回顧録

漂流 2001.09.02


 今年もカツオの季節がやって来ましたね。
ご多分にもれずこの時期一回はカツオ釣りに行くのですが、
去年釣行した時のことが強く印象に残っています。
今回は、その時の事をお話しましょう。
 去年の9月、仲間うちで仕立てのカツオ釣りに行きました。
乗せられたのは、進水後三十年位経っていそうな船でした。(おおげさです。)
 朝、餌の生き鰯を船長が買い付けてくるのですが、その帰りを港で待っていましたら、
他の烏賊狙いの船からお客さんがぞろぞろ降りて来るのです。まだ出港もしていないのに。
よくよく聞いて見ましたらば、その船はエンジン不調で出られないとの事でした。
お気の毒、と思いながら私らは鰯を積んで戻って来た船に乗り、出かけたわけです。
カツオ釣りは、カツオの群れを探さなくてはなりません。
沖に出るとみんなで、その目印となる「ナブラ」「鳥山」と言われる物を目を凝らして探します。

 ナブラを探して二時間余り、伊豆半島が見えてきた頃船は急にスピードを上げました。
前方を良く見れば遥か遠くに鳥山が。
横一列に並んで海面を捜索していた他のカツオ船も、まっしぐらに向かってゆきます。
程なく目標海面に到着したのですが、そこはもう戦場でした。
半径五十メートルほどの海面に十数隻の船が集まってるんですから。
移乗白兵戦が出来るかと思いました。
おまけに船長は異常に興奮してるし。
船長、なんか叫んだと思ったら船首の散水ポンプのスイッチを入れ、
積んできた鰯をバラバラと海面に撒いて船内に戻りました。
再び、操舵室から飛び出てきたと思ったら手には一本釣りの道具がしっかりと握られ、
やおら船首に仁王立ち。
私らも鰯を針に付けて、準備完成。
そのときには既に船長の釣り上げたカツオが宙を舞っておりました。
それに負けじと仕掛け投入。
操舵室でなにやらピーピー鳴っているけど、気にしない、気にしない。
大漁間違いなし。釣れたカツオはあそこと、あそこと、あそこに配って......。
などと考えていたら急に船上が静かになりました。
エンジンが止まっています。
散水ポンプも止まっています。
船長、我に返って操舵室に駆け込みました。
床板を外して修理を試みているようですが、動きません。
漂流。
流れに乗ってどんどん船団から離れて行きます。
おいおい。
まあ、湾内だから大丈夫でしょ。(安心してどうする。)
一時間ほどで、同じ港の船が迎えにきました。
そのまま曳航されて帰港。
良い経験になりました。

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