2000年版           


☆DVDの本領発揮、LIVE映像!

 プレイステーション2登場以来、レーザーディスクに代わって映像文化の世界を席巻しているDVDですが、私の好きな分野である

クラシックの映像ソフトに関する限り、それほど多くの種類が流通しているとはいえない状況です。特にLDで発売されていた作品は

そちらの契約の関係があるのか、出足が遅いのが目立ちます。

 一方で、まったく新規の映像ソフトは輸入品を含めて店頭で見かける機会も増えてきました。しかもこれらのソフトは収録された時期

が新しいものも多く、DVDならではの鮮明かつ緻密な映像を楽しむことが可能です。もちろんその気になれば光デジタル出力を用いて

さらに高音質で音楽を楽しむこともできるのですが、こちらは私の機器の都合(光デジタル入力端子が足りないのです!)で面倒なため

に、なかなか実現できないのですが...この狭い部屋にオーディオ機器を増設するのはちょっとムチャです。

 最近コントラバストロンボーンを買ったことから、ぜひこの楽器が活躍する曲を聴いてみたいと思いましたが、特殊楽器中の特殊楽器

だけに?そう簡単に見つかるわけでもありません。特にコントラバストロンボーンの活躍の場がヴァーグナーとシュトラウスという、2人の

「リヒャルト」の手による劇場作品や、イタリア・オペラ、もしくはいわゆる東ヨーロッパのバストロンボーンに限られているため、演奏の

様子をうかがうことはかなり難しいといわざるを得ません。

 私の大好きなオーケストラであるドイツの至宝、シュターツカペレ・ドレスデンが1998年9月22日にドレスデンのゼンパー歌劇場で

行った450周年(!!)記念演奏会の様子を収録したDVDが輸入盤で発売されました。指揮はジュゼッペ・シノーポリです。

(ARTHAUSMUSIK:100029)

 このDVDにはヴィヴァルディ:ドレスデンのオーケストラのための協奏曲ト短調、ウェーバー:祝典序曲(ラストに現在のイギリス国歌

の旋律が勇壮に奏でられます)、リヒャルト・ヴァーグナー:「リエンツィ」序曲、リヒャルト・シュトラウス:アルプス交響曲という、

金管楽器奏者にとっては実に楽しめそうな曲目が収録されています。

 さすがにリヒャルト・シュトラウスにゆかりの深いオーケストラだけあって、アルプス交響曲は聴きごたえ、見応えともに充分でした!

これだけのワールドクラスのオーケストラがアルプス交響曲のような大編成の曲を日本で演奏する機会はほとんどないでしょうから、その点

でも貴重な映像です。

 その中で、なんと4thトロンボーンが楽譜上には指定のないコントラバストロンボーンをバストロンボーンと掛け持ちしているではあり

ませんか!確かにアルプス交響曲の4thトロンボーンは通常のトロンボーンのペダル音域が頻繁に登場するので、いったいどうやっている

のか?と思いましたが、そこはさすがにコントラバストロンボーンの需要が多い歌劇場のオーケストラだけあって、特殊楽器を特殊と思わせ

ない効果的な演奏をしていました。スライドアクションといい、音色といい、本当に勉強になりました!

 こうなると、演奏会形式のオペラ上演のDVDでもあれば演奏する方にとってはいい勉強になるのですが、やっぱり舞台あってのオペラと

いうのがDVD購買層の現実だと思いますからなかなか実現は難しそうです。

 (2000.12.4)


☆ギュンター・ヴァントの音楽とブルックナー

 インターネットが本格的に普及したここ数年のうちで今年ほど、このネットワーク社会を便利だと思ったことはありませんでした。

10年ぐらい前なら、ちょっと値段の高いクラシック音楽のチケットならそれほどの競争もなく入手できていたのですが、なぜか5年ぐらい

の間は、目当てのチケットはそれがいくら高価でも入手することが困難になっていたのです。そのためおのずとコンサートホールからは足が

遠のきワールドクラスのオーケストラを聴く機会が激減してしまいました。

 今年はベルリン・フィルもウィーン・フィルも来日するという当たり年になりましたが、その2つのオーケストラのコンサートチケットを

取る気力もなく、うだうだとした日々を過ごしてきました。もっともこれにはプログラムもさることながら、どんな指揮者が指揮をするのか

ということも大きく関与しているのですが。

 そんな気合いの入らない私を一つのニュースが揺さぶりました。「ギュンター・ヴァント来日公演実現!」です。満を持してこのチケット

争奪戦に加わったつもりだったのですが、あえなく撃沈されてしまいました。しかしYAHOO!オークションでそんなに高くない価格で

落札できたことはまさにネットワーク社会での幸運でした。実際チケット入手にあんまり手間がかかっていないですからね。

 そして11月14日、東京オペラシティ・コンサートホール タケミツメモリアルで1990年以来10年ぶりのヴァント御大の音楽に

触れることができました。プログラムはシューベルトの「未完成」とブルックナーの交響曲第9番(同じく未完成)という、なにか意味あり

げな2曲です。10年という年月は確実に彼が老いてしまったことを感じさせるものでしたが(彼には指揮台までの道のりに介助が必要

だったのです。そして椅子も用意されていました。)いったん指揮台の上に立った(椅子は楽章間の休憩用でしかなかったのです。)

ヴァントはさっそうと長い腕と指揮棒を駆使して本当に大きな、そしてよどみのないはつらつとした音楽を奏でていくのです。それだけでも

感動をおぼえるのには充分でしたが、ヘタな若手指揮者が鈍重な音楽を作ろうとして失敗する(つまり作曲家の意図とは正反対のアプローチ

をしてしまう。)のとは対照的に、作曲家が表現したかったと思えるテンポで音楽が演奏されるのを目の当たりにして、なにか安心感のよう

なものをおぼえました。決してスリリングではない、確実な音楽表現はここまでこないと聴くことはできないのか?という気持ちにもなり

ました。

 プログラム的にはあまり華のないものでしたが、やはりブルックナーは格別な体験を与えてくれました。「ヴァントのブルックナー」と

くれば、ほぼ確実な線だとは思っていましたが、実際にその音楽表現に触れるともう夢中になることができました!久々にゾクゾクとくる

感じを味わったり、終楽章での弦楽器の奏でる下行音型によるコラールの、あまりの美しい響きに目頭が熱くなったりと、自分の若いころ?

を思い出させる音楽体験となったのです。(ブルックナーを聴くと時々懐かしい気分になるのは自分が年をとった証拠でしょうか?)

 北ドイツ放送交響楽団はオーケストラとしてのレベルは高いのですが、必ずしも万全な状態ではなかった(特に重要なトランペットが残念

でした...)ようでした。そんな中でも、指揮者と共に全力を出してブルックナーに立ち向かう姿はすさまじささえ感じました。同時に

ブルックナーの音楽の難しさとすばらしさを再認識させてくれました。ブルックナーといえば管楽器、特に金管楽器のコラールの壮大な響き

を第一に連想しますが、第9番は前出したとおり弦楽器のコラールが本当に美しく響く(可能性のある)音楽です。さすがにブルックナーが

神に捧げた曲だけのことはあります。ヴァントの演奏はこれらをすべて堪能させてくれたのです。ホント、しびれました。

 ヴァントは1912年生まれですからもうかなりの高齢です。これからあと何回彼の演奏に接することができるかはわかりませんが、今

まで2回もその機会に恵まれた運のいい私としては、もし許されるのなら再び彼の演奏をコンサートホールで聴きたいと願ってやみません。

今回ばかりは神妙ですよ、この私でも。

 (2000.11.15)


☆コントラバス・トロンボーン顛末記

 ついに、やってしまいました。本番で使う機会があるかどうかまったくわかりませんが、こんなチャンスめったにありません。

というわけでJosef・Monkeです。ドイツ管トランペット(いわゆる横ラッパ、ロータリートランペット)の雄としてあまりにも

有名な、あのモンケなのです!

 ドイツの楽器製造マイスターは、得意な楽器はあるにせよ、ひととおりの種類の楽器を作ることができるようです。このコントラバス・

トロンボーンもそうした作品の一つなのかも知れません。

   ↑
ロータリー保護用の
プレート(青いところ)
が付いています。
アクセントが効いていて
ちょっとおシャレ?
   ↑
スライドが長いので
取っ手が付いています。
これさえあれば、バル
トーク・グリッサンドも
可能です。
   ↑
普通より4度低いF管
です。第1ロータリーが
D管で第2ロータリーが
LowB管です。
窒息しそうなぐらいの
巻きです。
   ↑
右がコントラバス・
トロンボーン用です。
左も大きいんですが、
ハンパな大きさじゃ
ないです。


 あまりにも巨大なために私の部屋では引き切れず全体を写真に写し込むことができませんでした。普通のバストロンボーンとの比較も

計画しています。

 さて?この楽器をどう使いましょうか??先日のプッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」なら使えたのですがもはや後の祭り。チューバが

来ないときの代奏で活躍させておくことにしましょう。いつかはワーグナーの「ニーベルンクの指環」をやってみたいものです。全曲とは

いいません。「ジークフリートの葬送行進曲」だけでもいいです。でも、ワーグナー・チューバ(極低音ホルン・パート)やバス・トラン

ペット(低音トランペット・パート)はどうするの?...果たせぬ夢なのでしょうか...。

 (2000.11.3)


 そして期待どおり(だれの?)モンケ V.S レッチェの大きさ対決です。 

左がバス、右がコントラ
バスです。楽器込みの重さ
はバス8.2kg、コントラ
バス9.1kgで見た目ほど
は違いません。
上と下では特にスライドの
長さと巻きが違います。



組み立ててみた
ところです。
バスが2.5kg
コントラバスが
3.4kg。

ベルの大きさはまったく同じ
なのです。いっぽうベルの
太さは全然違います。バス用
のミュートはコントラバスに
ははまりません。

 (2000.11.5)


☆もう1種類あるとは!(「ボレロ」続編)

 昨年、豊島区管弦楽団でラヴェルの「古風なメヌエット」と「ラ・ヴァルス」を演奏したとき、お勉強用CDとして購入したインバルの

ラヴェル管弦楽曲集(この2曲が収録されています。)にもボレロが収録されていました。すっかり忘れている自分が怖いですが、ダブって

買わなくてよかったです。で、リストへ追加します! 18. インバル:フランス国立管弦楽団 1987.1  14’21

DENON:COCO−85096  最後のドラのジョワ〜ンという響きと音を止めたときの感じがマゼールの演奏にそっくりです。

同じオーケストラなのでそりゃそうかも知れませんが、驚きといえばオドロキです。

 ここのところボレロばっかり聴いていて近所の目も気になりますが、一番のお気に入りはどうやらマゼール:フランス国立管弦楽団の

演奏ということに落ち着きそうです。快速ながらフランス国立管弦楽団のフランスっぽい?名人芸に支えられていい音楽に仕上がっていると

思います。最新盤のウィーン・フィルとの演奏がキワモノに近いだけあってよりいっそう好感が持てます。

 (2000.10.21) 


☆そしてもう1種類(「ボレロ」レポート)

 LPレコード時代といえば私が中高生の頃ですからもう20年も昔のことです。その頃は吹奏楽少年としていろいろな曲を聴きまくって

いましたが、中でもユージン・オーマンディ指揮のフィラデルフィア管弦楽団の演奏が私のお気に入りでした。さすがにCBSソニーの

録音は古すぎて音が悪かったのですが、いわゆる廉価盤で1300円ほど(もちろん気合いを入れなければ買えませんでしたが、親の理解に

助けられました。)で買うことができました。より新しい録音はRCAレーベルから出ていましたからそちらにも触手を伸ばしていました。

その時に買っていたLPと同じ「ボレロ」をCDで聴きましたが、音質は向上していますし、聴き慣れた演奏だけあってなにか懐かしいもの

を感じました。

 特に印象に残ったのはややエゲツないトロンボーンソロです!「こんなにグリッサンドかけてたっけ?」という新鮮なオドロキでした。

ラストのはもっとすごくてトロンボーン3人様がいっせいに吠えまくっています。面白いっ!

