きずっていた模様。跨りながら車体の
移動が辛くなっていたのは気のせいかと思っていたのですが気のせいではなかった模様。
直感の手応えですが、古い車体には手間に見合うパフォーマンス向上だと思います。

【工具】デイトナ:DAYTONA キャリパーピストン脱着ツール

【メンテナンス】デイトナ:DAYTONA ラバーシール組み付け剤
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