| | [軽い女の子三人のはしゃぎ。思いっきりはしゃいで] |
| ユウ | ねえ、聞いたぁ?ゆり子の彼氏って、超おナルなんだってぇ。 |
| カエデ | おまる? |
| 苗子 | おまるじゃないわよ、彼氏がおまるでどうすんのよ。おナルよおナル、ナルシストの事。 |
| カエデ | ふうん、で、おナルがどうしたって? |
| ユウ | はたから見るとね、その彼氏がゆり子をないがしろにしてる様に見えて、かわいそうって感じなんだけど、な |
| んかそう言う所がいいみたいよ彼女。 |
| 苗子 | で、そんなにカッコイイの?その彼氏。 |
| ユウ | それがぁ、味男らしいのよ。 |
| カエデ | 味の素? |
| 苗子 | 味男!見てくれじゃない男って事よ。でも、おナルじゃ味も何もないんじゃない? |
| ユウ | て言うかぁ、ゆり子が自分でそう言ったらしいわよ。 |
| カエデ | うわぁって感じよね。 |
| 苗子 | 勘違いしてるう。でもでも、勘違いヤローでも、好きな人がいていいわよね。私も彼氏ほしいーみたいな。 |
| ユウ | そうよねぇ |
| カエデ | ハァって感じ・・・・ |
| ユウ | これでもね、あたしって結構付き合った事あんのよ。そうねえ、秀人君でしょ、雅也君でしょ、伸二くんでし |
| ょ、石川くんに松井君にあきら君に、孝君に、正明君に・・・ |
| カエデ | 土屋君でしょ、元ちゃんでしょ、織田君にこうじ君でしょ、シバくんでしょ正樹君でしょ、広瀬君。あんたの |
| | お下がりばっかりだわよ私は。 |
| ユウ | あんたあたし押しつけたのと全部と付き合ったワケ、信じらんない。 |
| 苗子 | いいわね−、いっぱいいてぇ。 |
| ユウ | でもでも、苗子って口でしょっちゅう『彼氏がほしい』って言ってるクセに、紹介しても付き合わないし、浮 |
| いた話も聞かないわよね? |
| 苗子 | えー、だってぇ。 |
| カエデ | だって何よ、苗子ってどういう男が好きなのよ。 |
| 苗子 | えー、身長百七十センチ以上で、デブじゃなくって骨川筋男じゃなくって、頭がちっさくって、優しくて、お |
| もしろくって、年収5〇〇万円ぐらいの人! |
| ユウ・カエデ | キァァァ!(突然白ける) |
| ユウ | どんな人よ・・・。 |
| カエデ | それだけそろってる人を見てみたいわ。 |
| ユウ | あっちにいるかしら?こっちにいるかしら・・・・いないいない。 |
| 苗子 | いいわよ、明日っから気合入れてマジで探すんだから! |
| カエデ | そうね。アッシーでもネッシーでもヨッシーでも・・・イッシーてのもいたわよね。 |
| 苗子 | いたわよね──! |
| ユウ | 違う違う、何言ってんのよ!(呆れて、遠くの見る)アアアアーッ!イイ男! |
| カエデ | えっ?えっ?ドコドコドコ! |
| ユウ | ちょっ、ちょっと!こういう時だけ早いんだから・・・抜け駆けは許さないわよ!カエデ── ! |
| 苗子 | 裏切り者ォォォォォ!(台詞に被せて暗転) |
| (中で早乙女が誰もいない部屋を見渡している) |
| 苗子 | もう、どうして帰りがけにナンパされなきゃいけないの?あの二人。それも私がちょっと離れてる時に・・・ |
| ・超サイテ−。何よって感じぃ。(ドアを開けて家に入る)ただいま。 |
| 早乙女 | あ、お帰りなさいませ。 |
| 苗子 | て、言っても一人ぐらしなんだから、返事があるわけないか。こういう時にお気にの子とかが『やあ、おかえ |
| り。遅かったね』なーんとかいっちゃって『ううん、お友達とちょっと』て、言って『そうか、メシ出来てる |