 19.オーマンディ:フィラデルフィア管弦楽団 1973.5  15’41 RCA BVCC−38055

 (2000.10.23)


☆ボレロ聴き比べ!

 モーリス・ラヴェルの作曲技巧の極めつけともいえる「ボレロ」に藤沢市民交響楽団が挑戦します。よほどの腕前を持つオーケストラで

さえもなかなか演奏効果を上げることができない難曲でもあります。私の記憶ではムーティ:フィラデルフィア管弦楽団、プレートル:

ウィーン交響楽団、小澤征爾:新日本フィルハーモニー交響楽団、そしてフルネ:東京都交響楽団の演奏を生で聴いたことがあります。

中でもウィーン交響楽団の演奏はプレートルの大技小技が随所で効いたCDでもなかなか聴くことのできない個性的な演奏でした。やはり

ボレロは曲想が単純なだけに指揮者がちょっと欲を出して演奏者がそれに応えることができればそこには素晴らしい演奏が待っているの

かもしれませんね?!

 このために私の所有するCDの中からボレロを探し出してみました。こういうときにリスト化していない自分を呪うのですが...

CDは16種類の演奏を持っています。その他実家にアナログレコードが1種類(オーマンディ:フィラデルフィア管弦楽団、RCAでの

録音です。これがかなりの名演で個人的にはかなり好みです)とベルリン・フィルの野外コンサート(ジョルジュ・プレートルによる

フレンチ・ナイトのビデオ)があります。CDを録音が古い順から羅列しますと...

 1.ピエール・モントゥー:ロンドン交響楽団 1964.2  15’20 (PHILIPS:420 869−2)

 2.シャルル・ミンシュ:パリ管弦楽団 1968.9  17’03 (EMI:CMS 7 69957 2−1)

 3.アンドレ・プレヴィン:ロンドン交響楽団 1979.6  17’21 (EMI:7243 573034 2 2)

 4.ロリン・マゼール:フランス国立管弦楽団 1981.9  13’53 (CBS:MDK 44781)

 5.ネヴィル・マリナー:ドレスデン・シュターツカペレ 1982.6  14’23 (PHILIPS:PHCP−3604)

 6.リボール・ペシェック:チェコ・フィル 1985.2  14’42 (SUPRAPHON:10 3633−2 031)

 7.リッカルド・シャイー:コンセルトヘボウ管弦楽団 1986.8  14’24 (DECCA:448 708−2)

 8.アンドリュー・リットン:ロンドン・フィル 1988.4  14’04 (VIRGO:0777 7596582 7)

 9.クリストフ・フォン・ドホナーニ:クリーブランド管弦楽団 1989.10  14’10 (TELDEC:2292−

   44945−2)

10.ネーメ・ヤルヴィ:デトロイト交響楽団 1991.5  14’11 (CHANDOS:CHAN 6615)

11.セミヨン・ビシュコフ:パリ管弦楽団 1992.7  14’30 (PHILIPS:438 209−2)

12.ピエール・ブーレーズ:ベルリン・フィル 1993.3  14’58 (DG:439 859−2)

13.クルト・マズア:ニューヨーク・フィル 1993.5  15’38 (TELDEC:0630−13133−2)

14.ロリン・マゼール:ウィーン・フィル 1996.6  14’46 (RCA:09026 68600 2)

15.佐渡 裕:ラムルー管弦楽団 1999.3  15’00 (ERATO:3984−27321−2)

16.大植英次:ミネソタ管弦楽団 1999.9  15’14 (REFERENCE RECORDINGS:RR−92CD)

もう1種類、ムラヴィンスキー:レニングラード・フィルの1952年のモノラル録音があるはずなのですが、現在行方不明です。

 最新の2つがいずれも日本の若手による演奏というのが注目すべきことです。定盤と思われるカラヤン:ベルリン・フィルがないのは

私の好みに他なりません。高校1年生の時の来日公演ライブがトラウマになったのでしょうか?(あの、トロンボーン・ソロ、ヘベレケ

事件です!)演奏時間は14分台が主流ですが17分から13分という幅の広さは半端なことではありません。聴いてみると明らかに

テンポ感が異なります。

 案の定、面白いのはムラヴィンスキーの演奏ですが、ムラヴィンスキーの他の演奏を聴いていないとかなり聴くのが苦しい演奏?です。

変幻自在なのはマゼール:ウィーン・フィルの演奏です。旧盤はもっともテンポが速くてサクッとしている割にはフランスオケの特色を

フルに活用している演奏なのに対し、いかにもボレロ向きとは言い難いウィーン・フィルをつかまえてクライマックスに急ブレーキを

かけてしまう、こんなテンポ設定をすることが許されるのはもはやマゼール御大以外にはおわしますまい?!

 1と2はフランスの巨匠によるいわずと知れた歴史的名盤です。音質のことは気にせず(別に気になるほど悪いワケではありませんが)

ぜひとも聴いておきたい演奏です。モントゥーのオーソドックスな解釈なのになんだか「かっこいい」演奏もいいですが、対するミンシュ

のじっくり始まり熱狂的に終わらせるという「もっていき方」も実に見事です。

 いろいろな演奏を聴いてみて思うのは「フランス音楽たるボレロ」というステレオタイプな嗜好よりもちょっと外した意外性のある演奏

がやっぱり興味深いということです。伝統的なドイツ音楽の象徴であるドレスデン・シュターツカペレの演奏も学ぶべきところの多い快演

だと思えますし、「はぁ?オランダぁ?」と思ってはイケナイ!ほどの生き生きとしたコンセルトヘボウ管弦楽団の演奏もしかりです。

でもできたらプレートルの指揮姿はチェックした方がいいですね、DVDでも発売されていますから。楽しいですよ!

 (2000.10.15) 

 その後、「名盤鑑定百科・管弦楽曲篇」を見ていたら割と新しい録音で注目盤を忘れていました。

17.セルジュ・チェリビダッケ:ミュンヘン・フィル 1994.6  18’11 (EMI:7243 5 56526 2 1)

 史上最長?(たぶん本当に)の演奏です。楽しくボレロを聴くというよりも、じっくりと曲の細部まで見透かすのに向いている演奏と

いえそうですが、ミュンヘン・フィルの名人芸とチェリビダッケの唸り声を楽しむのに最適です。マゼールの旧盤との4分以上の時間差

をどうとるか?いやはや不思議です。

 (2000.10.16) 


☆巨匠たるゆえん(ジョージ・セル最後の...)

 ハンガリー出身の指揮者、ジョージ・セルは日本で大阪万博があった1970年に最初で最後の来日公演を手兵クリーブランド管弦楽団

と行いました。その時のライブ録音がCDとなって私の前に現れました。(SONY:SRCR2539−40)5月22日東京文化会館

での演奏会で、曲目はウェーバー:「オベロン」序曲、モーツァルト:交響曲第40番(CD1)、シベリウス:交響曲第2番、

ベルリオーズ:ラコッツィ行進曲(CD2)です。

 聴き終わって「自分がこの頃(5歳のお子ちゃま!)クラシックに興味があって生演奏がもしも聴けていたらなぁ。」と思いました。

こんなことを思うのはムラヴィンスキー:レニングラード・フィルのライブ録音を聴いたとき以来です。お子ちゃまの分際ではありがたく

もないでしょうが。

 セル:クリーブランドのコンビの演奏で必ず指摘される精密なアンサンブルはここでもいかんなく発揮されており、ゾクゾクしてしまう

ほどです。本当にここまできっちり合わせられるともう何もいうことがなくなってしまいます。それでいて決して音楽が冷ややかになる

ことはなく、ハンガリー出身の指揮者特有ともいえる情熱がほとばしるような演奏を聴かせてくれたのです。

 先頃買って残念なキモチになったオザワ:マーラー「復活」での恨み?を同じSONYで晴らすこととなりました。

 (2000.9.24)


☆八百八町にノリノリの!吹奏楽

 現在管楽器奏者として活躍しているスタジオ・ミュージシャン、フリーランス、オーケストラ奏者、ジャズメンも中高生の頃は吹奏楽部

でその青春を燃やしていたに違いありません。そうした腕自慢が集まってゴージャスな「吹奏楽」をやってしまおうというのが、「大江戸

ウインドオーケストラ」です。この第2回の演奏会を聴きにいってきました。(2000.9.22 サントリーホール)

 まず景気のよい曲から、イギリスを代表する売れっ子フィリップ・スパークの「ジュビリー序曲」です。今まで聴いたことのないキレの

よいサウンドにちょっとビビリました。ファンファーレのハイトーンも、もっともっと伸びていくかのような、なんとも気持ちのいい体験

ができました。

 2曲目は「ホルストを吹かずして吹奏楽を語ることなかれ。」といわれるほどの名曲「組曲第2番」です。いい曲でした。ということは

とてもいい演奏だったのだろうと思います。キレのよさは相変わらず。テンポではなく音が速いのには本当に驚きです。なぜ?

 前半最後の曲は、みなさんお得意系、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」です。ジャズ・ピアニストの木住野佳子さんが

登場するとメンバー(特にホーン・セクション)が異様な盛り上がりを見せています。楽しそうだ...さすが!ピアノ・ソロやバス・

クラリネット・ソロ(原曲にはないですよ!)はアドリブも披露してくれました。演奏でもその盛り上がりをいかんなく発揮してくれ

ました。

 後半は本気のポップス・ステージ(ラテン・ノリ!!)です。前半の黒服(一人だけ反転している人がいました!)とはうって変わり、

みなさんスタジオに入ったかのようなラフな、いや好き勝手な格好で登場です!南国調やセクシー系、はたまたハッピ姿のいなせなホルン

やロッカー、ロンドンブーツ、あげくに天使の羽根付き、あげくトランペットをクルクル回しながら登場する人など...あきれてものも

言えません、なんてね。ここは本当にサントリーホールなのか??と思えるほどの興奮のるつぼと化したのでした。

 アンコールではルロイ・アンダーソンの「ラッパ吹きの休日」を豪華なトランペット・セクションで吹いてくれました。最初は原曲

どおりだな、と思っていたら5人でトランペット合戦のようなセッションが始まりました。もう吹きまくる吹きまくる!!「中高生の

よいこのみなさんは絶対真似しないでね!(できないって!)」という感じでした。でも真似するんだろうなぁ。

 とにかくスゴイ演奏会だったのですが、残念なことに会場がそれほど埋まっていなかったのです。よくて7割程度でしょうか。これは

入場料金がやや高かったことと、「吹奏楽」というややもすると低く認識されがちなジャンルだったことが原因だったのかも知れません。

メンバーを見ればギャラも高そうだし演奏レベルも特上なのは納得できるのですから、もっと多くの人がこの演奏に触れることができたら

いいのに、と率直に思ったのです。

 会場では団体できた中高生も大勢いました。ぜひ「楽しく音楽を演奏する」ことを実践してもらいたいと願わずにはいられません。

実は演奏者が一番楽しそうだったりして、ね。アンコールでジャズ・ピアニストの木住野佳子さんがこっそりピアニカを吹いていて最後

にはハリセンチョップを喰らっていました、プロデューサの中路英明さんに。

 (2000.9.23)


☆我が心の赴くままに...後悔記

 私があまり聴かない音楽家の一人に「世界のオザワ」こと小澤征爾さんがいらっしゃいます。もちろん彼のCDは持っていて聴いて

いますが、生では1回だけ新日本フィルの演奏会を聴いただけです。しかもその時の印象は非常に悪かったのです。彼のライフワークと

なっている「サイトウ・キネン・オーケストラ」のCDも初期の頃のブラームス:交響曲全曲はもっていますが、その後は手を出さずに

いたのです。どうも肌に馴染まないのですね、私ごときが言うのもなんですが。

 今回藤沢市民オペラでご一緒させていただいたソプラノ歌手、菅英美子さんがマーラー:交響曲第2番をオザワ:サイトウ・キネン・

オーケストラと演奏したCDが発売されました。かなり迷ったのですがオペラ直前でもあり、もしかしたら打ち上げでお話のきっかけに

でもなれば幸い(ミーハーだよ、まったく!)と思い購入してしまいました。2枚組で3150円なのもおトクかな?

