1. マツダ地獄〜の続き

そして10年と3ヶ月(2004年6月現在)が過ぎた。走行距離18万5000km。いままで裏切られたと思うような不満はほとんどなし。V6の為燃費が少々悪いことと、低速トルクが細いこと、小物入れが少ないことぐらいか。サスタワーの張り出しの為トランクが幅方向に少々狭いことは購入前に確認済みだったが、購入を諦める理由にはならなかった。低速トルクに関しては後に入手したオイル添加剤とのマッチングがよく、十分過ぎるほど改善された。高回転はヨダレが出そうなくらい良く回る。脚回りとボディがしっかりしているおかげで車の重さを感じさせないハンドリング。官能に働きかけるエンジン音。そしてこの車の事を知れば知るほど、目から鱗、という事が何度かあった。例えばリアサスペンション。小型車向けでコストの安いストラットサスペンションは動きのスムースさという点で、マルチリンクやダブルウィッシュボーンに負けてしまうが、ラテラルリンクを思いっきり長くしてストローク半径を大きくしてやればその差を少なくする事ができる。どうしていままでどこもやらなかったんだろう。実際、この車の後ろ足は高剛性ボディと相俟って下手な新世代サスペンションをも凌駕する動きを得ている。荷重に対してリニアに反応するおかげでコーナリング中の道路がギャップだらけのドタバタ路面であっても姿勢が乱れない。それは今まで、いろいろ乗るまでは当たり前の事と思っていたが・・・
最近になってこの車のチューニングにポルシェの技術供与があったことを知り、ますます手放すのが惜しくなってしまった。そもそも国内では不人気車だが、強豪なライバルが多いヨーロッパでは逆に健闘している。車の内容が良くて、周りで乗っている人が少ないのは、よくよく考えて見れば喜ばしい事である。しかしすでに11年目、一昨年くらいからトラブルもあり、修理用部品も続々と生産中止になっている模様で、そろそろ次の購入を考えなければならない。
実は今までも何度か買い替えを考えた事もあたがなかなかこれを上回るいい車がなかった。値段が高ければそれなりに購入動機も大きくなければならない。ランティスの意思を引き継いだかに見えた復活カペラ(スポーティな最上級グレード)は話にならなかった。他に試乗した車はフォレスター、R34スカイライン、フロントミッドシップという奇形を捨てて正常進化したインスパイアなど。どれもいい車だったが、いずれも値段に見合う購入動機は見当たらなかった。あるいはこれまでの価値観を捨ててミニバンやSUVで新しい生活を楽しむか。オデッセイなどは車の成り立ちが乗用車にきわめて近く、それまでのハイエース等に比べれば運転感覚は乗用車そのものであり、失うものも最小限に抑えられるかも知れない。・・・と思った矢先、これも他人の同車を運転する機会があり、きわめて分かりやすい運転感覚だったが、自分の車のつもりで山道を運転したらあるところで限界を越えてしまった。「やっぱり長く付き合えば欲求不満になるか・・・」
我がランティスは既に、マツダ車でなくても査定ゼロは免れない車齢に達している。言わば二度目の脱・マツダ地獄の機会を迎えている訳だが、ここへきて最近非常に気になる車が出て来ている。一つはRX-8、もう一つはアテンザである。両者とも言わずと知れたマツダ車で、前者は世界で唯一のロータリーエンジンに熟成を重ね、しかも4人乗りで庶民的価格を実現。改良されたとはいえ依然燃費ではレシプロに負けるので、環境意識の高まりからいずれは無くなると言われたロータリーエンジンだが、水素やエタノールなど様々な代替燃料が使えるという事で再び注目を集めている。後者はカペラの後継となった4ドアセダン。3ナンバーとなり価格帯や車格はアコードに近いが、至るところでアコードより貧乏臭さが出るものの、ランティスを彷彿とさせる、開発者の「こんな車が作りたい」というメッセージが大いに伝わってくる車である。お金をかけずにバランス感覚と創意工夫でヒット作となった初代デミオにも何か通じるものがある。貧乏だから夢があるのか、私はこんなモノ作りが好きである。ランティスは私と同じような15万km超というユーザーが多いから、今回買い替えを考えている人は多いだろう。脱マツダ地獄を阻む計算されたタイミングなのだろうか。
ただ、難点もいくつかあり、某外車も候補にあるので、まだこれが決定打という訳ではないが・・・
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