| から、冷めないうちに食べろよ』やっだー!もう!これじゃあ同棲じゃないのよ。もう苗子ったら幸せ者! |
| 早乙女に気付く苗子 |
| 早乙女 | やあ、始めまして。 |
| 苗子 | ──────── 誰よあんた!泥棒、泥棒ね。助けて殺されるう!ちょっと御近所さん!ここに泥棒が!強 |
| 盗が!人殺しがああああ! |
| 早乙女 | わー!わー!どうしたらそこまで話しが行くんだ!違うんだよ。落ち着いて、落ち着いて、落ち着いて。 |
| 苗子 | 落ち着くのね、落ち着いて、落ち着いて(落ち着く) |
| 早乙女 | 落ち着いた?落ち着いたね。 |
| 苗子 | 落ち着いたわよ。そうよ、110番すれば・・・・ |
| 早乙女 | ちょっと待って!話を聞いて下さい、私は人ではありません。 |
| 苗子 | ───── 人じゃない?(すっかり落ち着く)幽霊!ユウレイだわ、ギボアイコ、織田ムドウ、前田ワケイ |
| !近づかないで、幽霊がうつるぅぅぅ! |
| 早乙女 | だから、落ち着いて下さい!私は夢の世界から来た者です! |
| 苗子 | 夢の・・・世界? |
| 早乙女 | はい、突然こんなイイ男がこんな汚い部屋にいたのですからびっくりなさったでしょうが、私はあなたの夢の |
| お手伝いをしようと思いまして。 |
| 苗子 | ・・・・とりあえず、その話を信じるとしてよ。夢のお手伝いってなにすんの? |
| 早乙女 | あなたの願望を現実にするのです。 |
| 苗子 | マジぃ? |
| 早乙女 | マジぃです。 |
| [しばらく不信気に早乙女を見る。早乙女は好感の持てるリアクションをして下さい] |
| 苗子 | いいわ、信じてあげる。 |
| 早乙女 | いやぁ、ありがとうございます。と言う事で、当分はここで御厄介になりますので、どうぞお構いなく。 |
| 苗子 | ちょ、ちょっと、なにが『と言うことで・・』よ!御近所って怖いのよ!変な噂がたったらどうすんの!お嫁 |
| に行けなくなっちゃうじゃない。 |
| 早乙女 | 御心配には及びません、近所にはあなたの兄と言う事にしてあります。 |
| 苗子 | 兄妹関係?あんたと私がぁ? |
| 早乙女 | はい、そっくりじゃありませんか(にっこり)それでは、お嬢さん。 |
| 苗子 | 苗子よ、音川苗子。 |
| 早乙女 | ああ、苗子さん、あなたの夢はなんですか? |
| 苗子 | 夢ぇ?夢ねえ(長く考える)やっぱ彼氏が欲しいな・・・みたいな。 |
| 早乙女 | 彼氏・・・ですか? |
| 苗子 | いくらなんでも、ムリよね、人に頼む事じゃないし、自分で見つけろって。どうせ私には自分からどうこうな |
| んて事できないわよ。放っといてよね! |
| 早乙女 | あなた、おもしろい人ですねぇ(しみじみ)。いやいや、本当にいいんですか?その夢で。 |
| 苗子 | え?え?叶うの?マジマジ? |
| 早乙女 | ええ、やれない事はありませんが。その夢を叶えてしまうと・・・・ |
| 苗子 | (すでに聞いてない)ラッキィ!とうとう私にも彼が・・・・カッコイイのにしてね。背は高いにこした事は |
| ないわ。車は二台以上持ってて、別荘なんかがオーストラリアにあって、でっかいプールとかでっかい池があ |
| って、そこに金魚を一匹だけ飼うの!名前もカッコイイのにしてね。鈴木とか佐藤とかありきたりの名前は止 |
| してよ。あ、そうよ、肝心のあんたの名前なんて言うの? |
| 早乙女 | 早乙女───── |
| 苗子 | 何よ、人間じゃないの、それも日本人。 |
| 早乙女 | いえ!降りて来る場所によって名前は違います。これは日本人用の名前でして、他にもアメリカ用や、ドイツ |