(SONY:SRCR 2566〜7)だいたいこういう買い方をすると失敗するものですが...

 残念ながら悪い予感は的中してしまいました。一番ダメなのは一気に全曲を通して聴けなかったことです。あまりにつまらなくて寝て

しまいました。何回聴いても同じこと。オーケストラのゲストメンバーにも期待していましたが、まあ無難な出来栄えだったといわざるを

得ないです。

 この「復活」という曲の最終楽章に限っては、よほどのことがない限り凡演には出会わないはずなのです。それほどの名曲なのですが、

このCDは異様に流れが速くてサラサラしており、曲を味わおうにもそれすら許されないぐらいです。タメとかがないのです。もちろん

タメりゃいいってものでもないのですが、それにしても深みに欠けています。おかげで菅さんの歌の印象も薄まってしまいました。

 私ごときが「世界のオザワ」を捕まえて、こんなCD演奏評を書くこと自体僭越なのかも知れませんが、それにしてもイカンでしょ?

それとも聴いた私がイカンのか?知りたい方はこのCDを買って聴いてみてください。買って聴かないと本当の評価はしにくいですよ。

 (2000.9.13)


☆ムラヴィンスキー初来日ライブ

 「NHKはライブの宝庫」とは私が勝手に作った造語ですが、かつてNHK−FMで放送された世界中の幾多のオーケストラの来日

公演をエアチェック(もはや死語?)し、カセットテープに録音していた世代としてはこの言葉はまさに実感ではないでしょうか。

 そんな中で日本の小レーベル「Altus」が、大・日本放送協会を動かして本当に貴重な記録であるエフゲニー・ムラヴィンスキーの

初来日演奏会のライブ録音テープをCD化してくれました。1973年5月26日東京文化会館大ホールでのレニングラード・フィルに

よるショスタコーヴィッチ:交響曲第5番(ALT−002)とベートーヴェン:交響曲第4番、そしてリャードフ:バーバ・ヤーガと

グラズノフ:「ライモンダ」第3幕への間奏曲(ALT−001)です。

 ムラヴィンスキーは自分のレパートリーを徹底的に磨き上げるタイプの指揮者なので、若い頃はさておき、決して数多くの曲目を演奏

する人ではありませんでした。今回リリースされた曲も旧ソビエト連邦の御用レーベル、メロディアから本国での演奏が発売されている

いわばおなじみの曲です。しかしムラヴィンスキー・レニングラード・フィルという組み合わせの実演を初めて耳にした日本の聴衆は

大きな衝撃を受けたに違いないと感じる、実に大きな演奏なのです。

 まず、すこぶるパワフルな弦楽器の威力に圧倒されます!「圧倒的」といえば金管楽器群を忘れることなんてできやしません!

「こんなに吹いて本当に大丈夫?」とこちらが心配するぐらいの吹きっぷりです。打楽器の打ち込みも中途半端を決して許してくれそうに

ありません。容赦無用といったところでしょうか。

 と、ここまではff(フォルティッシモ)の話で、pp(ピアニッシモ)となると表情が一転します!弦楽器の透明感は怖いほどで、

金管楽器、特にホルンの音色は木管楽器のようにやさしく響きます。この実演を聴くことができた人は本当に幸せだと思いますね!

 このような過去の素晴らしい名演奏を最新のテクノロジーでリマスタリング(96kHz・24−bit)して私たちの元に届けて

くれるなんて!うれしくて涙がチョチョ切れそうですよ!!まだ他にもあるんですよね?待ってます。

 (2000.7.30)


☆やっぱりブルックナーは難曲か?

 私は職業柄、1月から5月が忙しいのですが、世の中そんなことはお構いなしに注目のコンサートを開催してしまいます。特に今年残念

だったのは、3月の終わりにあった朝比奈隆氏の指揮によるブルックナーの交響曲第5番(オケはもちろん東京都交響楽団)の演奏会に

いけなかったことです。当代随一の金管セクションを誇る都響のブルックナーを聴くことができるのは私にとって何よりも楽しみなこと

なのですから。

 聴けなかったコンサートの評論をするのは無意味なのですが、3月29日のライブ録音がなんと6月20日にもうCDとなって発売され

ました。早いですねぇ。(フォンテック:FOCD9136/7)

 さっそく聴いてみましたが...なにかしっくりとこないのです、金管セクションがやや荒ぽかったり、息が合わなかったり、かなり線

の細い弦セクションも気になります。なによりも曲全体の造形が薄口な感じがしてなりませんでした...う〜ん?

 手前味噌ですが、昨年のちょうど今頃に私が参加した豊島区管弦楽団の同曲のCD−Rが送られてきました(お手数をかけました。)

ので、じっくりと聴いてみました。山岡重信氏の練りに練られた解釈のおかげでアマチュアにありがちな未熟さを超越したブルックナーの

音楽そのものがそこにあるように思えました。(ホメすぎ??)まあ、演奏した本人(=自分!)にとってみると反省材料がありすぎる

ほどですが。

 そもそもブルックナーを我が自宅の箱庭のようなオーディオで聴くこと自体、ブルックナー独自の音世界に近づきがたい行為のように

思えてなりません。願わくば響きのよいコンサートホールで音の洪水の中にずっぷりと我が身を浸してみたいものです。これぞまさしく

ブルックナーの真髄なり!ってね。

 (2000.7.7)


☆「呪い」の威力

 「なんてことだ!神を呪うとは。」と町の人たちは倒れて死にゆくヴァレンティンを哀れんだのでした。というのはグノーの歌劇

「ファウスト」の一節です。オペラには「呪い」がよく出てきて物語を動かすことがあります。いつの時代も人間は自分の感情を抑え

きれずに爆発させるか、このどうにもならない気持ちを他人にぶつけてしまうのですね。「祈り」がポジティブなものなら「呪い」は

ネガティブな感情の行き場です。

 この「呪い」が作品の全編にわたって影を落としているものとして有名なのがヴェルディの「リゴレット」です。好色な若き公爵に

仕える道化リゴレットが公爵に娘を汚された老伯爵を嘲ったために伯爵から「呪い」を受け、結局自分の愛する娘を公爵によって汚された

あげく、娘は公爵の身代わりとなって自らの命を落とすはめとなり、結果として「呪い」が成就してしまうというおどろおどろしい物語

なのです。ただし音楽はノー天気なマントヴァ公(公爵)の性格をよく表していてきれいで美しいものです。このことが更にこの悲劇を

強調するものとなっています。

 待ちに待った?リッカルド・シャイーによるDVDを堪能しました。(DECCA:POBL−1007)これはライブの収録ではなく

映像と音声を別に収録したものです。以前紹介した「サロメ」や「ラ・トラヴィアータ」と同様の造りとなっています。

 まず冒頭のマントヴァ公の乱痴気パーティーの様子が怖いぐらいリアルです。まさに退廃のひとこと。グロテスクでまったくいやになり

ますが、天才ヴェルディの音楽はあくまで美しいのです。軽やかで清々しい!実はマントヴァ公は素直すぎる人なんでしょうか?

 そして娘を汚された父親代表、モンテローネ伯爵怒りの恫喝と「呪い」!「なにが怖いってそりゃ生き霊でしょ!」というわけではない

のでしょうが、「呪い」を受けた方はメチャクチャいや〜な気持ちになるのでしょうね。リゴレットはこの自分自身が負った心のキズが

どんどん広がったために破滅への道へと突き進んでしまったのです。しかももっと辛いのは自分自身ではなく、最愛の娘を失う目にあった

ことでしょう...私は子持ちでないのでよくわかりませんが。

 「呪い」を受けたことを気に病むリゴレットが街角で出会う刺客スパラフチレは前歯が欠けていたりしてちょっとお茶目な感じです。

まるで明石家さんまの演じる「オレたちひょーきん族」の愛すべきキャラクタみたいです。リゴレットの愛娘ジルダは当たり役のエディタ

グルベローヴァです。汚れを知らない可憐な乙女の役を軽やかな歌で見事に表現しています。

 一方の悪役(でも絶対死なないのです、不思議なことに。)マントヴァ公はなかなかスリム?なルチアーノ・パヴァロッティがハッピー

な歌声で魅了します。歌の内容はとてもじゃないけど公表できないくらいやばいですが、歌そのものはステキ!これなら死より生が与え

られるのも納得できます。「あれかこれか」や「女心の歌」は有名なナンバーです。

 ラストシーンでのリゴレットとジルダの永遠の別れは不条理すぎて涙を誘います。でも私の母がよく言う言葉が頭をよぎるのです。

「人を呪わば穴(墓穴)2つ」怖いですなぁ...

 (2000.7.7) 


☆廉価盤?輸入DVDビデオの実力

 現在発売されているクラシック音楽のDVDソフトは多くの場合、既存のビデオなりLDを基にしてDVDへ移行したものです。

そのため(確かに演奏・映像ともよく練り上げられてはいますが)どうしてもある種の「古さ」を感じずにはいられないのが現状です。

せっかくPS2の登場でDVDビデオが普及する一つのチャンスをむかえたと私は考えているのですが、この状況では恩恵にあずかれる

のは映画ファン(しかも洋画)だけになってしまうのではないでしょうか?CD大普及時代もソフトが大々的に流通しはじめて勢いに

乗ったのですから、クラシック音楽DVDビデオにはがんばってもらいたいものです。

 さて、そんな中で輸入盤のDVDの中にもそろそろ面白そうなものが登場してきました。とはいっても今回購入したのは一枚だけ。

私のことをよく知る人にとっては意外な演奏かも知れません。ダニエル・バレンボイム指揮/シカゴ交響楽団によるマーラーの交響曲

第5番です。たぶん1997年のケルン・フィルハーモニー(ケルン放送交響楽団の本拠地として有名な半円形を組み合わせたステージが

特色のホール)でのライブです。(ART HAUS MUSIK:100 033)

 私の極私的印象ではバレンボイムはよろしくありません。ベルリン・フィルとのブルックナー全集は私の心になにも残しませんでした。

ブルックナーの第8番がいい曲と思えないなんて!どんな演奏だったか想像できますか?ガッカリです。またシカゴ交響楽団も名指揮者

「スカっとさわやか」ゲオルグ・ショルティのことを私が快く思っていなかったために(なんて僭越の極み!)いまだ現役の世界遺産

トランペットのハーセスをもってしても私の心は癒されなかったのでした。

 そういう忌まわしい過去はともかく、大変貴重な映像ですからじっくり観て聴いてみることにしましょう。まずバレンボイムの印象が

ずいぶん違いました。見た目ですけどね。貫禄がでてきてぱっと見チェリビダッケのようです。もう彼も今年58歳になるのですね。

でもそんなことで驚いてはいけません。第1楽章冒頭のトランペット・ソロといえばこの人、ハーセスです!当時すでに70歳ぐらい

だったはずなのにその吹きっぷりといったらそれはもう大変なものです。全トランペット奏者は必見かつ必聴!だいたい姿勢がいいです。

そういえば管楽器奏者にはかなりお年を召された方々がいらっしゃるようにお見受けしますが、年なんて関係ないわぃ!といわんばかりに

アメリカを代表するこのスーパー・ヴィルトゥーゾ・オーケストラは吠えまくります。さすがはかつて「サントリーホールで演奏する

シカゴ響はまるでプールを泳ぐ鯨のようだ。」と言わしめただけのことはあります。

 映像のクォリティはさすがに素晴らしいです!こういう映像が欲しかったのですよ、私は!でもちょっと気になったのはDVDがPS2

のソフトウェアによるエンコードのせいなのか、指揮棒の動きなどのかなり速い動きについていけず不自然な残像のようなものが見える

ことです。もしかしたらマスター映像の問題かも知れませんがハードウェアによるエンコードなら解決するのでしょうか?

