私は退職後の人生は「余生」ではなく、会社という呪縛から解き放された全く違う自由で
健康的な人生だと思っていたし、そうしたいと考えていた。
「会社を辞めたら何をするか」ではなく「会社を辞めてこれがしたい」と考えるようになった。
5年ほど前から畑を借りて家庭菜園を楽しんでいた。住んでいる神奈川県茅ヶ崎市でも
年老いて農作業ができなくなり、息子はサラリーマンで農作業をしないで放置された畑
が点在しており、都会でも結構そんな畑を借りることは容易にできた。
一日中事務所の中での仕事が多い中で、休日は太陽の下で風を感じながらの畑仕事
はとても気分の良いものであった。
野菜を収穫するときのあのわくわくする喜びと、採り立ての野菜がいかに美味しいもの
であり美しいものであるかを知った。採り立てのトウモロコシのあの甘さ、木なりで熟し
たトマトの美味しさ、キュウリや茄子のチクチクする細かいトゲなど、スーパーで売って
いる野菜とは全く違う別物がそこには存在した。
大量に採れた野菜を近所に配ったり、親戚に配送したり、それでも余って大量のストッ
クがある「豊かさ」もここにはあった。
そんな中で、退職したら田舎暮らしをして大自然と太陽のもとで体を動かした生活をした
いと思うようになった。
失業保険は定年・自己都合退職だと約半額となり、年金は5%減となっており、制度の
破綻からその内もっとひどいことになると予想される。
また、今後公共料金は値上げされ、消費税、健康保険料は値上げされ、年金はさらに
減額支給となり、場合によっては銀行破綻による預金の減額、生命保険会社の破綻に
より個人保険の減額などが予想される。
現に私は千代田生命が破綻し、会社の共済年金が千代田生命扱いだったことから年
金支給額が10%減額されるという予想外の出来事をすでに経験している。
そんな中で、世の中の動向に翻弄されるだけの弱者にはなりたくなく、それらに対抗す
る手段を持ちたいと考えて、田舎暮らしによる生産的な生活を考えるようにもなった。
昨年より長野県立科町に気に入った土地を見つけて、21坪の輸入住宅の山荘を建
て、約200坪の畑を耕す生活に入った。
高原野菜の生産地の真っ只中にいて、近くの農協の直売所で買った方が自分で野菜
を作るよりも遙かに安く買えるが、なににもまして体を動かす健康と食の安全と新鮮な
ほんまもんの美味しい野菜を食べられるかけがえのないものが得られた。
遠くに美しい浅間山を望み、気持ちの良い汗と標高の高い冷涼な気候と足下から昇る
太陽で目覚める生活に、充実感いっぱいに過ごしている。
2000.10.30山荘完成。 電柱の電線が終点です。