| 用。ユーゴスラビア用に、今話題のカンボジア用なんかがあります。個人的にはパプアニューギニア用が好き |
| なんですがね。 |
| 苗子 | でもまあ、早乙女ってのは悪くない名前ね。早乙女なんて言うの? |
| 早乙女 | 早乙女 金次郎です。 |
| 苗子 | あダサイ・・・金次郎?・・ダサすぎる・・・。 |
| 早乙女 | 早乙女 金次郎・・ダサイ。 |
| 苗子 | ちょっと・・・・ユウジロウ、コウジロウなら・・・金次郎?・・あダサイ。 |
| 早乙女 | あー、ダサイダサイ─── 。(コロッと態度を変えて)それでは夜も遅い事ですし、私はこれで休ませて頂 |
| きます。お休みなさい。 |
| 苗子 | ちょっとー、あんた私と同じ部屋で寝る気? |
| 早乙女 | いいじゃないですか、兄妹なんですから・・・・。 |
| 苗子 | 冗談じゃないわよ。ほらあっち、ベランダで寝てちょーだい。(蹴って追い出す) |
| 早乙女 | ベランダですか?せめて、トイレぐらいに───── 。 |
| 苗子 | ダメよ、夜トイレに行けなくなるじゃない。ほら、さっさと出てよね。 |
| [待ち合わせ場所・ユウとカエデがイライラしながら待っている。 |
| 少し離れた高い所で、権太郎とルイが様子を見ている。人間の目には見えていない] |
| カエデ | 苗子遅いねー。 |
| ユウ | 何やってんかしら。 |
| (早乙女、苗子入って来る) |
| 苗子 | あーあ、ちょっとその名前嫌よ私。ユウとカエデに馬鹿にされるわ。 |
| 早乙女 | どうしろって、言うんです? |
| 苗子 | 名前変えなさいよ。何かほらカッコイイのないの? |
| 早乙女 | 権太郎ってのはどうです?友達の名前なんだけど、この際借りても─── |
| 苗子 | ダッサーイ、あんたにはネーミングセンスって物がないの!(二人を見つけるとコロッと態度が変わる)ゴメ |
| ンねー、待ったぁ? |
| カエデ | (苗子の横に、不信な男を見つける)苗子、誰その人? |
| 苗子 | う、うん(チラッと嫌そうに見て)私の、お兄ちゃん。 |
| カエデ・ユウ | エエエ──ッ!うっそー、苗子にお兄さんがいたのぉ。信じらんなーい。 |
| 早乙女 | 金次郎と申します。いつも妹が御世話になっております。 |
| カエデ | キンタロウ? |
| 苗子 | 金次郎ですぅ。 |
| カエデ | [同時に内緒話しの様に] |
| ユウ | 金次郎だって、超ダサァ(ケラケラ) |
| 苗子 | どうしてあれほど名前を変えろって言ったのに! |
| 早乙女 | いろいろ考えたのだが、つい口走ってしまって・・・ |
| [カエデとユウが早乙女の品定めを始める] |
| ユウ | ところで金次郎さんは、今フリーですか? |
| 早乙女 | ええ、まあ今は・・・。 |
| カエデ | 彼女とかぁいたんですか? |
| 早乙女 | ええ、夢の世界の方で・・(苗子慌てて止める、殴ってもいいかもしれない) |
| 苗子 | 夢に出るほど好きだった人がいたのよね、ね? |
| ユウ | お仕事は? |
| 早乙女 | 夢をかなえる事です。 |
| カエデ | 年収はどのくらいですかぁ。 |
| 早乙女 | 年という物はないので分かりかねますが、一回ごとに人の魂を三十個ほど。 |
| ユウ | 車は何に? |
| 早乙女 | いつもは空を飛べますので車など・・。 |
| カエデ | どんな女性がタイプですかぁ? |
| 早乙女 | 肉体がない方が・・・ |
| 苗子 | お願いだから、これ以上こいつを喋らせないで! |
| ユウ・カエデ | 苗子のお兄さんって、おもしろーい。シブーイ。 |
| 早乙女 | あなた達の会話って、よく意味が分かりませんね。 |