 肝心の演奏そのものですが、ライブとはいえ意思統一がはかれていなかったり、けっこうミスが多かったりと問題なきにしもあらずの

感が拭えません。いちばん問題なのはやはりバレンボイム自身の指揮にあるのでしょうか?こう考えるとシカゴ交響楽団の選択は?ですが

ベルリン・フィルはOK!なのかもしれません。もっとも今後の活動を見ないと何ともいえないことですが。まあ値段がお手頃だったので

許すとしましょう。2580円(税抜き)!こういう論議も疲れますね、はぁ。

 (2000.6.12)


☆凄演「ブラス!」ライブ

 1998年にその筋でやや盛り上がりを見せたイギリス映画「ブラス!」のモデルとなった英国式金管楽団、「グライムソープ・

コレアリー・バンド」のライブを聴きに行ってきました!(5月29日(月)。3月の休日出勤の振休を消化させてもらいました。)

映画のDVDをはじめ、数多くのCDでそのエキサイティングな演奏に触れ、「いつかはきっとナマ演奏を!」との思いを強くしていたの

ですが、やっとその願いがかなえられたのです。

 東京・渋谷のオーチャードホールはある種の熱気に包まれていました。普通この手の演奏会はその業界の人だけに認知されがちで、

一目見て「楽器吹きの人たち」だとわかるのですが、その他に大勢の一般の方々(おそらくは映画ファン?)が押し寄せていたのです。

ただし、ジャンルがクラシック音楽だけにチケットのお値段がちょいと高めだった(S席8,000円)せいか1階席には空席が目立ち

ましたが、きっと2・3階席は大入り満員だったに相違ありません。

 開演時間となりましたが、いきなりやってくれました!ギャグ炸裂。そして新譜の中からヴェルディ「運命の力」序曲をハイテンション

で演奏してくれました。映画音楽特集でホロリとさせておいて前半の最後はなんと!スパーク「ドラゴンの年」という願ってもない曲を

やってくれたのです。チケット購入時には発表されていなかっただけに、それだけで私のテンションは上がりっぱなしでした。ライブに

つきものの些細なミスには目をつぶりましょう!凄まじい快演でした。2曲目を聴いていて私なんかは全身に鳥肌が立ってしまいました!

これぞまさしくライブの醍醐味といえましょう!

 後半には大作、ホルスト「組曲 惑星」より「木星」という聴衆の度肝を抜く演奏を聴かせてくれました!うれしい悲鳴!そして

「ブラス!」の中で流れた曲「栄光か死か」、「威風堂々第1番」、映画での最大の泣かせどころで流れた「ダニー・ボーイ」(本当に

感動的で涙がこぼれそう...)の他、各楽器の超絶技巧ソロ(ソリ)をフィーチャーした作品を演奏しました。中でもアルト・ホルンの

ソロは非常に珍しく私自身も聴くのは初めてでした。とても繊細な音色です。

 ついにフィナーレとなりレスピーギ「ローマの松」より「アッピア街道の松」で巨大なオーチャードホールを爆発させんばかりの大音響

で満たしたのでした。とんでもない!!たった?25人ほどの人数ですがこれほどまでの音量になるとは...恐るべしは伝統の国、大英

帝国。まじめな話、これほどの音量になると一種のトランス状態?になってしまいそうです。クセになりそう。もっとも彼らにとっては

ロンドンのロイヤル・アルバート・ホール(4000人ぐらい収容でしたっけ?)で演奏するのと比べたらさほどでもないのかもしれま

せんが、聴く方の身になってくれ〜と、実はうれしい悲鳴でした。

 結論!今日5月30日にも同じオーチャードホールで彼らの演奏会があります。聴きに行ってソンはない!その次は大阪ですよ!

 (2000.5.30) 


☆映画版「椿姫」

 メトロポリタンオペラの「ラ・ボエーム」とウィーン国立歌劇場の「サロメ」でまったく違う役柄を見事にこなした美貌のソプラノ

テレサ・ストラータスの魅力に取り憑かれてしまった私は、公約どおり彼女がヴィオレッタを演じる映画「ラ・トラヴィアータ」を手に

入れました。(ドイツグラモフォン:POBG−1017)これは名演出家フランコ・ゼッフィレッリが監督としてフィルムに収めた映画

です。出演者はオペラ歌手が自らこなし、演奏はアフレコで行っています。オーケストラと合唱はレヴァイン指揮のメトロポリタン歌劇場

となっています。実演のライブと違って演出や舞台装置の制約がなく、表現は多彩で効果的です。ちょうどミュージカル映画みたいな感じ

といえばよいでしょうか。

 では話の筋。時は1850年頃のパリ。椿姫(ちょっとウソくさい)と呼ばれる高級娼婦ヴィオレッタは華やかな社交界で身をやつして

いますがプロヴァンスの純情な青年アルフレード・ジェルモンの純愛に触れ、その愛を受け入れます。が、その父ジョルジュ・ジェルモン

が娘の結婚に差し障るので息子と別れて欲しいと懇願し、やむなくヴィオレッタはアルフレードと別れます。事情を知らされていない

アルフレードは、とある舞踏会で大勢の客の前で彼女を侮辱します。その後父親から真実を知らされたアルフレードは彼女のもとへ許しを

乞いにやってきますが時すでに遅く彼女は死の床についていてアルフレードが戻った喜びもつかの間、ついに死んでしまうのでした。

 いかにも「イタリア・オペラ」らしい名作で大人気作品です。なのに今まで私はCDを持っていなかったのです、不覚!

 様々なガイドブックにも書かれているように確かに泣ける曲でした。ストラータスの「らしい」姿や演技そして歌のすばらしさが光り

ます。ちなみに相手役のアルフレードはかの三大テノールのひとり、プラシド・ドミンゴです。彼も演技が素晴らしく(歌は当然!)

愛を語る好青年から裏切りに怒り狂う男、そして後悔の念にさいなまれる弱い青年の姿を見事に表現しています。そしてなんといっても

最悪人は父親ジェルモン役コーネル・マクニールでしょう。彼は今私が観ているメトロポリタンオペラの「トスカ」で極悪人スカルピアを

演じています。なにが悪人かって、自分の娘がかわいいのはわかりますが、だからといって(たとえ元高級娼婦であっても)一人の女性の

不幸と引き換えにするのはいかがなものか、と思うのです。結局、死の淵に瀕したヴィオレッタを哀れんで後悔しているあたりは「後悔

するなら最初からするな!」と罵倒したくなるほどです。それから親も親なら子も子だ!アルフレードも大勢の前でヴィオレッタに札束を

叩きつけておいて「なんてことを!怒りに我を忘れて...」なんてのんきに歌っている場合じゃないだろうが!

 いやはや、すっかり感情移入してしまいましたな。これもまたオペラの醍醐味といえましょう。映像としては非日常的なほどに華やかな

舞踏会シーンあり、ひとりぼっちのヴィオレッタによるヤケ酒シーンあり、アルフレードとヴィオレッタのつかの間の幸せな田舎暮らし

のシーンあり、印象的なラストシーンありで、舞台とはひと味もふた味も違った楽しみ方ができるのではないでしょうか。

 (2000.5.24) 


☆カルロス・クライバーと「ばらの騎士」

 もう6年も前の1994年でした、やっと生(なま)カルロス・クライバーの織りなす魔法のような音楽に触れることができたのは。

現在においてもすでに神格化(おっと、時事ネタみたいだ?!)してしまった感のあるクライバーの音楽は聴いてたのし、観てうれしの

まさに宝物のようなものです。最近その消息についてとんと聞きませんがいかがお過ごしでしょうか?(1930年生まれなので今年で

もう70歳なのですね...)

 クライバーの生演奏を聴く機会には恵まれませんが、DVDビデオの方はクライバー中心のリリースが続いていてうれしい限りです。

そして予告どおり!1979年バイエルン国立歌劇場とのライブ映像による「ばらの騎士」がリリースされました。これはとても定評の

ある演奏で、1990年代にリリースされたウィーン国立歌劇場とのプロダクションに優るとも劣らないものといわれているのです。

(こちらの方は例のごとくDVD化されておりません。LD購入層に対する配慮か?でもDVD化すればもっと儲かるのかも知れないのに

これもまた商機を逸する残念な状況ですね。)

 では、「ばらの騎士」の筋書きです。時は女帝陛下が君臨するオーストリア帝国の都、ウィーンの上流階級。若くして嫁がされた元帥

夫人は年の離れた夫との結婚生活に疲れ、また月日と共に確実に衰えていく自らをかえりみて(とはいってもまだ30代前半なのですが)

つのるなんともやるせない気持ちを若い恋人(17歳!)とのアバンチュールで紛らわしておりました。このシーンは第1幕冒頭なのです

が、リヒャルト・シュトラウスの本当にすばらしい音楽によって、はっきりいって赤面してしまいそうなぐらいイチャついている様が表現

されているのです!「サロメ」といい、この「ばらの騎士」といい、まったく...

 で、突然元帥夫人のいとこで、イナカ者の男爵が現れて「今度結婚するから結婚相手への使者となる『ばらの騎士』を推薦してくれ。」

とお願いするのです。そして元帥夫人は自分の恋人をその「ばらの騎士」として推薦するのでした。(ここまでが第1幕)

 第2幕はイナカ男爵の結婚相手である、裕福な商人出身の新興貴族の一人娘のところにばらの騎士として参上した元帥夫人の恋人が

こともあろうにこの娘に一目惚れしてしまうのです。しかもこの娘も自分の将来の夫であるイナカ男爵の粗野な振る舞いにすっかり嫌気が

さし、かなりすてきなばらの騎士にやっぱり心惹かれてしまうのですが、彼女をイナカ男爵から守ろうとしたばらの騎士が若気の至りで

男爵に斬りつけてしまったからさあ大変!恋する若い二人は引き離されてしまうのでした。

 第3幕は、イナカ男爵の本性を暴いて娘との結婚話を破談にしようと画策したばらの騎士が、ちょっとやばい状況になりかけたところ

を大人の女性の鑑のような元帥夫人のとりなしによって万事丸く収まってしまうという、なんとも楽しいお話です。だいぶ端折った!

