炭素14年代測定法って?


今回は趣向を変えて、

科学の時間ということです。

今まで何度か名前が出てきましたが、

そもそも『炭素14年代測定法』って何やねん、という事で・・・。

 

 

炭素14って何?

炭素というのは、基本的には6個の陽子、6個の中性子で構成されています。

で、これを炭素12と呼びます。

ですが、自然界にはまれに『出来損ない』の元素が存在しまして、

中には、中性子の数が7個だったり8個だったりするのもいる訳です。

炭素13とか、炭素14とか呼ばれるやつです。

これを同位体と呼ぶわけです。

 

陽子と中性子の数が合わないとバランスが悪いらしく、

炭素14は時間が経つと壊れてしまいます。

『β崩壊』というやつですが・・・。

で、ぶっ壊れてどうなるかと言うと、

陽子7個、中性子7個の『窒素』になってしまいます。

こんな感じで時間が経つと壊れてしまうものを

『放射性同位体』と呼ぶわけです。

 

『炭素14年代測定法』というのは、

この「時間が経つと壊れてしまう」炭素14を、

時計として使おうという測定法な訳ですな。

 

 

 

『炭素14』誕生の秘密

秘密というほどではないのですが、

『炭素14』はどうやって出来るのでしょう。

実は炭素14は成層圏で誕生します。

空気中には『窒素』がプカプカ浮いているわけですが、

(しつこいようですが、『窒素』は陽子7個、中性子7個)

この『窒素』に宇宙から降り注ぐ中性子(宇宙線の一種)が衝突します。

で、この中性子が、事もあろうに陽子1個を突き飛ばして、

自分がそこに居ついてしまうわけです。

で、陽子6個、中性子8個の

『炭素14』が誕生します。

この『炭素14』、ものすごく『酸素』と結びつく力が強く、

すぐにその辺の『酸素』とくっついて、『二酸化炭素』になってしまいます。

『二酸化炭素』というのは、空気の中ではわりと重いので、

ユラユラと地表まで降りてくる事になるわけですな。

 

 

 

『炭素14年代測定』

地球上の生き物というのは、基本的に呼吸をしています。

動物は云うに及ばず、植物も呼吸しています。

「ミミズだって、オケラだって、アメンボだって」というヤツです。

子供の頃、『血潮』のシオは『塩』だと思ってました。

そんな事はどうでもいいんです。

呼吸をするという事は、空気中の『二酸化炭素』も吸い込むという事で、

必然的に『炭素14版二酸化炭素』も吸い込む事になります。

こうして、『炭素14』が生命体に蓄積されていく訳です。

 

で、地球上の生き物というのは、基本的に死んだら呼吸しません。

「ミミズだって、オケラだって、アメンボだって」というヤツです。

と言うことは、そこで『二酸化炭素』の供給もストップする訳です。

そうすると、『炭素14』も減る一方となる訳です。

 

自然界に存在する『炭素12』、『炭素13』、『炭素14』の割合と言うのは、

ある程度一定の割合なので、

『炭素12』『炭素13』の量に比べて、どれだけ『炭素14』が減っているかを調べ、

そしてそれをチャートに当てはめて、どの年代がその比率に該当するかチェックする。

それが『炭素14年代測定法』

という訳です。

 

 

 

『炭素14年代測定法』の測定限界

物には限度というものがあります。

この測定法にも、測定できる限界があるわけです。

『半減期』という言葉を聞いたことがあると思いますが、

これは、放射性同位体が壊れ続けて半分の量になるまでの期間です。

これが、『炭素14』の場合だと約6000年です。

単純な話、『炭素14』が本来の比率の半分だったら、

「約6000年前」という事になる訳ですな。

 

「6000年で半分なら、12000年でゼロになるの?」

というと、そうではありません。

12000年後は、『第二半減期』と言って、

半分の半分、要は1/4の量になるのであります。

よくオカルト本などではこの辺を勘違いして、

測定限界は12000年くらいとか言ってたりしますが、

それは間違いです。

 