| 苗子 | 早乙女さんが、わかんなくしてんでしょ! |
| ユウ | (気付いた様に) あ、いっけなーい。約束の時間忘れてた──。 |
| カエデ | あー、ホントだー。 |
| 苗子 | 何?誰かと待ち合わせ? |
| カエデ | この前の彼とね、どぇーとよ、どぇーと。 |
| ユウ | と、言う訳で帰らせてもらうわ。お兄さんもまた今度。 |
| カエデ | 苗子じゃね、バイビー。 |
| 苗子 | バイバーイ。(早乙女と顔を見合わせて)はあ、いい加減なもんね。あれだけ早乙女さんの石高聞きあさっと |
| | いて、彼が待ってるからバイビー・・だって。 |
| 早乙女 | あなたの彼もすぐに現れますよ。 |
| 苗子 | えー? |
| 早乙女 | (ちょっと振り返って)ちょっと、失礼。トイレに行って来ます。 |
| 苗子 | うん、行って来れば! |
| | [早乙女の心内。苗子が宏人と幸せにしている様を見ながら、早乙女の自信に満ちた気持ち] |
| 早乙女 | 彼はたしかにエリートである。彼だけでなく、彼の実家も資産家でほしい時にほしいだけの金を持つ男である |
| 金の事に糸目はつけない。外国生活の長かった彼は、女性を大切にする事も知っている。車に乗る時、食事 |
| の時、怪しげな所に至まで、徹底して彼女を大切に扱った。まさに何百分の一の確立であろう男を彼女に与えた |
| のだ。彼女はいつも帰って来ると私に言う、『もー、宏人さんったらすっごくすっごくおもしろくってぇ、あっ |
| たしお腹がヤメローって感じだったのよぉ。 今って不景気なんでしょ?なのに彼ったら一見お断りの店とかぁ、 |
| イタメシとかぁよく分かんないけど高そーな店に行くのよ、全部おごりで。これってみーんな早乙女さんの御陰 |
| みたいなぁ』半分は意味がわからない。しかし、いつも楽しそうで幸せそうである。私も満足できる仕上がりだ。 |
| しかし、彼女は知らないだろう。彼が世界で五本の指に入るほどあきっぽい男だと・・・。 |
| 今は知らないほうがいい、後のショックは、大きくなくては。今の内に離れられなくなる、忘れられなくなる。 |
| しかし私は・・。一週間・・・・二週間・・・・三週間・・・・・そして、一カ月。 |
| |
| |
| |
苗子の部屋・その日
| | [いつものように帰ってくる苗子。いつものように迎える早乙女] |
| 苗子 | (元気がない)ただいまぁ・・・。 |
| 早乙女 | お帰りなさいませ。今日は早かったですね、お食事はして来なかったんですか?もし何だったら、サボテンの |
| 炊き込み御飯作っておきましたから、どうぞ。 |
| 苗子 | ふえ〜ん! |
| 早乙女 | あ、あの・・・?もしかして、サボテンはお好きじゃなかったとか・・・。 |
| 苗子 | 自殺するっ!もう生きていけな〜い! |
| 早乙女 | ええ!? |
| 苗子 | 今日もね、彼と会ういつもの店に行ったの。絶対遅れてきた来たりしない宏人さんが、今日はぜんぜんこなく |
| って。それでも私二時間待ったのよ。そうしたらやっとあの人来て、座るやいなや『好きな人出来たんだ。だ |
| から別れような』って、コーヒー飲んで・・・・はい、終わり。 |
| 早乙女 | (独り言で)そうか、今日だったんだ・・・・。 |
| 苗子 | 何か、服も靴も口も真っ赤っ赤な女の人が、宏人さんに手ぇ振ってて、彼ったらそっちの方に行っちゃって、 |
| そう!私、二人分のコーヒー代払ったのよ! |
| 早乙女 | ・・・はあ。 |
| 苗子 | 冗談だと思ったから、宏人さんの家に電話したの。そしたらね、めちゃめちゃ冷たい言い方で『あなた、誰で |