 聴き所はやはり元帥夫人です!大人の女性とはこういうものか、とマジに惚れてしまいそうです。若い恋人がいつか自分から離れて

いってしまうだろうことを予感しながらも、その恋を許すあたりときたら!まったくイキですな。ちょっと今風ではありませんがね。

ラストシーンの元帥夫人、ばらの騎士、娘(ちょっと野暮ったいイメージに聞こえますか?)の女声による三重唱(ばらの騎士も低い

女声なのです)は揺れる女心と、まだ青い若者の迷い、そして恋心を聴く者に強く訴えかけるのです。すばらしい音楽です!

 オペラが素晴らしいのはうれしいことですが、もっとうれしいことに若き(とはいっても49歳か)クライバーの実に楽しげ、かつ的確

な指揮ぶりを目の当たりにできることがこのDVDの価値を高めているといっても過言ではありますまい!ただし、画質は20年前の水準

そのものではありますので...驚くほど鮮明ということではありません。それでもバイエルン国立歌劇場の客席の豪華なシャンデリアや

豪華絢爛な舞台装置を十分堪能することはできます。え?お好きでない?!こんな不道徳な話は...

 (2000.5.17)


☆18禁!映像?「サロメ」

 リヒャルト・シュトラウスの問題作、「サロメ」は、作曲当時(1905年)には内容が不道徳だとか、テクニカルな面で難解だとか、

数多くの物議を醸した作品です。そりゃ歌の内容が「好き好き!愛してる!口づけさせて〜!!」ばっかり(いや、これ本当の話!)で

その欲望を満たすために、サロメはお得意!のお色気ムンムン「7つのベールの踊り」(7つのベールを踊りが進むにつれて1枚ずつ

脱いでいって、ついには...スッポンポン、というつまりはストリップ)までしてしまうのでした。結局はその思いを遂げるのですが、

その遂げ方が尋常ではなくて、銀の皿に相手の首を切って乗せてきてそれにチューするという、現代の基準でも十分に不道徳な内容と

なっております。そんなおぞましい姿を見て恐れをなした義父であるユダヤ王に殺されてしまうのです。そりゃそうだ!(実はサロメに

踊りをさせたのはこのオヤジだったりするので、また更に不道徳の極みですな。)

 クラシック音楽のDVDソフトは新作を発売するのよりも、過去にLD化されたソフトで高画質のものを更に磨きをかけてDVD化する

のがまだまだ一般的なようです。不景気ないまどきでは新しくオペラを収録するのは至難の業といわざるを得ません。「サロメ」もこの例

に倣って1974年収録です。(ドイツグラモフォン:POBG−1010)劇場での上演をライブで収録したのではなく、映画のように

セットを組んでの絵作りです。ちなみに演奏はカール・ベーム指揮:ウィーン・フィル、演出はゲッツ・フリードリッヒです。

 サロメはMETの「ラ・ボエーム」のプリマドンナ、テレサ・ストラータスです。清楚なミミとは対照的に、サロメは最初はか弱い少女

の面持ちですが、囚われの予言者ヨカナーンに興味を持ち、恋(?)をして、激しく愛!して妖艶な大人のオンナへと変貌していきます。

「いやはや、おぢさん赤くなっちゃうよ。」って感じのドラマチックかつドロドロのエロな世界が繰り広げられていきますのさ。(思い

出すだけでも...)でも映像的には特にエッチな場面はありませんので期待し過ぎないでくださいね。あくまでも音楽の表現と演出の

妙です。これとカール・ベームというのが全然結びつきませんが...ウィーン・フィルはエッチです!さすが。

 おかげでストラータスの別のDVDも買っちゃいましたよ!映画版「ラ・トラヴィアータ(椿姫)」を!次はこれだな。

 (2000.5.14)


☆やっぱり...オペラでしょ!DVDなら!!

 せっかくDVDビデオを楽しめる環境を手に入れることができたので(PS2さまさまです。でも私のようにゲームをあまりしないの

なら、専用のDVDプレーヤーを購入した方がいいかも知れません。縦置きはできないかも知れないですが。)先々月に引き続きDVD

ソフトを厳選して(とはいってもまだ数少ないクラシックのDVDソフトゆえ、それほど迷うことなく選べるのはありがたいやら情けない

やら...という感じです。)購入しました。狙うは今度のオペラ演目であるプッチーニの名作、「ラ・ボエーム」です。

 この方面の事情通の方は「??」と思われたでしょう。なぜなら現在「ラ・ボエーム」の国内盤DVDは発売されていないからです。

私も遺憾ながらこの事実を認めざるを得なかったのですが、新宿タワーレコードで輸入盤DVDを発見することができました。輸入盤

なのですが上演がイタリア語のため英語字幕がもれなく付いてきます。この手の英語は簡単なのでおそらく大丈夫だろうと判断して購入

しました。(PIONEER CLASSICS:PC−95−085−D)演奏はジェームス・レヴァイン指揮のメトロポリタン歌劇場

のみなさん(管弦楽団・合唱団)と、ロドルフォ役にはぴったりのホセ・カレーラス、ミミ役はかなり病弱っぽいテレサ・ストラータス、

ムゼッタ役には、ミミとは対照的に元気いっぱいなレナータ・スコット。演出は手堅くゼッフィレリ。舞台の貧乏臭さは一見の価値あり?

意外とお金がかかっていそう。1982年1月16日のライブです。

 私の貧しい英語能力では字幕の内容を理解するのが難しい状況ですが、演奏者が芸達者なのと、わかりやすい演出のおかげで楽しく

せつなく観ることができました。第2幕のパレードは賑々しく、終幕のミミの死の場面では目頭が熱くならずにはいられませんでした。

カレーラスをはじめとする歌手陣は確かに素晴らしく、聴く者の心を揺さぶりますし、若き(今でも若いのですが)レヴァインのスマート

な(身体も今から思うと太くない)サクサクとした指揮ぶりながら、決して叙情不足に陥ることなく全体を引き締めています。

 パイオニアのレーベルなのですから、ぜひ日本語字幕を入れて発売してもらいたいものです。契約の都合(たとえばアメリカ国内のみ

発売可とか)もあるのでしょうが、本格的なDVD普及時代を見越してビジネスチャンスを逃さないことを祈るのみです。

 (2000.5.3)


☆「展覧会の絵」オリジナル版?

 ムソルグスキーのピアノ曲「組曲 展覧会の絵」はモーリス・ラヴェルの華麗なるオーケストラ編曲によって有名になったのはいうまで

もありません。知名度からするとむしろラヴェル編曲の方がオリジナルと見なされているかのようです。そのためか、ピアノによる演奏を

聴くとあまりにもオーケストラとの演奏スタイルが異なるために違和感をおぼえるのもまた事実です。これはオーケストラには持続音が

可能であるのに対して、ピアノではそれほど長い持続音を奏でることができないことに起因していると思われます。概してピアノによる

演奏が30分ほどで全曲を弾き切る(「プロムナード」1曲多いのにもかかわらず、です)のに、オーケストラでは32分以上かかるの

ですから。

 ところで、今やドイツの至宝となりつつある伝説の指揮者、ギュンター・ヴァントが意外にも(彼の経歴からすればまったく意外でも

なんでもないことなのです、実は。)「展覧会の絵」をリリースしました。(RCA:74321 72788 2)

 私はこの演奏を石丸電気の視聴コーナーで(発売前の販促用サンプル盤)聴くことができました。とにかくびっくりしたのは「キエフの

大きな門」の後半でのテンポの取り方です。多くの指揮者が引き延ばし過ぎる(ような気がする)練習番号120からの3/2による

6小節間をあまり緩めることなく(一応「Poco a poco rallentando」の指示がありますが...)一気にラスト

へ向かって突き進むのです!まさにピアニストがする演奏そのものではないですか、これは。

 しばらく日が経って、おあつらえ向きなことに輸入盤がリリースされました。さっそく購入したのですが日々の暮らしが忙しすぎて

なかなか聴くことができません。やっと通勤途中のクルマの中で聴くことができましたが、非常にオーソドックスな(ラストのテンポ

以外は)演奏でありながら全般的な水準もサウンドも素晴らしく、これから「展覧会の絵」を聴き始める方にも、「展覧会の絵」には

目がないヴェテランの方にも広くオススメできる演奏です。チェリビダッケの悠々とした大演奏と比較するとかなり興味深いことになり

そうです。総演奏時間だけでも10分ほども違うのですから。ぜひ比較してみてください。

 このCDにはドビュッシーの珍しい作品「交響的断章『聖セバスティアンの殉教』」が収録されています。よく聴くとドビュッシーの

曲想ですが、何も知らないまま聴くとかなり日本風、もっというと時代劇風の曲想に驚かされます。こちらも注目です。

 (2000.5.3)


☆クラシック音楽の映像ソフト

 ご多分に漏れず、新しもの好き物欲魔人の私はちょっとした小金があてにできるのをいいことにちまたで話題の多機能ゲーム機

「プレイステーション2」を買いました。

 普段めったにゲームをしない(できない?)私のお楽しみはなんといってもDVDビデオを見ることです。ほとんどこの目的のために

買ったといっても過言ではありません。みなさん、そうですよね?!

 ところが悲しいことながら映画はまだしも、クラシック音楽ソフトはそれほど充実しているとはいえません。だからといってレーザー

ディスクが充実しているかというと、これはまた虫の息...新しいフォーマットの切り替わり時期を感じさせます。

 そんな中でドイツ・グラモフォンやフィリップス、デッカを擁する「ユニヴァーサル・ミュージック」は今までにLDで発売されて

いた映像タイトルを順次DVDで発売していくようです。この手の映像ソフトに興味を示した音楽家としては、かのヘルベルト・フォン

カラヤンが有名ですが、どうも彼の映像はイメージビデオのごとく存在の必然性を感じさせない無味乾燥なものが多数を占めています。

せっかくの音楽ソフトなのにこれでは買う意味もそんなにありません、私にとっては。

 指揮する姿が絵(画)になる、当代きっての名指揮者といえばその名が必ず上がるのはカルロス・クライバーです。今や指揮をする

というウワサが立っただけでニュースになるクライバーだけにソフトは限定されるのですが、さすがにクライバーならDVDにうってつけ

だとレコード会社もわかっているのか、立て続けに彼の指揮が存分に楽しめるソフトがリリースされました。

 私もLDを購入した(でも今は友人Kの手元にあるはず)アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団とのベートーヴェン:交響曲

第7番・第4番(PHILIPS:PHBP−1004)と、ウィーン・フィルとのモーツァルト:交響曲第36番「リンツ」と

ブラームス:交響曲第2番(PHILIPS:PHBP−1005)です。

 2つともユニテルが制作しているのですが、安易というか購買層のニーズに即しているというか、指揮者の左斜め前方(1st Vn

の後方)にメインのカメラを据えて、魅せる指揮者クライバーの姿を全編の80パーセント(ちょっと大げさ!)も捉えています。

音楽も彼の手中に収まった、得意中の得意なレパートリーばかりでとても魅力的です。解釈も独自性があり、オーソドックスとはいい

難いものですが、決してハメを外しているわけではなく、よく考えられ練り上げられた演奏です。思わず口をぽかーんと開けたまま

魅入ってしまうのです。あんなふうに指揮することができればさぞかし楽しいだろうなぁ、と思わずにはいられません。ベートーヴェン

やモーツァルトをかったるいと思っている人にもぜひおすすめできます。

 その他、私が購入したのは朝比奈隆御大の大阪フィルとのブルックナー:交響曲第5番(TOSHIBA:PIBC−7001)です。

これはよくぞまあリリースできたものだと感心するほどのDVDです。いくら朝比奈御大の90歳記念演奏会だとはいえ、曲がマイナー

(私にとってはメジャーですが...)ですから。こういう地味ながら意義ある企画もどんどん実現していってもらいたいものです。

 おそらく、今までに数多くリリースされてきたLDタイトルもこれからはDVDとなっていくのでしょう。期待しています。特に長大

な作品はDVDの長時間収録のメリットが活かされます。実際ワーグナーの4部作「ニーベルンクの指環」はメトロポリタン歌劇場のもの

がリリースされています。ぜひフィリップスのバイロイト歌劇場ライブを復活させてもらいたいものです。

 (2000.3.28)  


☆笑っちゃうほど吹きまくり!

