危険な遊戯/ハマースミスの6日間

原題:Chicago Joe and the Showgiri
製作年:1990
監督:バーナード・ローズ
脚本:デビッド・ヤロップ
キャスト:キーファー・サザーランド,エミリー・ロイド,パッツィ・ケンジット他

          
By Brendan
内容:1944年10月、ロンドンのハマースミス地区。1人のアメリカ兵と1人のショー・ガールが出会った。アメリカ兵の名前はリッキー・アレン、実は自分はアル・カポネの子分だと言い、人は彼を”シカゴ・ジョー”と呼ぶ。ショー・ガールの名前はジョージナ・グレイソン、ハリウッドスターを夢見る少女であった。映画で見たギャングの情婦に憧れていたジョージナは、リッキーをそそのかし悪ふざけや盗みを楽しんでいた。リッキーは町で見かけた娘ジョイスとも付き合っており、そちらの顔は任務に勤しむ好青年であった。本当は気が弱いリッキーは、ジョージナにバカにされるのを嫌い、2人の悪ふざけはどんどんエスカレートして行く。ある日、道に迷った女性を見つけた2人は、その女性が着ていた毛皮のコートを奪おうと計画し、その女性を山の中へ連れこみ殴り殺してしまう。喜びはしゃくジョージナに対し、怖気付くリッキー。さらなるスリルを求めるジョージナにリッキーは何とか止めようと試みたが、ジョージナが強盗をたくらんでタクシーを停めるとリッキーも覚悟を決めた。そしてそのタクシー運転手を殺害してしまった夜から、リッキーの心はジョージナから離れて、ジョイスに安らぎを求めるようになったのである。

感想:第2次世界大戦中に起きた実在の事件[ハルトン/ジョーンズ事件]を扱った作品です。当時イギリス人とアメリカ人の若者が引き起こしたこの事件に、アメリカとイギリスでは大論争になったそうです。しかし、この作品はそういった解釈は一切排除され、起こった出来事のみを淡々と見せています。犯罪の計画はまるでお粗末、普通に考えても「そりゃマズいでしょ」と思うような事をしているので、とても許しがたい行為でも「所詮は子供の悪ふざけの延長」に見えて”怒り”よりも”虚しさ”を先に感じました。まだ夢を叶えられるのではないかという希望もあり、しかし現実の厳しさも身をもって知り始めたぐらいの年の2人がたまたま出会ってしまった。そして現実逃避の方向が一緒だったために最悪の事態に陥ったという気がします。最近日本でも若年層の凶悪犯罪に大人達が「理解不能」と頭をひねっていますが、この作品を見て、少しだけ”なぜこういう事件が起こってしまうのか”という背景が分かったような気がしました。

この作品のキーファーは黒髪です。それが一層顔立ちの良さを強調している為、フェロモン出まくり、実に素敵です。若い頃から、どちらかと言うと「若いけど大人っぽい印象を持つような役」が多かったキーファーですが、この作品では「大人ぶっているけど中身はまだまだガキ」というイメージを持ちました。ショーガールと普通の家庭のお嬢さんの2人と別の顔で付き合っているので、両極端な人格を演じてますが、2重人格にならない所はキーファーの役者としての底力の所以でしょうね。

キーファー:「当時の事件資料を読んで、あたかも共犯者の女は彼の犠牲になって道を誤ったかのように書かれて世間の注目を集め、彼は悪の根源のように扱われているのを知った。でも実際はそうではなく、もっと複雑だったと思う。映画の中でこの違いを埋めて、真相を追究したいと思う」
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