| すか?』だってぇ。 |
| 早乙女 | (独り言で)しかし、私の筋書きでは、この人は・・・。 |
| 苗子 | もう生きていけなーい、自殺する!そうだあそこなら死ねるかも・・・・(立つ) |
| 早乙女 | ちょっと待って、どうしてここに戻って来たの? |
| 苗子 | え?・・だって早乙女さんがいると思ったから・・・。 |
| 早乙女 | 私・・・・が? |
| 苗子 | いつも報告してたじゃない。今日御飯おいしかったよ、宏人さんって優しい人だよ・・・って。報告してたじ |
| ゃない。・・・・・本当のお兄ちゃんみたいに思っちゃってたのね。 |
| 早乙女 | え・・・。 |
| 苗子 | 早乙女さんのお兄ちゃん・・・結構嫌いじゃなかったよ。いろいろありがとう、死んだら、早乙女さんのいる |
| 世界に行けるのかな・・・(出てく) |
| [複雑な気持ちの早乙女。苗子と出会ってからの事を思い出し・・・決心して、部屋を後にする] |
| | [どこかのビルの屋上もしくは連絡通路・この様子も離れた所からルイと権太郎が見ている] |
| 苗子 | 単純だと思われるかもしれないけど、こうでもしなきゃ彼への思い忘れられないのよ。顔も |
| よくないし、頭も悪いし、世の中なめ切ったような人間にしか見えないだろうけど、あたし |
| はあたしなりに一生懸命生きて来たつもり。自分の行動に自信があったわ。自分から恋をし |
| ようと思わなかったのは、そんな自信が崩れるのが怖かったからよ。自分が選んだ人間に、 |
| 間違いがあるのが怖かったの。いつもうわべの付き合いで、彼氏がほしいなんて言ってたけ |
| ど、早乙女さんが本当にかなえるなんて思わなかった・・・・・・・。 |
| 自分のケリは自分でつけなきゃ・・・・。 |
| |
| [飛び下りる寸前。カエデとユウが飛びついて止める] |
| |
| ユウ | 苗子! |
| カエデ | きゃあ!やめてよ! |
| 苗子 | (びっくりして)ユウ、カエデ!? |
| ユウ | なに考えてるのよ! |
| カエデ | 死んだら、死んだらどうすんのよ! |
| 苗子 | 離して、あたし死ぬんだから。 |
| ユウ | 死ぬなんて言わないで。一カ月前に出会った男の為に、どうして終わらなきゃいけないの。 |
| 苗子 | あたしにはズーッと昔からいた様な気がしたわ。一生に一度の様な気がしたわ。もう終わりなのよ、恋も人生 |
| も───── |
| カエデ | じゃ、あたし達は何?一緒に御飯食べたり、噂話したりしたのは何?あんたにとってはただの通りすがりの物 |
| だったの?死ぬ前に相談も出来ない様な物だったの? |
| 苗子 | え・・・・。 |
| ユウ | たった一回はずれクジ引かされただけで何よ。 |
| カエデ | そうよ、あたし達なんて、何回はずれクジ引かされた事か。どうしてもっと前向きに考えられないのよ。 |
| ユウ | あたし達今までなんで世の中を軽く歩いて来たと思ってるの?世の中には深く考えちゃいけない事とか、知ら |
| なくてもいい事とか沢山あるからでしょ? |
| カエデ | 特にこう言う恋なんかわね、一番楽にいかなきゃ持たないものなのよ。また探せばいいじゃない、苗子だった |
| ら、きっと大丈夫だよ。 |
| 苗子 | ユウ・・・カエデ。ふえーん。 |
| ユウ | よしよし、やっと分かってくれたか。 |
| カエデ | もう死のうなんて、考えないでね。 |
| |
| ルイ | あれあれ、あの子生きちゃったぜ。早乙女でも失敗する事があるんだね。 |
| 権太郎 | 千回無失敗がいかに難しいかって事だな。 |
| |
| 苗子 | でも、どうしてここにあたしがいる事が分かったの? |