 「フランス国立放送フィルハーモニーオーケストラ」というオーケストラをご存じですか?フランスで有名なオーケストラといえば、

パリ管弦楽団やフランス国立管弦楽団などですが、私は以前からこのフランス放送フィルの演奏に注目していました。

 このオーケストラを率いているのはマレク・ヤノフスキというポーランド出身の指揮者です。かつてドレスデン国立歌劇場との

ワーグナー「ニーベルンクの指環」を録音しており、私にとってはそちら系のレパートリーが得意な指揮者というイメージだったのです。

それなのに「フランス放送フィル」というまったくお門違い?のオーケストラでどんな仕事をするんだろうと正直勘ぐっていました。

 私を驚かせたのは、サン=サーンス「交響曲第3番」(harmonia mundi France HMP 3905197)

でした。お手並み拝見、と思っていたのですが実にサクサクとしていて、それでいて威勢がいいのです。サウンドも洗練されていて

とても爽快な気分になりました。放送オケですから機能性が高いのは当然なのですが、「知名度」というものがこれほどあてにはならない

ことを思い知らされたのは久しぶりでした。特に金管楽器の吹きっぷりは「かくあるべし!」と感じさせるのにふさわしいものです。

 こういうのも残念なのですが、マイナーなオーケストラゆえか、国立のためそれほどお金に困っていないためか、それほど多くのCDが

発売されることもなく時が過ぎていきました。そしていきなり最近のライブ録音が4枚組のCDとなって発売されました。レーベルは

なかなか難しく?一応前出の「harmonia mundi」が絡んでいるようですが、コピーライトは「Le Chant du

Monde」というところのようです。(CMX 378081.84)

 CD1 リヒャルト・シュトラウス:アルプス交響曲/シベリウス:交響曲第7番

 CD2 フォーレ:「ペレアスとメリザンド」/デュティユー:「音色、空間、運動」/ドビュッシー:「海」

 CD3 シューマン:交響曲第2番/ブラームス:交響曲第2番

 CD4 ブルックナー:交響曲第6番/ワーグナー:「ジークフリートの葬送行進曲」

 指揮者の好みなのか、重厚っぽい作品が多いですが、重々しくなりすぎず好感が持てる演奏ばかりです。特に聴いていて思わず吹き

出しそうになったのはブラームスです。「おいおいバストロのにいちゃん(たぶん)、こんなに吹いていいんかい?!」と突っ込んで

しまいそうなぐらいに第1楽章は吹きまくります。マイク乗りがいい音なのかもしれませんがいくらなんでもやりすぎ!でも快感!

 まだまだ世の中捨てたもんじゃないですね、こんな新譜も出るのですから。しかも4枚組で5000円強とは...激安!

 (2000.3.6)


☆速報!「祝典変奏曲」

 欲しいCDが手に入るってことはうれしいものです。「200CD吹奏楽名曲名演」にも紹介されていたベルギー近衛交響吹奏楽団に

よるクロード・トーマス・スミスの「フェスティバル・ヴァリエーションズ」がやっと入手できました。(Rene Gailly

CD87 076)それにしてもこの団体は意欲的な録音を繰り広げていますが、一般的にはマイナーレーベルなので入手しにくいとは

思います。こういうときには都会に住んでいる優位性を感じずにはいられません。ちなみに発注したのはアキハバラの雄、石丸電気。

 聴いてみて思ったのは「テンポがやや速めだが、ハイレベルでまとまっていてかなり聴きごたえがある。」ということです。さすがに

軍楽隊は結束が固いですね。この曲では特にホルンを目の敵?にしているのですが、まったく危なげなく吹き切っているのも聴きモノと

いえるでしょう。このCDは「アメリカ吹奏楽名曲集」と銘打っていて、他の曲でもこの吹奏楽団のハイレベルな演奏を存分に楽しむ

ことができます。収録曲目は以下のとおりです。

 1.コープランド:庶民(「市民」かな?)のためのファンファーレ

 2.ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー

 3.バーンスタイン:カンディード(「キャンディード」!)序曲

 4〜6.バーンスタイン:「街にて(オン・ザ・タウン)」より3つのダンスエピソード

 7.グールド:ジェリコウ(「ジェリコ」でしょ?)

 8.スミス:祝典変奏曲(「フェスティバル・ヴァリエーションズ」だって!)

確かに名曲揃いですね。それにしてもこのタイトルの訳し方は...なんといっても旧ソビエトのレーベルならまかせとけ!の神保町

「新世界レコード社」によるものですから。シブすぎて侮れませんなぁ!

 (2000.2.14)


☆たまらん魅力の現代音楽

 現代音楽お嫌いですか?奇しくもパイパース誌上ではNHK交響楽団の首席オーボエ奏者にして物書き?の茂木大輔氏がこの問題に

ついて持論を展開なさったのでありました。曰く「音楽の出来不出来ではなく『演奏することの喜び』が得られない曲は演奏していて

とても辛い。」だそうです。そういえば私のオーケストラでの唯一の現代音楽演奏が吹奏楽コンクール課題曲にもなった和田薫氏の

「土俗的舞曲」を含む作品「管弦楽のための民舞組曲」だったのは幸いでした。この曲はかなり面白かったです。掛け声もあったし。

それでもトロンボーン演奏上の必殺??ワザ(スライドを用いたポルタメントやフラッター・タンギング)が随所に用いられていて

確かに現代音楽の香りを漂わせていたのです。

 そして最近かなりハマっている吹奏楽曲は、オーケストラ曲の編曲でもない限りほとんどが20世紀、しかも第2次世界大戦後に作曲

されたものばかりなのですが、オーケストラ界の作品と比べると聴きやすさにおいてはまさに天国的です。少なくとも私のような若い頃

にバリバリの「ゲンダイオンガク」聴きにとっては、ですが。

 忙しさゆえのストレス解消のためか、吹奏楽関係のCDをたくさん買いました。買っても買ってもいろいろなマイナーレーベルから

それこそ星の数ほど(おおげさか?)の演奏団体による興味深い作品がリリースされてきます。「まいったなぁ」とかいいつつも私は

心の中でニヤケているのです!その中で特に心惹かれたのはRutger Wind Ensemble によるジョン・バーンズ・

チャンスの交響曲第2番でした。(Mark 2940−MSD)

 よく考えてみたらこの曲のCDは他に持っていて(オランダ王立海兵隊バンド ソニー SRCR−1566)聴き覚えがあったので

しょうが、それにも増してハッとするような「チャンス節」が横溢していて聴く者を圧倒します。響きは全般的にほの暗く、時に吠える

ようなトゥッティが心を不安にさせます。そしてついに心の平安は訪れないまま終わりを迎えるのです。チャンスが突然の死を迎えること

になった1972年に作曲されたという事実も、この曲をよりいっそう緊迫したものにしてしまいます。私の勝手なのですが。

 さて、ゲンダイオンガクといえば最右翼は打楽器のための作品ということになるのでしょうか?パーカッションをやっている人でない

限りはなかなか手を出しにくいジャンルですが、あえて私がおススメCDを紹介いたしましょう。それは加藤訓子(くにこ)さんの

初アルバム「TO THE EARTH」です!(alacarte SO 1118)タワーレコードなら入手可能かも?

 なぜ彼女のCDを紹介するのかというと、実は藤沢市民オペラ「プッチーニ:トゥーランドット」に桐朋学園大学の学生だった彼女が

エキストラとして参加していて、前田愛似のルックスと卓越したマレットさばき(彼女の担当は鍵盤打楽器でした)に魅了された我々

金管楽器軍団がファンクラブを作りかけたという逸話を残しているからです。(後半はウソ!)当時の彼女はすでに音楽コンクールで

優勝するなど、とても手の届かないような存在になりかけていましたが、それでも狭いオーケストラ・ピットの中で至近距離にいられる

という都合のいい状況に乗じて、彼女の照れ笑いと素晴らしい演奏を楽しんでいたのでした。かなりアブナイ?

 1.クセナキス:Rebouns a

 2.クセナキス:Rebouns b

 3.杉山洋一:Regalo

 4.ドナトーニ:Omar

 5.シュワントナー:Velocities

 6.ジェフスキ:To the Earth

ちょっとワケ知りの方にはこたえられない?曲目ばかりですね!カテゴリでいえばすべてが現代音楽ですが、それほど聴きづらいとは

感じなかったのは幸運だといえるでしょう。(あくまでも私にとっては?)彼女のテクニカルな面と音楽性の両方をじっくりと味わって

ください。特にアルバムタイトル曲「To the Earth」は彼女の声も聴くことができます!必聴ですな。ヘッドフォンじゃ

もの足りないかもしれませんが...それにしてもジャケットの写真を見るかぎり、以前とはかなりイメージが違っています。

 結局、現代音楽を制覇するためには、自分の中にいろんな意味での好奇心があふれていないといけないのですね、きっと!(ちょっと

(かなり?)ミーハーな動機ですが...)

 (2000.2.13)


☆音響効果(大砲編)

 その昔アメリカの小さな新興レーベル「テラーク」が出したアナログレコード「チャイコフスキー/序曲『1812年』」は「この

レコードを針飛びしないで再生できるオーディオシステムは大したものだ。」とリスナーに挑戦状を叩きつけました。確かにこのレコード

は目で見てはっきりわかるほど振幅の大きな溝が刻まれていたのです。その溝に記録されていたのは本物の大砲の音でした。

 チャイコフスキーの序曲「1812年」はかなり標題音楽っぽい(というかそのもの)作品です。ロシア帝国とナポレオン率いるフランス

との戦いを描写しているため当時のロシア国歌やフランス国歌は流れるわ、大砲の音は飛び交うわ、勝利を祝う教会の鐘は乱打されるわ、

もう音響のスペクタクル炸裂です。

 実はこの曲嫌いではないのですがどうしても我慢ならないのが「大砲」の実音なのです。実演では実現することが難しいこの試みも

録音でなら比較的簡単に実現可能ですが、私は別にオーディオシステムのチェックのためにこの曲を聴いているわけではないので、本当に

邪魔くさく感じていたのです。

 私の所有するCDでは確かハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ・オーケストラによる演奏が「大砲」ではなく「太鼓」

(大太鼓です)で演奏しており、「やればできるじゃない!」と思ったものでした。ただ、このオーケストラは大好きなのですが録音が

やや古くなってしまっていました。(1972年)

 別に待ち望んでいたというわけでもないのですが、アバド指揮ベルリン・フィルハーモニー・オーケストラによる新しい録音がやっと

輸入盤で発売されたので購入しました。(ドイツグラモフォン 453 496−2)日本国内盤は昨年先行発売されていたのですが、

私が今のアバドをあまり評価していないこともあり、安い輸入盤が発売されたあかつきには買ってもいいかな?というぐらいにしか考えて

いませんでした。収録されている曲は4曲です

 1.「テンペスト」 作品18(シェークスピアによる交響幻想曲)

 2.スラブ行進曲 作品31

 3.「ロメオとジュリエット」(シェークスピアによる幻想的序曲)

 4.祝典序曲「1812年」 作品49

 ところが、アバド得意のチャイコフスキーということもありベルリン・フィルもそれに応えて意外と聴きごたえのある演奏となっていた

のには驚きました。たぶん余裕かましているのでしょうが、金管楽器の鳴りっぷりは一聴に値します。すごいもんですなぁ!