こうやってドンドン減っていって、最終的にはゼロになるのですが、

さすがにゼロになるまでは計測できません。

で、どれくらいの年代まで計測できるかと言うと、

計測する装置によりますが、

約5万年前くらいだそうです。

(『加速器質量分析計』という数億円もする大型装置を使えば、ですが)

 

 

 

『炭素14年代測定法』の問題点

この年代測定法は、基本的にはとても信頼性の高い測定法なのですが、

困ったことに、幾つかの問題点を持っています。

 

 

1.『有機体』以外の測定には不向き

「『炭素14』は呼吸によって生命体に蓄積される」と前述しましたが、

二酸化炭素を取り込まない(取り込めない)、

いわゆる『呼吸しないもの』に関しては、基本的に

「計測できないことはないけど、不向き」

なのだそうです。

たとえば土器などがそうです。

「え?土器とかもよく測定してるんじゃないの?」

と、思われるかも知れませんが、

あれは、土器そのものを測定した訳ではなく、

土器に残っていた穀物や動物の骨、食べ残し、

もしくは同じ地層から出土したそれらのものを測定しているのです。

 

『炭素14』が二酸化炭素として自然界に存在する特性上、

呼吸しない、つまり無機物に関しては圧倒的に『炭素12』や『炭素13』が多くなります。

この測定法が、これらの『比率』を元に年代を算出している関係で、

(実際には『炭素14』の量を計測しているのだけれど)

土器などをそのまま計測すると、

実際の年代よりも古い時代を算出してしまうそうです。

してみると、前に紹介した「アカンバロの恐竜土偶」や

「水晶ドクロ」の年代測定の結果は、

ちょっと怪しいです。

 

 

2.水生生物の年代測定は「ちょっと不便」

魚なども、やはり呼吸をしているので、

年代測定の対象になります。

ですが、空気中にある『二酸化炭素』を取り込むのと違い、

「『二酸化炭素』が水に溶ける」プロセスが間に入ってしまうので、

実際より古い年代を算出してしまうそうです。

ただ、コレにはちゃんと補正値が存在するので特に問題はないのですが、

前述した『加速器質量分析計』などを持っている研究機関に依頼して測定してもらった場合、

そういった研究機関は測定結果を補正しないので、

自分で補正する必要があります。

ので、返ってきた結果を鵜呑みにすると、

実際より古い年代になってしまうので気をつけましょう。

 

依頼するならね。

 

 

3.加工品はヤバイ

『象牙』の年代測定?もちろんOKです。

ただ、『象牙細工』が作られた年代を測定するのは割とNGです。

まあ、実際は『象牙』をとってから加工するまでに

100年とか1000年とか寝かせておくようなことはないので、

特に問題ないのですが、

これが水生生物『クジラの骨』とかになってくると、ヤバイそうです。

 

要は、「原料そのものの年代測定をするための測定法」って事かな。

 

 

4.太陽による影響

『炭素12』、『炭素13』、『炭素14』、

これらが自然界に存在する比率は基本的に一定、と前述しましたが、

実は常に一定ではないのが実情です。

『炭素14』は宇宙線によって作られるのですが、

太陽活動の影響で宇宙線の量も増えたり減ったりします。

もちろんそれは『炭素14年代測定』でつかわれるチャートにも反映されています。

その辺はぬかりがありません。

ですが、太陽の影響で増減する為、

チャートのグラフは、割とデコボコした線になってしまいます。

ので、まれに測定結果をチャートに当てはめようとすると、

チャートのグラフに該当する点が3箇所あったり5箇所あったりする場合があります。

測定結果に付記される誤差の値が大きい場合がたまにありますが、

それは、こういった事情によるものです。

 

 

 

今回はこんな感じでしょうか。

実際に遺物の年代測定をする場合は、

この測定法だけでなく

『年輪法』や『堆積法』など、他の年代測定と併用して行うのだそうです。

 

 

この話はひとまずこれで終わりです。


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