| ユウ | それが、ねえ。 |
| カエデ | うん、あんたのお兄さんが教えてくれたの。 |
| 苗子 | え・・・ |
| 権太郎・ルイ | え!? |
| ユウ | それが変なのよ、どう考えても人が登れそうにない所に金次郎さんいてね。すっごく冷徹な顔で『苗子を救っ |
| てほしい・・』って、苗子の事言ったの。 |
| 苗子 | 早乙女さんが? |
| カエデ | ねえ、金次郎さんって、本当に苗子のお兄さん?あたし会った時から思っていたんだけど。 |
| ユウ | うん思った。ほら兄妹ていっても、兄弟愛の表現っていろいろあるじゃない。いっくら仲の悪い兄弟でも、二 |
| 人でいて自然じゃない。あんた達にはそれがなかったよ。 |
| 苗子 | ・・・・そうよ、そうよね。あって一箇月の兄貴じゃ、無理だよね。 |
| カエデ | 苗子? |
| 苗子 | うん、実はね─── |
| [早乙女の素性を話す。ユウ、カエデも驚いたような信じらんなーい と言う身振り。その間、以降の台詞及び芝居 |
| をかぶせる。] |
| |
| 権太郎 | 早乙女が・・・・そんなはずはない。 |
| ルイ | あいつが他人の仕事を手伝って、そのミスの穴埋めをする事はあるが。自分から仕事失敗させるなんて。 |
| 権太郎 | それにあいつには、築き上げてきた実績の最後を飾る仕事だったんだ。これが成功すれば、全てがいい方へ向 |
| かったのに。 |
| ルイ | それだけじゃない。死ぬ人間を故意に生かせたりする事は、重罪だ。あいつがそれを知らないハズはない。 |
| 権太郎 | そうだ、あいつらが嘘をついてるんだ。 |
| ルイ | そうに決まってるさ。(下界に下りて、三人の所へ行く)おい、そこのバカ三人! |
| [突然姿を見せた二人にびっくりする] |
| ユウ | きゃあ!な、なによ誰よ! |
| 権太郎 | お前らいくら脳が足りないと言っても言っていい冗談と悪い冗談があるんだぞ。早乙女がその女を救うワケが |
| ないじゃないか。 |
| ユウ | 間違いないわよ。早乙女さん?これでも一度見た男を見間違えた事ないのよ! |
| カエデ | そうよ、絶対、絶対あれは早乙女さんよ。明日のお昼御飯かけてもいいわよ。 |
| ユウ | え?え?何おごってくれるの? |
| カエデ | 学食のカレーライスなんてどう? |
| ユウ | えー、私あそこの食べておなかこわしたからパス。 |
| カエデ | そうなのー? |
| ルイ | あいつがそんな事をするハズがない!いいか、音川苗子、お前はここで死ななければならなかったんだ。 |
| 苗子 | ・・・・・なによそれ・・。 |
| 権太郎 | 私達は夢の世界から、人の最後の願いをかなえる為に降りてくる者。 |
| ルイ | 人にはある願いが、死ぬキーワードになる。それがかなった時、その人間は死ぬ。 |
| 権太郎 | お前達も知ってるだろう。兄弟がみんな集まった後に死ぬ者、いつも蒲団に寝てばかりだった者がいきなり仕 |
| 事をしていて行ってしまったり、おいしい物をたらふく食べた後にしんでしまう者。これらはみんな最後の願 |
| いとして、我々の仲間がかなえているものなのだ。 |
| 早乙女 | あなたの場合、彼氏がほしいと言う願いが、死のキーワードだった。その願いがかなえられた一箇月後。彼氏 |
| を失ったあなたは、ショックに耐え切れずこの連絡通路から飛び下りて死ぬ・・・そういうはずだったんです |
| 苗子 | ・・・・・早乙女さん! |
| 権太郎 | 早乙女!お前本気なのか?本気でこんな女の為に・・・・! |
| ルイ | お前の目指していた上層部への道が閉ざされる事になるんだよ。 |