 そして問題の「大砲」は「大太鼓」の素晴らしい響きによって奏でられていたのです!ホントに見事な鳴りっぷりだこと。感心します。

こういうオリジナルを大切にするアバドの姿勢には頭が下がる思いです。でもよく聴くと音の割れ具合といい「大砲」っぽいような

気もしなくもないですが...どちらなんでしょう?

 最近吹奏楽のCDばかり購入している中で、やはりベルリン・フィルはすごかったというお話でした。あっ、アバドか?!

 (2000.2.11)


☆「ハインズレー・レガシィ」続報!

 「ハインズレー・レガシィ」は音質にかなり問題がありましたがすべて聴いて満足できました。単なるクラシック編曲の見本という

だけではなく、演奏解釈についても「なるほど!」と感じられるオリジナリティあふれるものです。ハインズレーという音楽家が確かに

「音楽」そのものを指向していたのは間違いないでしょう。演奏しているイリノイ大学コンサートバンドもハイレベルで、金管楽器の

豊かな響き、特にトランペットはモロ好みです!リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」終曲では冒頭のヴァイオリン・ソロを

複数のトランペットで奏でるのですが、緊迫感に満ちた出色の出来映えです。感動しました!

 ところが、大変なできごとが起きてしまいました。その後またタワーレコード新宿店にいったところ「『ハインズレー・レガシィ』

で左右のチャンネルが逆転している箇所が発見されたため回収・返金します。」と告知されていたのです!そういえば「変わった楽器の

配置しているんだな?!」と思った曲が確かにありましたが...

 涙を飲んで返金してもらいました。どうせ別のCDになるんでしょうけどね?ちゃっかり「ハインズレー・レガシィ」はすべて聴いて

しまいましたが...もうちょっと音質向上して戻ってきたらラッキーです。

 (2000.2.11)


☆ハインズレーの伝説(そのまんま)

 昨年末に発売されたグラモフォン・ジャパン1月号にオーケストラ曲の吹奏楽編曲で有名なマーク・ハインズレーのCDがまとめて

発売されるとの紹介がありました。実は、私にはオーケストラ曲の吹奏楽編曲をあまり認めたくないという気持ちが以前からあったの

ですが、イギリスの金管バンドによる移調しつつもオリジナルよりももしかしたら熱気のこもった演奏や、最近のマイ吹奏楽ブームに

のって様々な団体の素晴らしい演奏を聴くにつれ、オリジナル・編曲にこだわることなく吹奏楽を楽しむことができるようになったのは

本当に運がよかったといわざるを得ません。自らの手でチャンスを奪うのはまったく無駄なことだと思えるのです。

 私は吹奏楽演奏キャリアが浅いのでハインズレー編曲を演奏することはありませんでしたが、全日本吹奏楽コンクールのライブなどで

彼の編曲による演奏を聴くたびに、彼が吹奏楽のレパートリー拡大に大きく貢献してきたことを実感しました。楽譜店でも独特のオレンジ

色のフルスコアや手書きによる譜面、そして決して安いとはいえないその価格によって「ハインズレー」の名は強く印象づけられていた

のです。

 軽く聴いてみたところ、どうやらアナログレコードを音源としているものもあり(2枚目)音質は良好とまではいえないですが、演奏は

まとまりがあり、鑑賞に充分たえうるものとなっています。なによりもハインズレー編曲の面白さを知るうえでの資料としても貴重です。

興味がある方のために収録曲名をすべて書いておきます。

 マーク・ハインズレー指揮イリノイ大学コンサートバンド(Mark 2951−MCD 3枚組)

 1−1.グリンカ:「ルスランとリュドミラ」序曲

 1−2.バッハ:トッカータとフーガ

 1−3.サン=サーンス:フランス軍隊行進曲

 1−4.サン=サーンス:死の舞踏

 1−5.リムスキー=コルサコフ:シェエラザード

 2−1.デュカ:魔法使いの弟子(スクラッチノイズらしきものあり)

 2−2.リヒャルト・シュトラウス:ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら(音が割れ気味)

 2−3.リスト:「前奏曲」(ノイズが多いです)

 2−4.ムソルグスキー:展覧会の絵(こちらの編曲もあったのか〜出だしはトランペットです。音が割れ気味)

 3−1.ブラームス:大学祝典序曲

 3−2.ワーグナー:「リエンツィ」序曲(ノイズ多いです)

 3−3.ワーグナー:「タンホイザー」序曲(同上)

 3−4.ワーグナー:「ニュルンベルクのマイスタージンガー」序曲

 3−5.ワーグナー:「さまよえるオランダ人」序曲

 3−6.ヘンデル:「王宮の花火の音楽」

 全体的にはプライベート録音のような近接気味の雰囲気です。これだけの曲数があればしばらくネタには困らないかも知れませんね。

 (2000.1.30)


☆グラモフォン・ジャパンの仰せのままに(吹奏楽編)

 ここ1年ぐらい「レコード芸術」を購入していません。理由は...かさばって重たいからです。それにいくらサンプルCDが付録

として付いていても1200円はちょっと高いような気がするからです。CDの新旧譜の発売情報を得られるからといってもこれだけの

コストはプロバイダに2つも入っていて、そのうえケイタイとPHSに加入している私にとっては大きな負担です。(それよりも月々に

購読している同じようなクルマとパソコンの雑誌を減らした方がより効果的では?という意見に賛成です...)

 最近のCD情報はもっぱら「グラモフォン・ジャパン」から仕入れています。なによりこの薄さが魅力です。モバイルにはもってこい

です?!かといって内容が薄いわけではなく読み切るのには苦労させられます。特に(日本版編集者もグチっていましたが)本国版

(イギリス)の翻訳は相当難しい場合があるらしくて、なにを言いたいのかつかみにくいことも確かにあります。レコード会社の広告は

概して控えめでこの辺はもの足りない気もします。(言っていることが矛盾しています!)

 注目すべきは「吹奏楽」のCDコーナーが独立していることです。これがあるからこそ買う意味があるともいえます。さすがイギリス。

最新号(2月号)では新編曲(高橋徹氏の手によるものです)のムソルグスキー「展覧会の絵」(ヤン・ヴァン・デル・ロースト指揮

レメンス音楽院シンフォニック・バンド/de haske DHR11.006−3)が紹介されていました。

 こういうマニアックなCDは新宿か渋谷のタワーレコードにいけば見つかるのでしょうが、だめでもともと!池袋のタワーレコードへ

探しに行きました。意外や意外、すぐ見つけることができたのには驚きました。手間が省けてなによりです。

 誌上にも、もったいぶって書かれていなかった問題の冒頭部分は「なるほどピアニスティック!」な手法を取り入れていて目からウロコ

が落ちる思いです。驚いた私も、もったいぶってみます。「ヒント:ピアノは鍵盤楽器ですが、どんな仕組みで発音しているでしょうか?」

 わかりましたか?全体的な印象は、打楽器を駆使していてラヴェル編曲のものよりもいっそう色彩豊かになっているなあというものです。

どうしても楽器編成上の都合で似たようなサウンドになるのはやむをえないことだと思いますが、それでも十分にオリジナリティを発揮して

いて、レベルの高い演奏も相まって楽しく聴くことができました。「終曲にふさわしいコーダを付加した。」という編曲者のコメントが

載っていたため、いったいどんなすごいことになっているんだろうとビクビク?しましたが、とりあえず延ばしの音が豪華に付加されている

だけだった(これでも十分すごいことなんですけど)ので安心しました。

 カップリングの「はげ山の一夜」はオーケストラ版を忠実に再現する方向で編曲されています。木管楽器の雰囲気作りのうまさに思わず

うなってしまいました。この編曲での実演が聴けたらさぞかし迫力満点でしょう。

 こんなにいいCDを紹介してくれるなんて、うれしい限りです。フトコロは悲鳴を上げていますけどね。(いつもか?!)

 (2000.1.29) 


☆合わない人にも押し売りです!(林檎編) 

 最近めっきりクラシック、特にオーケストラ関係のCDに「これぞ!」というモノが見つからないので残念なのですが、もっと過激な

現代音楽に耳を傾けることでこの欲求不満を解消しましょう。もっとも現代音楽といっても椎名林檎さまなんですが。(敬称略不可!)

1月26日、立て続けに2枚のシングルCDがリリースされました。待ちきれない私は前日に池袋・ビックカメラ本店でゲットして

しまいました。

 「罪と罰」。ジャケットは黄色い縦目のメルセデス・ベンツが真っ二つに切断されている前にド派手メイクの真っ赤な林檎さま!が

刀を持って文字どおり「ドス」を効かせていらっしゃいます。おおお、こわ。

 「ギブス」。うって変わって寂しげに遠くを見つめる林檎様がなぜかリンゴを切っていらっしゃる。共食い?こんなに対照的でいい

んですか?よくわかりません。

 気を取り直して聴くことにしました。近所の手前もあるので(ようわかりません)ヘッドフォンで聴きましたが、「いいっす!!」

バンドの編成はシンプルながらサウンドは凝りまくっていて正直複雑系です。これもまた椎名林檎的世界観がよく現れていると思います。

「ギュワ〜ン!」「キィ〜ン!」「ドロドロ(ジャズっぽいドラムの音)」加えて林檎様の叫び声がたまらん!です。甘え声なのに

ハスキーなのです。困るなあ!

 今回のCDにはカバー曲が収録されています。「罪と罰」には「君ノ瞳ニ恋シテル」(中間部でホーンセクションが活躍する曲)

「ギブス」には「東京の女」(常滑出身の元祖双子デュオ、ザ・ピーナッツの曲らしいです。)「東京の女」は原曲がわかりませんが、

「君ノ瞳ニ恋シテル」はこってりとして、しかしシンディ・ローパーばりのポップなサウンドがいい感じです。

 どんな曲でも椎名林檎らしく多彩で個性的な、しかも過激な音造りで十分楽しむことができました!でも念のためヘッドフォンで

聴きすぎるのはやめましょうね。「効きすぎる」から。クラクラします。4月のライブに行きたいのですが時期が悪いです。3月

発売のアルバムに過大な期待を寄せておくことにします。

 (2000.1.29)


☆「ずーじゃ」に「つーどい」

 日曜日の朝9時、私の楽しみといえば「日曜討論」ではなく、「題名のない音楽会」です。この番組はクラシック音楽を取り上げる

ことのあるものとしてはかなり長寿を誇る番組です。「クラシック音楽をとりあげることのある」という言い回しなのですが、これは

番組開始当初からの企画・司会を担当していた黛敏郎氏(私が入院していた最中の1997年4月に亡くなりました)が、「演歌から

クラシックまで」つまり音楽ならなんでも同じ扱いにするということをこの番組の方針としているからなのです。というわけで今回は

ジャズのビッグバンドが取り上げられていました。

 このバンドは昨年、発足から50周年を迎えたその道一筋の老舗バンド(1時間前に見たばかりなのにバンド名を忘れました...)

