陰陽道の方位学:鬼門(2)


陰陽道の方位学、今回はその続編です。

さて、前回は鬼門=不吉という関係に疑問符を投げかけたわけですが・・・。

 

陰陽道では、時間と空間は区別せずに考える。

これは前回もふれた事ですが、これが重要な大前提になります。

つまり、それを局所的に「点」で見るのではなく、

全体のサイクルの中の一部として見る訳です。

 

この場合のサイクルと言うのは、陰と陽の

増大と消滅のサイクルの事です。

 

「鬼門」「丑寅」つまり「艮」というのは、陰気が極大で陽気が極小の状態と

前回も述べましたが、これは逆説的に考えると

陰気が極小へ向かう開始点であり、

陽気が極大へ向かう開始点である。

と、言うことです。

 

こういった「万物のサイクル」に基づく考え方は、

ほとんどの宗教や思想にあります。

「破壊と創造のサイクル」と言うやつです。

特筆すべきは、ほとんどの思想、宗教では、

「破壊」という言葉からくるイメージ、

「破壊=悪」とはせず、むしろ「創造的破壊」として歓迎している事です。

「木の誕生は種の死である」という言葉でよく表されますが、

まあ、新しい家を建てるのには古い家を壊さなきゃならんというとこです。

 

有名なところではインドの破壊神「シヴァ」の扱われ方が

一番分かりやすい例だと思います。

日本では、(ゲームや漫画等のイメージから)どうもシヴァ神を

悪神と思われがちですが、実際にはシヴァ神は「誕生と舞踏の神」として

根強く信仰の対象となっています。

とくに性交儀礼で有名なタントラ派等ではシヴァ神は

かなり重要な地位をしめています。

(映画「インディー・ジョーンズ」に出てた秘宝「シヴァ・リンガ」って、

「シヴァの男根」って意味だって知ってた?)

 

余談だけどインドの創造神「ブラフマー」というのは、もともと悪神で、

あまりにも素行が悪いので、100ある頭の1つを切り落とされたりしてる神サマです。

 

聖書でも、実際には破壊は神サマの専売特許で、

悪魔にはその権限はありません。

と言っても、「神サマって実は嫌なやつ」というわけではなく、

悪化した状況をリセットする、つまり創造的破壊な訳です。

ゲームとかやってて、よく使うテですね。

悪化しなければリセットする必要もない、って事かな。

 

仏教等でも、リセットというよりリフレッシュという形での破壊があります。

56億7千万年後だったかな。

 

前回述べたタロットカードの13番「死」も、言葉どおりに考えれば

「死」を暗示する不吉なカードかと思われがちですが、実際には、

「破壊と創造」や「死と誕生」を暗示するカードなのです。

 

だらだらと何が言いたかったのかと言うと、

前後関係を考慮にいれて考えましょう

という事です。

 

そう考えると、(私見ですが)

鬼門といわれる方位に神聖な物を配置したのは、

陰気を封じるためではなく、

これから現れる陽気を活性化させるのが目的

だったのではないでしょうか?

 

この考え方でいくと、もう一つ面白い事実がうかんできます。

それは、

鬼門に配置される神聖物と裏鬼門に配置される神聖物の質の違いです。

 

鬼門に配置されるものは、比叡山や東照宮など、一見して神聖物なのですが、

裏鬼門に配置されている物は、神田明神や日枝神社

名称は忘れたけど天海大僧正の寺、東京では乃木神社等ですが、

神田明神は平将門を奉る寺、日枝神社はスサノオの一族を奉る神社。

天海大僧正は徳川幕府誕生の黒幕であり、乃木神社は軍神といわれた

乃木大将を奉る神社と、

どれも奉る対象としては武闘家ぞろいという点です。

 

むしろ封じるべきは裏鬼門、つまり

陽気が減少へ向かう開始点であり、

陰気が増大へ向かう開始点である方位

だったのではないでしょうか。

 

どうでしょう?

なんか今回、不勉強ゆえか難解になっちゃった気がするけど・・・。

 

今回はこれで終わりです。


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