| 権太郎 | それに、死ぬべき人間をお前の力で生かせてしまう事が、どれほどの重罪か知らない事はないハズだ。 |
| 早乙女 | 分かってるよ。 |
| ユウ | あたしにはよく分かんないけど、とにかく逃げよう。 |
| カエデ | そうだよ、苗子早く。 |
| [苗子をつれて逃げようとする] |
| 権太郎 | とにかくあの子は死ななくては、いけないんだ。 |
| ルイ | お前ができないんなら、私達がやってやる。 |
| [苗子を殺そうと権太郎とルイが飛び出そうとする] |
| 苗子 ┌ | ちょっと待って! |
| 早乙女 └ | 待てよ! |
| [苗子と早乙女以外の動きが止まる] |
| 苗子 | ねえ、早乙女さん。あたしはここで死ぬ事になってたんでしょう?それってあたしの寿命ってヤツで、もう決 |
| まった事で、避けられない事なんだよね。夢の世界でどうなっちゃうの?頭悪いから考えつかないんだけど、 |
| 死なないといけない人間が生きてて、それを助けてくれた早乙女さんが悪くなっちゃうなんて、変だよね。 |
| あたし、死んでもいいよ? |
| 早乙女 | 今まで私は九九九人の願いをかなえ、それが死んでいくのを見た。私の送った人達は皆、幸福の中で死んでい |
| った人ばかりで、私もこの仕事が良い為の事と信じていました。でもあなたは違った。私はあなたが悲しみの |
| 中に幸福を見つけて死んで行くものと、信じていた。あなたがこの一箇月、毎日毎日私に彼氏の話をしていた |
| 時(表情で訴える)、そしてさっきあなたが部屋で言った時、今。あなたはもっともっと幸せになるべき人だ。 |
| まだ死んではいけない人なのです。これは、誰にも譲れません。 |
| 苗子 | あたしは今まで好き勝手に生きて来たわ。 |
| 早乙女 | 私は人に夢をかなえて差し上げる事を生き甲斐として生きて来ました。 |
| 苗子 | これからも、きっと面白くなくて無意味な生き方をするわ。 |
| 早乙女 | これからは、人間をもっとよく知りたい。たとえ夢の世界から消されても。 |
| 苗子 | 早乙女さんは、いいお兄ちゃんだった。 |
| 早乙女 | あなたは、それを気付かせてくれた人だった。 |
| 苗子 | だからあたし、本当に死んでもいいよ。ホントの最後の夢をかなえてくれるなら。 |
| 早乙女 | もしかしたら、あなたに生きてほしいって願いは、私の死のキーワードだったのかも知れませんね。 |
| 苗子 | 早乙女さんが、本当のお兄さんになってくれる・・・・。 |
| [早乙女と苗子それぞれ自分の友人の方へ向き直る。丁度背中を向け合う状態] |
| |
| 早乙女 | さて、2人共。オレはどんな罰でも受けに、夢の世界へ帰ろうと思うのだが。 |
| 権太郎 | ・・・・・・付き合う以外、方法はないか! |
| ルイ | あたし言い訳なら得意。 |
| 早乙女 | アテにしてるよ(微笑)。 |
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| ユウ | 苗子、今度は自分で男見つけるんだよ。自分で自信を持って、見つけるんだよ。 |
| カエデ | 見つけるまでなら、あたし達も協力するからね。 |
| 苗子 | うん、ありがとう。 |
| | [お互い振り返って、カッコよく] |
| 早乙女 | それじゃ、いつか、な。 |
| 苗子 | うん、またね。 |
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| [それぞれの運命に向かって去ってゆく] |
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