です。ビッグバンドなのでトロンボーンは4本あり、演奏中には大きなアクションをとって見た目にも楽しめます。楽器は当然のごとく

キングが幅を利かせているようでした。ジャズの世界だとキングは有名ですからねぇ、と思っているとリードトロンボーン(というのか

どうかは定かでありませんが)はなんだかバストロンボーンよりもベルとスライドの間が広いのです。2ndと比較すると1.5倍は

あろうかという幅広です。そのうえチューニングスライド方向は寸詰まりです。どうみてもドイツ管の特徴があるのです。カメラアングル

の都合で長く映っていることがないのですが、それでもよく見れば見るほどドイツ管(レッチェかな?)です。

 私がドイツ管を買った頃、確かにジャズマンでレッチェとかホークトとかを使っている人がいるという話を聞きましたが、それを実際

に目の当たりにすると新鮮な印象を受けます。私なりの分析では「ドイツ管は伝統的に細管」「高音に花がある」「アンサンブル向き」

ということがジャズ向きなのだろうと思います。しかし「吹奏感がキツイ」「大音量向きでない」「ドイツ管同士しかなじみにくい」こと

がジャズ向きでないような気もしますが...よく考えてみると楽器は吹くその人が「いい」と思えばそれが一番「いい」ことなのです。

 (2000.1.16)


☆因縁のある曲紹介(その1)

 いよいよ今年の9月「藤沢市民オペラ」でプッチーニ不朽の名作「ラ・ボエーム」が上演されます。多忙極めるオペライヤーの

幕開けです。はぁ...

 「藤沢市民オペラ」では神奈川県藤沢市とその近辺、いわゆる「湘南」地域のプロ音楽家・アマ音楽愛好家が一致団結して「オペラ」

という総合芸術を造り上げていくイベントです。音楽ばかりでなく実に多くの関係各分野(舞台芸術など)が携わってはじめてこの

イベントは大団円を迎えることができるのです!

 という前口上はさておき、「ラ・ボエーム」です。オペラ業界(こんな業界はオペラハウスがある国だけに存在する?)では、

レパートリーの「ABC」という意味深長な(なにが??)言葉があるそうです。「アイーダ(ヴェルディ)」「カルメン(ビゼー)」

そして「(ラ・)ボエーム」がそれにあたり、いわゆる安定した興業収益が期待できる「定番」的な演目に該当するのだそうです。

 話の舞台はパリ。詩人とか哲学者とかお針子とか、貧しいながらも青春を謳歌する若者たち(ボヘミアン)の笑いあり、恋あり、

そして悲しい別れありの物語です。(簡単すぎる...)

ある評論家によると「私は『ラ・ボエーム』が嫌いだ!なんで高い金を払ってわざわざ『あばら屋』を見に行かなくちゃならない?」

というほど、いかに舞台をビンボーくさく見せるかが大きな見せ場となっているようです。(ウソでしょ!)

 有名なアリア(歌)は主人公・ロドルフォ(詩人)が突然の闇の中でヒロイン・ミミ(お針子)の手に触れたときに歌う

「この冷たい手」とそれに答えてミミが歌う「私はミミ」(ま、自己紹介ですな)です。ここばかりではなく、随所に日本人の心を

揺さぶるプッチーニお得意の美しいメロディが満ちあふれています。ラストシーンでのミミを看取ったロドルフォの慟哭はいつ聴いても

涙を誘われます。まさにプッチーニ節炸裂!です。私は実演に接したことはないのですが...テレビで見たときには泣きました。

 名曲といわれている割にはCDは少なめでしょうか。まず挙げられるのは、カラヤン/ベルリン・フィルというゴージャスなコンビに

フレーニとパヴァロッティをフィーチャーした、それはもう豪華なキャストの演奏です。(DECCA)ベルリン・フィルの響きが重厚

過ぎなのはご愛敬でしょうか。

 最新のCDでは私のイチオシ指揮者シャイー/ミラノ・スカラ座とおしどり夫婦ゲオルギューとアラーニャの瑞々しい演奏がいい

です。(DECCA)偏見かも知れませんがイタリアン!ですからね、指揮・オケともに。ああ、ペンネが食べたい?!

 往年の名演なら名オペラ指揮者セラフィン/サンタ・チェチリア音楽院オケとテバルディとベルゴンツィの演奏もかなりいい味出して

います。(またもやDECCA)昔の演奏は気合いが入っていることが多いのです。レコード録音が今ほど気軽にできない時代だったの

でしょう。こういう職人気質に触れてみるのもいいことですよ。録音状態も想像よりはまあまあです。

 同じサンタ・チェチリア音楽院オケとは、かのバーンスタインも録音しています。(グラモフォン)歌手はそれほどのビッグネーム

ではありませんが、心のこもった暖かい、そして情熱的な演奏を聴くことができます。

 私のイメージではロドルフォ向きと思えるカレーラスはリッチャレッリと名タッグを組んでいます。お約束のコリン・ディヴィス/

コヴェントガーデン・オペラオケとの共演です。(フィリップス)カレーラスお得意の泣きが入っています。ちょっときれい事過ぎ?

 まだまだこれから勉強してモノにしないと愛着がわかないですね。ラストで泣いているだけじゃ...ね。

 (2000.1.9)


☆ずいぶんと流行る?吹奏楽

 昨年末あたりから自分自身の中で吹奏楽曲がブレイクしています。これはひとえに「200CD吹奏楽名曲・名演(立風書房)」の

おかげ?なのですが、それにしてもこれほどまでに多種多彩な吹奏楽曲があるのかと再認識できました。中には「当然知って

いたはずなんですけどね...」的な曲もあり、なんだかくやしくて改めて聴き返そうと思わせたのもブレイクに拍車をかけ

ました。

 吹奏楽関係のCDが潤沢にそろっているのはタワーレコード渋谷店6階なのですが、渋谷という場所柄あまり頻繁に出かける

ことができません。出かけやすいといえば池袋なのですが、池袋ならHMVに吹奏楽関係のCDは豊富にそろっています。

ただ、値段的にはタワレコとどっこいなのです。価格が安いのはアキハバラの石丸電気です。ただそれほど種類がないのが難点

です。

 たまたま暇つぶしで出かけた新宿駅南口のタワーレコード新宿店?のクラシックCD売場は、特に吹奏楽関係のCDの種類に

かけては他を圧倒しています。まるで「200CD吹奏楽名曲・名演」で紹介されたCDをそのまま店に置いてあるかのような品揃え

に私ばかりでなく他の吹奏楽愛好者はすべて喜びの涙があふれでることでしょう!(ちょっとオーバー?)

 クラシックCD評論の老舗といえば「レコ芸」こと「レコード芸術」だということについて異論を挟む余地はないと思います

が(「音楽現代」は?)ここにねじ込んでくるかのようにイギリスのレコード評論誌の老舗「グラモフォン」が日本語版で出版

されました。イギリス本国の評論を日本語訳している場合が多いのでやや文章表現に難があります(いわんとしていることが

わかりにくい)が、その本の薄さ(A4版で1センチ足らず)の割に濃い内容で読み応えがあります。この雑誌の中にも吹奏楽

のCD評論コーナーが独立して置かれており、吹奏楽CDの現状を知る上で役に立ちます。

 その昔、かのヘルベルト・フォン・カラヤンの代役としてベルリン・フィルでベートーベンの「第9」を振って話題となった

山下一史氏が吹奏楽界の東の横綱、東京佼正ウインドオーケストラと録音した新しいアルバムが発売されました。実はこのこと

も「グラモフォン日本版」で知ったのですが、このCDには懐かしの名曲フランク・エリクソンの「序曲祝典」が収録されて

います。西の横綱、大阪音楽団といい、バーンスタイン最後の弟子こと佐渡裕との素晴らしいCDをリリースしたばかりの

シエナ・ウインドオーケストラといい、最近の日本の吹奏楽界は徐々に本気モードとなってきたようです。

 吹奏楽曲界の大御所アルフレッド・リードがかつてインタビューで「吹奏楽曲のCDがもっと売れればもっと色々な作品が

録音されて、質のよいCDが市場に出てくるのだが、なかなか現実は厳しい。」と言っておりましたが、まさにその通り。

せめて私ひとりでも...(ムダ過ぎる?抵抗)

 (2000.1.1)


☆楕円のやつ(試奏記)

 最近めっきり楽器を演奏しなくなったのですが、年末の暇なある日に新大久保の楽器店「ダク」で以前から目を付けていた楕円形の

テナーチューバ(私はバリトンだと信じて疑っていないのです!)を吹いてきました。

 ちょうどその時は「チューバ・ユーフォニアムフェア」というのをやっていたようで、その目玉として(目玉にはなりそうもない

のですが...)チィルヴィニ?というチェコの楽器メーカーの輸入代理店から借りてきて展示していたそうです。

 一応マナーとして太管用のマウスピースを持っていったのですが、案の定というか中細管(細管でもない)という特殊な太さのシャンク

でないと対応していないとのことでした。仕方がないのでダクで用意してくれたJKの中細管用マウスピース(BACH5G相当)を

使わせてもらいました。

 ワーグナーチューバと違って右手でロータリーを操作します。ということはベルは左向きに開いていてユーフォニアムとは逆です。

これなら独奏の時でも顔が隠れないのでうってつけです。(でもこの楽器で独奏することがあるのでしょうか?果たして)

いつもと違う方向から音が聞こえてきて思ったよりもよく響くようです。チューバとは言うもののやはりそれっぽい音色とはいえない

野太い独特な音色です。吹く際の抵抗感は強い方で翌日原因不明の肩こり(with 頭痛)に悩まされてしまいました。

トロンボーン奏者がバルブ楽器を演奏すると音程の調整に悩まされることが多いのですが、この楽器でも音程は取りにくくて苦労させ

られました。特に4番ロータリー(トロンボーンの6ポジション相当)はなんだか音がわかりませんでした。単に不慣れなだけ?

 結局この楽器を購入することにはなりませんでしたが、もし普通のユーフォニアムでは満足できなくて目立ちたい方にはおすすめ

できます。なぜなら格安なのです。定価で31万円ですから...売値は?

 (2000.1.1)


☆絶好調!東京都交響楽団

 自分の仕事が忙しくない限り、できるだけ演奏会に行きたいオーケストラが東京都交響楽団です。(もちろん指揮者とプログラム

さえ気に入ればの話ですが...)

 ここのところ毎年のように日本の楽壇を代表する指揮者である朝比奈隆氏とのブルックナー交響曲演奏によって高い評価を得ています。

私も可能な限りこのコンビの演奏会には出かけたいのですが、なんと次の演奏会は3月下旬...いけるわけないです。第5番なのに。

というわけで以前第8番の名演を収録したCDが発売されていたのですが、今回引き続いて第7番のCDが発売されました。

 私はトロンボーン奏者としては珍しくブルックナーの第7番交響曲があまり好きではありません。終楽章がぱっとしないもので...

というわけで最初は食指が動かされなかったのですが(実は東京交響楽団と間違えていました。)都響とのライブということなら話は

別です!さっそくゲットいたしました。

 全般的にはそれほど粘らない、92歳という年齢を感じさせないさわやかな?演奏でした。御大(朝比奈隆氏)が意気揚々と指揮する

様子が目に浮かぶようです。都響の金管セクションも大ハリキリで予想どおりの吹きっぷりでした。圧倒的にうまいです!

 ちょうど同時期にニコラウス・アーノンクールがウィーン・フィルとのブルックナーの第7番交響曲をリリースしましたが、私に

とってはどちらも甲乙つけがたい演奏です。まったくタイプは違いますが。

 私の「この曲はいい曲だなあ、と思える演奏はいい演奏である。」という持論どおりのブルックナーの第7番交響曲CDでした。

 (2000.1.1)