田舎暮らし雑感
田舎暮らしの楽しみ

なんと言っても春の山菜採りから始まる、自然との係わり合いが楽しい。
移り変わりの美しい自然の中の散歩は飽くこともなく、野生の狐や鹿と出くわしびっくりすることもある。狐は大きな尻尾を立てて何度も振返りながら逃げていく。
最近は茅ヶ崎でバードウオッチングの手ほどきを受け、田んぼの「たげり」や鴨、美しいカワセミを見てはまってしまった。長野での楽しみがまた増えた。
夏は登山やキャンプに事欠かない。3000m級の乗鞍岳の頂上は、眺望の美しさが忘れられない経験となった。
菅平高原へドライブし、早稲田大学を中心とするラグビーの練習試合を、それこそ「砂被り席」で夕暮れまで飽きずに見物する。ラグビー好きにはたまらない一日となる。

   乗鞍岳頂上          上高地         霧ケ峰高原

あとはなんと言っても温泉である。近くに立科町営の権現の湯があり、我が家の内風呂のようにしてしばしば浸かっている。有名な温泉場も近く、春日温泉や別所温泉はさすがに歴史もあり味わい深いものがある。
また、望外の楽しみとしての近所付き合いがある。都会とは違った個性的で生活に根ざした知性豊かな人が多く、パワフルに堅実に生きている。
心和む交流から、大きな元気をいつももらっている。

田舎の文化

田舎は食文化の超先進国である。こちらに来て食材の巧みな活用と保存方法の合理性に驚いた。
近所から頂く漬物や煮物はどれをとってもおいしい。信じられないほど時間と手間をかけた今では貴重品であるものが多い。手作り味噌はなんと驚いたことに麹から作っている。
おいしく頂いた後、必ずレシピを聞くことにしているが、正確な分量を聞けたことはなく、経験と勘に頼っているのは残念。
毎年頂くプルーンのジャムは絶品である。女房も刺激を受けて、梅ジャム、リンゴ、桃、みかん、桑の実、ルバーブでジャムを作っている。我が家の朝食はバライティに富んだ豊かなものとなっている。
春の一時期にのみ採れる白樺の樹液は、他にたとえ様もない甘さと清冽なこくがある。
また、女房が作る梅ジュースやシソジュースは焼酎に入れて飲むと、下戸の私もついのみ過ぎるほどうまい。ガマズミで作る酒は驚くほどきれいな赤色で、天然の材料から作る、考えたら今時贅沢なものといえる。

山荘に来たばかりの頃に、突然一枚の書類をもらった。その内容は、


       通常道路普請割込

   期日  ○月○日
        午前○○時より○○時まで
   1. 勤務は○○時より○○時まで必らず従事すること。
   2. 出不足の場合は 3,000円を徴収するものとする。
   場所  ○○から○○まで
   
   注)従事するものの名前が列記されている。

                      宇山区長 印 


いわゆる道普請というものだ。最近は人を使ったことはあるが他人から頭ごなしにこの様に命令されたことはない。しかも罰金まで取るというのだ。区長という地方行政機構にない役職の人が、どんな法律に基づいて命令し、どんな権限で罰金が徴収できるというのか考え込んでしまった。
趣旨は、部落内の道路の草刈をしてきれいにしよう、というものだ。このことには異存はないし、このような努力で里山の環境が保たれていることは理解している。
その崇高な理念を実施する呼びかけの書類としては、いささか疑問を感じるし、カルチャーショックを感じるものである。
ちなみに私は道普請には、必ず参加している。里山を何時までも自然の宝庫としたいからである。